第二十二話 初めてのサボり
「おはよう、不良さんたち!」
「「「うす!」」」
「よう、不良三兄弟」
「ところで姐さん」
「一緒にいるマブい人は?」
「もしかして、転校生スか?」
「そうですわ。ごきげんよう、不良三兄弟さんたち」
「才上、こいつらはつむぎさんの舎弟だ」
「へぇー! すごいですわね!」
ハルキちゃんが余計なことを言う前に、さっさと二年の教室に行かなくちゃ。
「でもこいつら、前につむぎさんをボ……」
「雪菜ちゃん、行こっか!」
「えっ? どうしてですの?」
「いいから! 私の手を握って!」
「……はい!」
「じゃあまたあとでね、ハルキちゃんたち!」
「はい!」
「「「お疲れ様です!」」」
よし、これで前に私がボコボコにされたことは隠せたかな。
「それにしても、いつも唐突ですわよね。つむぎさんって」
「それはこっちのセリフだけど、転校してきてどう? 学校は楽しんでる?」
「まるで親のような発言をしますのね」
「うん。だって、家では忙しいんでしょ? それ自体が悪いとは思わないけど、私からしたらありのままの自分をさらけ出せない場所は『家』とは言えない気がするから」
「それはダジャレでして?」
「えっ!? 違うよ!?」
「冗談ですわ。では、甘えてもいいんですの?」
「うん! なんでも言って!」
「では、今は眠りたいですわ。ここ数年徹夜続きであまり眠れてませんの」
「なら保健室に行こっか」
「はい!」
こうして、私たちは保健室へと向かう。
「あのー、今日一日寝かせたいんですが、いいですか?」
「えーと……学年を言ってくれ。わたしはあまり来ない生徒の顔を覚えていないものでな」
「二年×組の早乙女つむぎと、同じく二年×組の才上雪菜さんです」
「わかった。あとで担任の先生に知らせておくよ」
「ありがとうございます。じゃあ雪菜ちゃん、またあとで」
「えっと……膝枕してほしいんですの」
「…………うーん、わかったよ。先生! 私もサボるので、授業態度とか減点してくださいって言っておいてください!」
「はいはい。でも、やましいこと……というか、やらしいことはするなよ?」
「はい! ありがとうございます!」
「ありがとうございますわ!」
「じゃ、ゆっくりしていけ」
私は雪菜ちゃんに膝枕する。
「重かったらすみません。でも……」
「大丈夫! ハルキちゃんよりは軽いから!」
「春木晶の話はやめてくださいまし」
声のトーンを低くする雪菜ちゃん。
その変化に驚き、ついつい謝る私。
「ご、ごめん……」
「では昨日のように、頭を撫でてください」
「うん!」
こうして、雪菜ちゃんの頭を撫でる。
「よしよし、頑張ったね。家でも休めてないのなら、せめて学校で休んでいいと思うよ?」
「はい!」
「…………それで、寝ないの?」
「なんだか目が冴えてしまって。どうせなら、もっと触れてほしいですわ」
「ごめんね、私にはハルキちゃんがいるから」
「そうですか……。なら、手を握ってくださいまし」
「うん、それなら……」
私は右手で雪菜ちゃんの頭を撫で、左手で手を握る。
「では、おやすみなさい」
「うん、おやすみ……!」
こうして、雪菜ちゃんは眠りについた。
それから、三十分以上は経っただろうか。
雪菜ちゃんには悪いけど、ものすごく太ももが痛い。
「ごめん、雪菜ちゃん!」
そう謝って、頑張って太ももから雪菜ちゃんを引き剥がす。
起こさないように力を入れつつも、そーっと。
「ぐぬぬぬ……!」
その後、どうにかしてベッドに雪菜ちゃんの頭を慎重に置くことに成功。
「はぁ……」
「すぅ……すぅ……」
それにしても、これでも起きないだなんて、よほど疲れているんだろうな。
私はというと、太ももが麻痺して動けないので、雪菜ちゃんの足の方へと寝転がった。
「どうせなら私も休もうかな……。今日一日は授業をサボることになってるはずだし」
それから私も疲れていたのか、気絶するように眠った。
そして時は過ぎて――
「……さん? つむぎさん!」
「うん?」
「つむぎさん、起きたんですね。もう放課後ですよ?」
「あれ? 雪菜ちゃんは!?」
「さっきつむぎさんに抱きつくように寝ていたので、ボクが叩き起こしました」
「そっか……悪いことしたなぁ」
「つむぎさん……?」
叩き起こされたのかぁ……。
雪菜ちゃんは仕事続きで跡継ぎってだけでも苦労してるのに、学校でも扱いが悪いだなんて……
そんなふうに、つい同情してしまう。
「で? 雪菜ちゃんは?」
「つむぎさんの真横です。才上のヤツ、二度寝しましたから」
辺りを見渡すと、確かに雪菜ちゃんがいた。
なので、眠っている雪菜ちゃんの肩に腕を回して、そのまま抱きしめる。
「つむぎさん?」
「ハルキちゃん。浮気とか思ってくれても構わないから、今はこうさせて?」
「はぁ……」
「温かいですわ……ん?」
「おはよう、雪菜ちゃん」
「どどど、どうしてわたくしは抱きつかれてますの!?」
「私がそうしたいから。泣きたかったら泣いてもいいし、つらいときは半分こしよう? 雪菜ちゃんは一人じゃないから」
「……同情ですの?」
「うん、同情だよ? だって雪菜ちゃん、生きてるのがつらそうなんだもん」
「春木晶の恋人なのに、やめてくださいまし」
そう言って離れようとする雪菜ちゃん。
「なら、雪菜ちゃんのファンってことで、支えさせて?」
「…………はぁ、頑固ですのね。好きになりますわよ?」
「それはちょっと困るけど、雪菜ちゃんも私のファンになればいいんじゃないかな?」
「なるほど……理にかなってますわね」
「うん。だから、これからは支え合って生きていこう! ハルキちゃんの恋人はやめないけどね!」
「はい、わかりましたわ」
「よかった。ボクの恋人は継続するんですね」
「うん。だって、ハルキちゃんの方が先だったし」
「なんですか? その『才上の方が先だったら交際してなかった』的な発言は!?」
「ごめんごめん。でも、ハルキちゃんと付き合ってなくても、変わらないとは思うけどなぁ」
そんな会話をしていると、雪菜ちゃんが話し始める。
「つむぎさん、ありがとうございました。それで、明日は休日ですので……」
「うん! 遊びに行くね!」
「はい、ぜひ」
「それで、ハルキちゃんはどうする?」
「もちろん行きます! 罠の可能性もあるので」
「じゃあ決まりだね!」
こうして、めでたく雪菜ちゃんのおうちに行くことになった私たち。
サボったのは悪いことだけど、雪菜ちゃんと繋がれた気がする。
だけど翌日、雪菜ちゃんをもっと知ることになるのだが、それはまた別の話だ。




