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男装女子と善人女子  作者: 私信
日常編
2/38

第二話 スキンシップ

「うーん……ごめん、ちょっと考えさせて」

「はい! ボクはいつまでも待てます!」

「ごめんね……」

「いえ!」


 いい子なんだよなぁ。

 でも、女の子なんだよなぁ……

 女の子なのかぁ……


 女の子の時点で……なんだかなぁ。


「先輩、身長は?」

「百五十センチいかないくらいだけど……?」

「なら、お姫様抱っこさせてください!」

「えっ、なんで!?」

「傷だらけだからです。可愛い顔が台無しなので! お願いします!」

「うーん、可愛い後輩の頼みだけど、ダメかな」

「そうですか……」

「ハルキちゃんも怪我してるんだし。強がってもバレバレだからね!」

「いえ、お言葉ですが、先輩が全部受け止めてくれたので、ボクは大して……」

「いいの! その代わり、またいじめられてたら、私が守ってあげるね」

「はい! はい……? その場合、ボク一人で十分ですから!」

「ハルキちゃんは可愛いからね。ちゃんと自分を客観的に見ること!」

「は、はい……!」

「じゃあ、今後ああならないように、連絡先交換しよう?」

「はい、ありがとうございます」


 連絡先を交換してから、私たちは保健室へ向かう。

 でも、保健室に先生はいなかった。


「あれ? 先生いないね」

「ですね……。では、手当てしますね!」

「うん、お願い」


 目をつむって顔をハルキちゃんの方へ向ける。


「か、可愛い……」

「ちょっとハルキちゃん? まだかな?」

「は、はい! すぐに! って、どうすれば?」

「確か冷やすやつがあったはず……」

「あぁ、あれですか」


 ハルキちゃんは氷嚢を見つけると、氷水を入れ、私の顔に当てる。


「それで? どうしていじめられてたの?」

「イケメンで生意気だと……身長も小さい癖に、モテてるのが不快だとか」

「でもさ、牛乳飲めばいいって教えてくれたし、悪い子たちじゃ……」

「悪いヤツらですから! 先輩は楽観的過ぎます!」

「……ごめん」

「はい。先輩は可愛いので、ボクももっと強くなります!」

「あのー、私もべつにいじめを見過ごせないタイプじゃないから。それに助けるのなら、まずは遭遇しないと……」

「では、遭遇したら?」

「……助けるけど?」

「やっぱり危険です。あと、どうせなら、あきらって呼んでもいいですよ?」

「うん。わかったよ、ハルキちゃん」

「晶と……」

「ハルキちゃん」

「だから、晶でいいって……」

「ハルキちゃんはハルキちゃんだよ」

「ふふっ……」

「どうかした? ハルキちゃん」

「なんか、イチャイチャできて嬉しいです!」

「そ、そう……」


 そう言われると、ちょっぴり照れてしまう。

 でもハルキちゃんは女の子だし、やっぱり複雑だ。


「早乙女先輩とつむぎ先輩、どっちがいいですか?」

「好きな方で」

「じゃあつむぎさんで」

「二択じゃなかったの!? いや、いいけどね……」

「ではつむぎさん、毎日一緒に帰ってもらってもいいでしょうか?」

「え? いいけど?」

「やった!」

「こんな可愛い子と帰るのは初めてだし、照れるなぁ」

「あの、ボクって可愛いですか?」

「いや? カッコいいけど?」

「そうですか……」


 ズーンと落ち込むハルキちゃん。


「可愛いのは仕草かな。なんか、無理して背伸びしてる感が乙女心をくすぐるというか……」

「あ、ありがとうございます!」

「じゃあ、かばんを取りに行くから、昇降口で待ってて」

「わかりました!」


 こうして、私は教室へと向かう。

 教室には誰も残っていなかった。


「よかった、ボロボロなところを見られなくて」


 そうつぶやいて、私は教室を後にする。

 そして、氷嚢を保健室に返してから昇降口へと向かった。


 

「お待たせ」

「はい! 待ちました!」

「ごめんね。保健室にあれを返しに行ってたから」

「そうでしたか」

「じゃあ帰ろう?」

「はい!」


 下校する私たち。

 でも、後輩と一緒に帰るのは初めてだなぁ。


「手! 手ェ繋ぎたいです!」

「唐突だなぁ……なんで?」

「好きなので」


 こっちを見つめて当然のように言うハルキちゃんにドキッとする。

 だけど、女の子なんだよなぁ……。

 でもせっかくの後輩のおねだりだし、ここは受け入れてあげるかな。


「いいよ」

「じゃあ、恋人繋ぎでいいですか?」

「いちいち確認しなくていいから……」

「あっ、すみません!」


 私、ハルキちゃんと恋人繋ぎしてる……。


「ていうか、車道側を歩くんだね」

「はい! つむぎさんを守りたいので!」

「ふふっ……可愛いなぁ」

「え」


 ハルキちゃんがフリーズする。


「あれ? どうかした?」

「ボク、つむぎさんにはカッコいいって言ってほしいです」

「そう? そういうところも可愛いなぁ」

「……はぁ、まあいいです。いつかカッコよくなります!」

「うん、頑張って」

「はい!」


 そう言って、繋いでる手を前後にぶらぶらと揺らすハルキちゃん。

 でも、こういうところが可愛いんだよなぁ。

 

「あのさ、ハルキちゃん。おうちに行ってもいい?」

「えっ?」

「女の子を家まで送るのは、先輩の義務だからね」

「カッコいいですね……! 恋人同士の関係だったら抱きしめてました!」

「いや、恋人同士でもやめてね? ていうか、女同士だし、ちょっとしたスキンシップは少しならいいよ?」

「なら……いえ、やっぱりいいです!」

「遠慮してるね? じゃあ、私からいくね」

「はぁ……?」

「抱きしめるから、動かないでね」

「えっ!?」


 ハルキちゃんを抱きしめて、女の子同士でも平気なのか……

 それとも、私はやっぱり男の子じゃないとダメなのか……

 それがわかれば、ハルキちゃんとの接し方がわかるはず!


「いくよ?」

「はい!」


 私はハルキちゃんを抱きしめた。

 とは言っても、身長的には頭がハルキちゃんの胸の辺りに当たる程度なんだけど。


「はーっ!」

「あの、これ、いつまでやるんですか?」

「あっ……もしかして、嫌だった?」

「いえ、そういうわけでは……」

「じゃあ、もう少し付き合って?」

「はい!」


 ハルキちゃんはあったかいなぁ。

 それに、すごくドキドキしてる。


 ……私はどんな感じなんだろうか?

 抱きしめてるからハルキちゃんのぬくもりで照れてるのかわからない。

 心臓の音とかも、ハルキちゃんの胸元に頭が来るからハルキちゃんの鼓動でわからない。


 よし。とりあえず、今回はここまでにしよう。

 私は抱きしめていたハルキちゃんを離す。


「よし、こんなところかな」

「あ、ありがとうございました!」

「ハルキちゃんって、いちいち大げさだよね」

「そうですか?」

「うん。可愛いけどね」

「はぁ……」

「あと悪いけど、今は私の身体が熱いから、今日はここで別れよう?」

「えっ!?」

「家までは今度送ってあげる! じゃあね!」

「はい! さようなら!」


 こうして、私がハルキちゃんのことを好きになれるのか……

 女の子同士でもドキドキするのかどうかは、結局わからなかった。

 でも、鼓動は速くて、体温も高くなっている。

 そんな現実と向き合わず、見て見ぬふりをして私は帰路につくのだった。

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