第一話 ズレてる先輩
読んでいただきありがとうございます。
会話が多めの、ほのぼのとした作品です。
軽い気持ちで読んでいただけると嬉しいです。
「一目惚れしました! 付き合ってください!」
空き教室で黒髪短髪の後輩に告白する私。
だけどこの告白の十秒後にちょっぴり後悔することになるのだが、このときの私は、そんなことを知りもしなかった。
「ごめんなさい!」
「あ、やっぱり突然だし、ダメだよね……」
「い、いえ! そうではなくて……ボク、女なんです」
「え?」
十秒ほどフリーズする私。
「あの……大丈夫ですか?」
「はっ! そっか、女の子かぁ……」
「ごめんなさい。あの、わかりませんでしたか?」
「いや、前に『ハルキ』って呼ばれてたし……」
「はい。春木晶なので」
「苗字だったのかぁ……。でも、制服は男の子のだよね? どうして?」
「我が家はお金持ちなので、見合い以外で交際させないために男として育てるんです。まぁ、古臭い“しきたり“ってやつですね」
「な、なるほど……。それじゃあ私は帰るけど、廊下で見たら会釈くらいはするからね。えーと……なんて呼べば? ていうか、女の子だって知ってるのって……」
「先輩だけですね。春木くんでもちゃんでも、好きに呼んでください。慣れているので」
少し哀しそうな顔をする春木晶さん。
よーし、ならここは……!
「うん! じゃあね、ハルキちゃん」
「“ちゃん“なんですね」
「うん。だって、心も体も女の子だもんね? あれ……? そうだよね?」
「は、はい! もちろん」
「よかった。私は早乙女つむぎ! それじゃあね」
「はい!」
うーん、告白には失敗したけれど、可愛い後輩……可愛い後輩?
……カッコいい後輩の友達ができたんだし、前向きにいかなきゃ!
◆◇◆◇◆
数日後、私は教室のゴミをまとめていた。
「いつもありがとう、つむぎちゃん」
「サンキュー早乙女さん」
「うん。私に任せて!」
雑用は正直嫌いじゃない。
他人が嫌がることを進んでやるのは良いことだと昔から教わっていたから。
だから私は、雑用が好きだ。
そんなこんなでゴミ置き場に向かうと、下級生の男の子たちが集まっていた。
なんだか嫌な予感がして校舎裏に行くと、ハルキちゃんが胸ぐらを掴まれている現場に直面する。
「ぐっ……!」
「おい春木、チビのくせに調子乗んなよ? ちょっとモテるからって、百六十センチにも満たないとか雑魚じゃねーか」
「ま、モテるっつーことは、ツラだけはいいんじゃね?」
「ツラ以外はカスみてーなもんだけどな」
ここで私は、はらわたが煮えくり返るほどの、深い怒りを覚えた。
「や、やめろー!!」
「あん? なんだ、女子かよ」
「しかもちょっと可愛いじゃん」
「イタズラされたくないなら、今のうちに回れ右しろ。今からこいつをリンチにするんだからよ」
「やれるもんならやってみれば? 私は先生方とは親しいからさっきメッセージを送ったし、もうじき来ると思うけど?」
こういう嘘をつけば、ハルキちゃんも助かるはず……!
「そうか……。なら、今のうちにリンチにすっか! おら!」
「……あっ! 危ない!」
私はフェンスに投げつけられて殴られそうになるハルキちゃんを庇い、不良生徒に顔を何発か殴られる。
痛い痛い痛い痛い痛い。
痛いけど、ハルキちゃんはもっと苦しかったんだ。
先生を呼んだって嘘も効いてないなら、ここは私がハルキちゃんを守る!
「……キミたちにはコンプレックスはないの?」
「あったらどうなんだよ?」
「身長っていうコンプレックスがあるハルキちゃ……くんが不快なら、身長を伸ばす方法を教えてやればいいじゃない! どうして助け合わないわけ!?」
「ははっ、説教か?」
「こういうヤツ、おれムカつくんだよなー」
「そうだな。まずはボコって、そっからは……」
「やめろ!!」
不良生徒からハルキちゃんを庇っていると、突然ハルキちゃんが立ち上がる。
「なんだよチビ? これからこのチビ子と遊ぶんだから、帰れよ」
「ボクの身長が低いとか、どうでもよくなった。これ以上早乙女先輩を傷つけさせない!」
「ほざけ! 今さら王子様ぶってんじゃねぇ!」
そう言って殴りかかる不良の拳を受け止め、拳を握り潰そうとするハルキちゃん。
「ボクの握力は五十キロ弱ある。合気道も嗜んでいる。これ以上先輩に危害を加えようってのなら、ボクがお前たちを病院送りに……」
「チッ……! 離せ! もう関わらねーよ!」
「行こうぜ」
「クソどもが!」
不良生徒たちが去っていくので、私はこう言った。
「こらー! どうやったら身長伸びるか教えなさいよ!!」
「知るか!! 牛乳でも飲んでろ!!」
そう返す不良とちょっぴりだけ仲良くなれたと感じて微笑む私。
「ふふっ……」
「あの、先輩……」
「なに? あっ……私、傷だらけで不細工になってない?」
「それはわかりませんけど……どうしてボクを助けたんですか?」
「え? 困ってる人がいたら、普通助けるでしょ?」
「なら、なんであいつらの去り際にあんなことを?」
「仲良くなれるのなら、仲良くなっておいた方が良くない?」
「す、素敵ですね!」
「そうかな?」
「殴られても怯まない精神、女性らしいのに漢らしい性格、なによりその優しさ! 感服しました!」
「そんな大層なものじゃないよ。それよりハルキちゃん」
「なんですか……?」
「ありがとね。助けてくれて」
傷ついた顔でにこりと笑ってみる。
「ふふっ……笑うと顔の傷が痛いや」
「そ、そうですか……」
「あ、それと助けた理由だけど、もう一つ付け加えてもいいかな?」
「はい。なんですか?」
「……女の子が危険な目に遭ってたから。ただそれだけだよ」
「女の子……」
「それじゃあ、私は保健室に行ってくるかな」
「あの!」
「ん? なぁに?」
「ボクを助けてくれてありがとうございます! そして、ボクのもう一つのコンプレックスを解消してくれてありがとうございました!」
「いいよ、そんなこと。それと、もう一つのコンプレックスって? あ、答えたくないなら言わなくていいよ」
「女子扱いされないことです……」
周りに聞こえないように、ボソッとつぶやくハルキちゃん。
「先輩はボクの恩人です! ぜひ、付き合ってください!」
「えっ……?」
こうして、以前と関係が真逆になってしまった私とハルキちゃん。
これからどうなってしまうのか、なんてことを考えてしまう私はのんきなのかな?
そう思ってしまうほど、目の前の問題を直視できない私だった。
主人公の見た目はくせっ毛で茶髪のロングヘアです。




