降臨
森に響き渡る銃声。
銃声が轟く度にコボルトは頭に風穴を空けて絶命して地面に崩れ落ちる。
弾を撃ち終えるとすぐに装填に入る。だが、コボルトは既にそれを学習したかのようにその隙を狙うかのようにその爪でリスティアを切り裂こうとするが、その爪は儚い音と共に折れた。
『お、俺の爪が……………ッ! スライムごときに!?』
驚愕するコボルトの眼前には身体をアダマンタイトに変化させたリスティアの相棒のスライムであるスラリンは親だと思っているリスティアを護り、更には口? と思われるところから炎を噴き出す。
それによってコボルトは焼きコボルトとなった。
「ほんと、もうスライムじゃねえわ。スラリンは」
リスティアとスラリンの戦闘を少し離れた位置で見守りながら俺はそうぼやいた。
スライムの変異種、マジックスライムとなったスラリンは吸収魔法と擬態魔法が使える。そこで俺はスラリンに他者の魔法を吸収魔法で吸収できるかどうか実験を行った結果、成功した。
魔法をパックンって食べるかのように吸収してその魔法を再現した。それ以外にも色々な物質やポーションも吸収することに成功したスラリンはもはやこの世界で1体しか存在しないであろうチートスライムと化した。
まぁ、元々がスライムだから弱点もあるし、レベルも低いから倒される可能性もあるけど、セシル達と同等のレベルで分身魔法とか分裂魔法とか覚えたら流石の俺もゾッとする。
ちなみに他のスライムにも同じ実験を試してみたが、どれも失敗に終わった。
現段階ではスラリンだけがチートスライムになったのだ。
「スラリン!」
リスティアの呼び声に応じるかのようにスラリンは擬態魔法で銃に擬態するとリスティアの手に納まり、銃とスラリン銃。リスティアは二丁拳銃使いとなってコボルトを圧倒する。
その立ち振る舞いがめっちゃ様になっているので携帯を持っていたら間違いなく写メをしていたと断言できる。
そして今日のレベル上げが終えた頃にはリスティアのレベルは11。スラリンは7になった。
「うぬぬぬぬぬ……………………はぁ!!」
屋敷の中庭で地面に突き刺した秘宝ユグドラシルと睨めっこしながら唸り声をあげているセシルは両腕を上に上げると地面からラフレシアモドキが出てきた。
「ほぉ!」
今度は向日葵モドキ。
「へぇや!」
その次は紫陽花モドキ。
「とりゃ!」
そして次はサボテンモドキと中庭を花で埋め尽くしていくセシルに以前、何をしているのかと尋ねたらユグドラシルの新しい能力を模索しているようだ。
一見、奇妙なことをしているようにしか見えないけど謎が多い秘宝の能力を少しでも知ろうとする為の特訓だ。
そんなセシルを少し離れた位置から微笑ましく見守れるのが師匠特権というやつだ。
「ロリコン」
そんな俺にイサベルはとんでもなく失礼なことを言ってきやがった。
「誰がロリコンだ、誰が?」
「10歳の女の子をそんなエロい目で見ている人は皆ロリコンだと思うけど?」
「失礼な。俺はセシルをエロい目で見たことなどない。親心、兄心の目で優しく見守っているだけだ。誓って情欲に駆られてなどいない」
「はいはい。リブロがロリコンでも熟女好きでもどっちでもいいから訓練に付き合って」
「ロリコンでも熟女好きでもないっての」
なんだかんだ言いながらも俺はイサベルの訓練に付き合う。
イサベルとの訓練は俺にとってもいい刺激になるし、身体を鈍らせないためにも日頃の訓練は大事だということは身に染みている。
なにより武術に関しての知識と経験は俺達の中でイサベルが群を抜いている。いくらスキルがあるこの世界でもそれを上手く活用できる知識と経験が必要だ。
それを身に付ける為にもイサベルとの訓練は勉強になる。
そうして日課となっているイサベルと訓練をしているその時。
「「「っ!?」」」
俺達に重圧が襲いかかる。
俺、イサベル、セシルの3人はその重圧に瞬時に戦闘態勢を取って上空に向けて身構える。
索敵スキルなんて使わなくてもわかる。このプレッシャー………………エルフの街で戦った3万のモンスターが可愛く思えるほどだ。
そんなプレッシャーを放つ奴が真っ直ぐ俺達のいる方へ向かって来ている。
おまけに自信からなのか、馬鹿なのかはわからないが、気配も魔力もただ漏らした状態でここにくる。
それも2つ。
それがここに来る!
警戒を強いる俺達の上空より現れたのは2人の女性。
1人は肌が病的のように白くて身長は一般の成人男性よりも長くて恐らくは2メートルはある高身長の黒髪の女性。黒い着物のような姿で俺達を見下ろす。
もう1人は白い髪をしたドレス姿の女性。その相貌はまるで精巧な人形のように造られたかのような印象が強く、まるで等身大人形が意思でも持っているかのような美女だ。
だが、2人には共通しているところがある。
それは2人の瞳の色が紫紺色。つまり魔族だ。
それも恐らくは……………………。
「魔王………………」
2人から放たれる重圧からそうぼやく。
すると2人は上空からゆっくりと中庭に降りてくる。地面に足をつけると周囲を見渡したと思いきや俺と目が合う。
「えーあー、こっちの言葉通じる?」
白い髪をした方が言葉がわかるかどうか確認してくると俺は頷いて応じた。
「それはよかった。人間の言葉なんか覚えていないから通じなかったらどうしようと思っていたから」
言葉が通じたことに安堵すると、2人は自己紹介を始める。
「私は結晶の魔王、クリスタルノヴァ。ノヴァでいいわ。それでこっちが冥府の魔王、マトハル。喋らないから基本無視していいから」
「………………………」
結晶の魔王、クリスタルノヴァの言う通り、もう1人の魔王はただこちらをじっと見るだけで一言も喋らない。だが、そんなことはいまはどうでもいい。
この魔王達は何が目的でここにやってきたのかが問題だ。
少なくとも戦闘の意思はなさそうだ。けど、まったくないとは言い切れない。念の為に鑑定スキル…………………いや、念を入れて看破の精霊の力でレベルとステータスを視てみよう。
俺は看破の精霊の力で2人の魔王のステータスを視る。
マトハル
Lv97
体力:851
筋力:823
耐久:879
敏捷:835
魔力:978
スキルポイント:286
スキル:召喚魔法Lv9・転移魔法Lv8・氷魔法Lv8・鑑定Lv4・魔力強化Lv8・暗視Lv7・魔法耐性Lv8・煉獄LvMAX
クリスタルノヴァ
Lv98
体力:950
筋力:899
耐久:943
敏捷:821
魔力:989
スキルポイント:180
スキル:結晶魔法LvMAX・創造魔法Lv9・水魔法Lv7・剣術Lv7・魔力強化Lv9・魔法耐性Lv7・物理耐性Lv7・魔法複合Lv9・魔法構成Lv8・錬金Lv2
…………………俺ほどではないにしてもこの世界のレベルとステータスの臨界到達寸前だ。流石は魔王と呼ぶべきだな……………………。
2人に魔王のレベルとステータスそれから魔法とスキルを視て驚愕に包まれるも相手にできないことはない。この場にはレベルが150の俺と魔王と変わらないレベル95のイサベルとレベル89のセシルがいる。特殊な魔法とスキルを取得しているみたいだけど勝てない相手ではない。
だが、場所が悪い。
ここはアリアの屋敷内。戦闘になればこの屋敷の人達、いや、下手をすればこの街全体に被害が及ぶ可能性がある。
相手が相手なだけに下手に加減はできない。戦闘になればまずはここから離れる必要がある。
万が一に備えて警戒していると結晶の魔王、クリスタルノヴァの一言で俺達は言葉を失った。
「私達は魔族と他種族の戦争を止めに来たの。その為に私達に協力してほしい」
それは俺達が予想だにしていない言葉だった。




