演技
「では、まずこの宗教の教えに関して書かれた本を読んでおいてください。私はするべきことがありますから、何か疑問点があったら呼んでくださいね。」
レイカはそう言って、俺に本を手渡してから、慌ててどこかへ行ってしまった。まあ今すぐに何か食べる必要があるわけでもないから、昼に何か食うこともできるから大丈夫だろう。
本を読む前に、魔法の持続時間について調べるため、そして魔法は自分の創造したことを起こせるのかを試すために魔法を使おう。詳しい時間はわからないが半日程度持続させたいと思ったぶどうのマークを自分の右袖につけて、1分程度持続させたいと思ったマークを左袖につけるとしよう。
日本にいたときは、聖書や経典などを読んだことがないから、元の世界とどのくらい違うのかを楽しむことはできないがそれは元の世界に帰った時の楽しみとしてとっておくことにしよう。ざっくり読んでみて魔法の強さが絶対ということの理由が分かった。
そして魔法に関して思い出したから、左袖を見てみるとぶどうのマークが消えていることから、自分の思った持続時間になる可能性が高そうだということも分かった。さて、本の内容に戻るとこの宗教における神様は魔力を操る方法を人々に伝えたらしい。
エストアというその神様曰く、人類の発展には魔法が必要だから、魔法を発展させ続けることが重要らしい。だから魔法の強さが絶対で魔法を発展させることができる人が絶対ということにつながるらしい。これ、どこまで本当なのかがわからんな。
魔法が強いやつが偉くなりたくて適当に書いたんじゃねえかとも思う。だけどその考えの神が本当にいるのだとしてそいつが俺を召還したのなら、俺をこの世界に召還した理由は、魔法を発展させるためなのか?
いやいやいや、それはないな第一魔法の使い方も俺は何も知らないそんな奴が魔法の発展に役立つわけがないし。それにそれなら、あんなくそみたいな状況の場所に転移させないだろう。一歩間違えれば俺は死んでいたからな。
なら、俺を呼んだのは別の神なのか、何か他の理由があるのかのどっちかだろうな。こんなこと考えても無駄だろう、今の俺じゃ絶対にわからない。もっとちゃんと読み進めてみることにしよう。情報が足りない。もっと、もっとこの世界の情報が必要だ。
そうだ、なんかこの世界のことが知ることができるような、本をレイカからもらえばいいんじゃないか。
次に呼ばれたときに、ほかの本をもらえないか聞いてみることにしよう。そう考えて本を読み進めているとレイカが呼んできた。
「征吾さーん昼ごはん作りましたよ、今から食べましょう。」
「わかりました、行きますね。」
そうして、俺は昼ご飯を食べながら質問をすることにした。
「すみません。もっといろんなことを知りたいので他の本も読ませていただけないでしょうか?」
「わかりました、用意しておきますね。」
そういえば、ふと気になったから聞いてみることにした。
「レイカさんは何の魔法を使うんでしょうか?」
「私は水の魔法を使えます。」
そういいながら魔法を使用する。
「水球」
水が空中から出てきた。改めて魔法のすごさを実感した。
「私も。征吾さんの魔法を見せてほしいです!」
ふいに、そんなことを言ってきた。それなら大丈夫だろうと思い魔法を使用する。
「イリュージョン」
目の前にこの世界で見た花を出すことにした。
「すごいですね、そこまで魔法を操れるなんてきっと征吾さんはもっと有名になりますよ。」
そんな雑談をしながら食事を終える。彼女は常に笑顔を絶やさず会話していた、この世界にも同じような人が生きているということを認識した、この魔法があるなら、この世界は元の世界よりも生きやすいのではないかと思った。
それでも、俺は演技をして、この世界の住民をだまして何をしたって元の世界に帰ると決めた、だけどその決心は揺らぎそうになる。精神が弱いことを改めて実感する。どうするのが正しいのかわからない。それに、俺の魔法はすごいらしい。
魔法が強いならエストア教内では生きやすいはずだ。ならこの教会に俺を神は導いたのかもしれない。魔法を発展させるために。なら両方ともできるじゃないか、自分が転移した理由を探しながら、誰も騙さずに生活できる。
実質これは、何をしても元の世界に帰るという決意からずれることだと気づいていながら、それに見て見ぬふりをする。俺は本当に無情になれるのだろうか。でも、それでもいいのかもしれない。レイカさんが本を持ってきた。とりあえず知識をつけよう。
自分の感情をすべて無視して何も考えないために本を読む、ぶどうのマークなんてもう頭の中になかった。どんどん太陽は沈んでいき暗くなっていく。




