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第百九十四話 竜リゾートでの物件選び

 ムーヴィ様はどうやらせっかちな性格のようで、カガリス様の『眼』を使って、すぐさまオレっちたちごとウルドラの中央ダンジョン近くの森の中へと転移した。


 「あの〜⋯⋯これからどーやってダンジョン内に入るおつもりですか?」


 ダンジョン内に直接転移はできない。一旦中へと入ってしまえば、階層間は自由に転移できるのだが。


 「もしかして〜マルクス坊っちゃんが〜、冒険者登録をしてるとか〜?」

 「エイベル。それは絶対にあり得ない。あの坊っちゃんだぞ!?」


 万が一登録してたとしても、以前視たマルクス坊っちゃんのステータスでは魔物に瞬殺されて終わりだろう。⋯⋯というか、母親にとことん甘やかされているあのボンボンが、危険な冒険者を目指すワケが無い。


 『タロス君⋯⋯君は、僕を何だと思っているんだい?まぁ確かに僕は、ダンジョンなんて野蛮な所は微塵も興味が無いが』

 「⋯⋯」


 ──しまった!強制憑依じゃないから、中の人もフツーに健在やった!!(汗)


 「あ。え~と⋯⋯ご無沙汰しております、マルクス様!ウルドラに留学してからお会いしてないから、三年ぶりぐらいですかね??」


 今さらだが、とりあえず挨拶をしておく。


 『⋯⋯時々は帰国しているのだが⋯⋯まあ、君とはまったく会っていなかったから、そうなるか?』


 へー⋯⋯帰ってたんだ。知らんかった!


 「あれ〜?タロス知らなかったの〜?坊っちゃまが帰って来た時は〜食堂のメニューが全部無料になるから〜タロスも食べに行ってたでしょ〜?」

 「えっ!?食堂の無料デイって、旦那様たちの誕生日とかで⋯⋯あ。そう言えば、なんか地味に回数が増えてたような⋯⋯?」


 そうか⋯⋯!増えた分は、坊っちゃんの一時帰国祝いだったのか!!


 《それはどうでもいいとして。ダンジョンに入るのは簡単ですよ。これからダンジョンへと入る冒険者と一緒に入ればいいだけですから。ほら、そこに便利なスキルを持つ者がいるでしょう?》


 オレっちと坊っちゃんの会話がどうでもいいことだとムーヴィ様に一蹴された後、かの方の金色の瞳が、一人フヨフヨと宙に浮かんでいるチルドナに向けられた。


 キュ!そうか、その手があったか!!


 「⋯⋯えー⋯⋯面倒くさいなぁ」

 《そうですか?アナタにとってもあそこは安全だと思いますが。アナタ、アッチ側の裏切り者ですし》

 「⋯⋯ですよね。喜んで協力させて頂きマス!」

 

 それから、ムーヴィ様がダンジョン街に入ろうとする適当な冒険者を見つけて、打算的に協力的になったチルドナが↑↓スキルを使った。


 ピョーン、ピョーン!


 瞬時に小さくなったオレっちたちは、それぞれ密かに冒険者たちの背中に跳び乗り、服や装備品にしがみついた。


 「おお!やっぱ、女性冒険者だと臭くないな!」

 「うん〜。洗髪料のいい香りがするしね〜!」

 《そうでしょう。男の冒険者など臭くてたまりませんからね!》

 『いや、皆が皆そうではないと思いますが⋯⋯?』


 ムーヴィ様が選んだのは、竜人の女性冒険者たちだった。

 オレっちたち三人はそのうちの一人、緑髪の女性の長い髪に隠れるように彼女の背中にしがみついていた。ミルトちゃんとチルドナは、緑髪の女性の連れである青い髪の女性冒険者の背中にいる。


 マルクス坊っちゃんの言う通り、男の冒険者全員が臭いワケでは無いだろう。だが、ハッキリ言って野郎の背にはしがみつきたくない。生理的にな!






 ◇◇◇◇◇ 


 《──そろそろ、いいでしょう。上に飛びますよ》


 女性冒険者たちがギルドの建物内へと入る直前、

ムーヴィ様は皆に心話で指示を出された。


 オレっちとエイベルはムーヴィ様の御力で、ミルトちゃんはチルドナの神力で、上空──ダンジョン一階層の空へと飛んだ。


 おお〜!ウルドラの中央ダンジョンの一階層が、よく見える〜!!


 へー⋯⋯一階層の建物は、全て白と青で統一されているのか〜!ウルドラはダンジョン内まで計画的に整備してるんだな。(前回は、すぐに神々の遊び場へと転移したからよく見てなかった)


 《これから、竜の秘された聖域へと跳ぶます》


 ブゥンと目の前の空間が歪み、次の瞬間、ダンジョン一階層とは全く違う別の景色が目に入った。


 「⋯⋯おお〜⋯⋯!」

 「とってもステキな景色ねー!」

 「海も〜湖も〜⋯⋯森も見える〜!」

 「いかにも計算して造ったって感じの不自然さだよねー」

 《それはそうでしょう。皆が好む美しい自然なんて、人為的に手を加えないと存在しないのですから》


 ムーヴィ様の仰る通り、一見美しい景色でも、自然のままだと実際は宙には羽虫が飛んでるし、獣の糞だって落ちてる。地面だって雑草や砂や石混じりのガタガタだ。ま、遠くから見てる分には問題ないんだけど。


 オレっちたちは、海辺の白い砂浜へと着地した。流木なんかの漂流物が何一つ落ちていない、不自然な美し過ぎる人工(神工)浜だ。


 それに、こんなに日光が燦々と輝いているのに、ちっとも暑くない。周囲にある南国風の木々も、キッチリ間を空けて植樹されていて、いかにも整備されたリゾート地って感じ。


 《ふむ。立派な城や屋敷が幾つかあるようですね。では、そのうちのどれかを使わせてもらいましょう》


 実際、この浜辺近くにも、大きくて真っ白い優美な建物があった。


 「じゃあ、幾つか内部を見て回って、メインで使う場所を決めましょうか?」

 《そうですね。建物の大きさよりも、できるだけ使いやすい場所を選びましょう》


 広過ぎず、それでいてある程度の数の個室や自由に使える空間がある建物を念頭に、このリゾート空間内での物件探しが始まった。






 ◇◇◇◇◇ 


 《ふむ。やはりここが一番使いやすい気がします》

 『もう少し広くてもいいと思いますが⋯⋯?』

 「部屋数が30もあれば十分では?プールも温泉もあるし」

 「応接間も〜エントランスも〜吹き抜けで広いし〜」

 『⋯⋯まあ、君たち感覚だとそんなものなんだろうな。小賢者様はどう思われます?』


 一人、不満気な様子のマルクス坊っちゃんは、ミルトちゃんに声を掛けた。


 「そりゃあアタクシの城に比べれば狭過ぎるけど、無駄に空き部屋を作るよりはいいと思うわ!」


 さすがはミルトちゃん!合理的!!


 『そうですか⋯⋯では、異界の女神様のご意見は?』


 「わたスは、わたス好みの別の屋敷に住むから、ここはどうでもいいですー!」

 『⋯⋯』


 マルクス坊っちゃんと賛同する者は誰一人としておらず、坊っちゃんは沈黙した。


 まあ、確かにマルガナのお屋敷と比べると狭くて地味なんだろうけど、この人、ここには使用人がいないってこと忘れてるよね?

 建物や内部の家具なんかは何らかの術でキレイなまま保存されてるけど、ここで実際に生活するとなると、料理に洗濯、掃除もしなきゃならないんだよ?


 それから何だかんだあったが、竜リゾートの拠点となる建物は、標高の低い山の麓にある巨大なログハウスに決まった。


 当たり前というか、他の建物は石造りばかりだったから珍しさもあったし、やはり獣人としては木の温もりが一番落ち着く。だからここに決まって、正直嬉しい。

 あと珍しかったのは、島全域が屋敷化していた所と、火山近くのデンジャラスな黒いお屋敷。火竜神専用だったのかな?


 ちなみにマルクス坊っちゃんがイチオシしていた空に浮かぶ島に建てられたお城は、あまりにも広過ぎたし、明らかに上位の竜神が使っていた痕跡もあって、ムーヴィ様が《いろんな意味で使いづらい!》⋯などと仰られたので、早々に選択肢から外されていた。




 

 「末姫様のキューブは、一番外の景色がよく見えるこの部屋に置いておきましょう」


 そう言ってムーヴィ様は、簡易空間からフブル姐さんの神魂が入ったキューブを取り出し、金糸が大量に織り込まれた大きなクッションの上に、大切そうにそおっと置いた。


 キューブは淡く白金色に輝いているものの、姐さんのあの圧倒的な神力は微塵も感じられない。これ⋯⋯復活するには、かなりの時間を要するんじゃないだろうか?


 ⋯⋯それにしても。なぜに新たな憑依体仲間がマルクス坊っちゃんだったのだろう?他にも、兄貴やメロスたちだっていたのに⋯⋯よりにもよって、後継者争いに早々に負けた、ヘタレのマルクス坊っちゃんとは⋯⋯めっさ不安だ。


 それから一ヶ月が経ち、小獣学校が夏休みに入った時点で、ようやくカガリス様とヴァチュラー様が完全復活した。






 ◇◇◇◇◇


 ☆ マルクス視点 ☆


 その日、僕は神に選ばれし存在となった。


 運命のあの日、僕はウルドラの名門校での授業をサボり、とある場所へと行った後、自宅へと戻る予定だった。


 実は、一年ほど前からホスト家であったリヴァーン家を出て、一人暮らし──ではなく、新たにウルドラに建てられた我が家の別荘で暮らしている。

 使用人は5人と数こそ少なかったが、生活に不便は感じなかった。だから、このままの状態であと数年は自由にさせてもらいたい──などと考えながら歩いているうちに、何故か聖竜都一と呼ばれるデザート専門店の中にいた。


 ⋯⋯?アレ、僕はいつの間にこの店に来たんだ!?それに、なんだか口の中が甘い。えっ、もしかして僕はここで何かを食べたのか!?いやでも、どうしてその記憶が無いんだ!??


 《久しぶりの下界の甘味──なかなかでしたね!》

 「!??」


 あ、頭の中に、聞いたことの無い声が響く!?


 《ワタシはムーヴィ。アナタの加護神です、マルクス》

 「か、加護神様!?」

 《訳あって、アナタの体を借りなければなりません。いいですね?》


 頭の中に妙な圧を感じる。さすがは神のお言葉!重いっっ!!


 「あ、ハイ!!お好きにどうぞっ!!!」


 ──なんという事だ!この僕が、神の器に選ばれたとは⋯⋯!いや、それも当然か。僕はやはり、生まれながらに『持っている』者なのだ!!


 僕は高揚した。特別な獣人である事に。


 のだが──


 転移先で、その高揚は呆気なく萎えた。


 いや、その前に大体の事情はムーヴィ様よりお聴きしていたのだが、その時点ではムーヴィ様は他の選ばれし者の名を一切教えては下さらなかったのだ。


 何故に──なぜに、他の選ばれし者が、よりにもよって彼だったのか⋯⋯!!


 エイベル君はともかくとして、タロス君??どう考えても理解できない。しかも、この不気味なカリスが、最初に神の憑依体として選ばれただと!?


 実に嫌な予感がする。恐ろしく不安だ⋯⋯!!

タロスとマルクス坊っちゃん。お互いに同じことを思っています。ムーヴィ様は、一見、タロスの近くにいる自分の加護種であるマルクスを選んだように思いますが、そこまで近くなくても同調率の高い加護種は他にもいました。

 そこそこの同調率のマルクスを選んだのは、彼のセレブな生活環境を気に入ったからです。庶民的なのはちょっと⋯⋯って思うその辺りは、マルクスとよく似ています。


 二十四話と、閑話、坊っちゃんの留学にイラストを入れました。ハイネス先生(これから出番が増えるかも)と、マルクス坊っちゃんの変顔です。坊っちゃんのまともな顔は、そのうち描きます(笑)

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