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第百九十三話 カガリスの声と第三の男

 最後の最後で吉◯的なオチだったものの、なんとか生きて戻れました、お久しぶりの我が故国、ビスケス・モビルケ!!

 旅立ってまだ一ヶ月ちょいぐらいしか経ってないのに、空を覆うばかデカいウルドラシルの木々が、ヤケに懐かしく感じる。


 「う~ん!なんか久々に元の大きさに戻ると、違和感があるなぁ!」

 「うん〜、そうだね〜。山のように大きく見えてた物が〜小さく見えるようになっちゃったからね〜」


 姿を見られてもお屋敷の人に咎められないオレっちとエイベルは、元のサイズへと戻り、ミルトちゃんとチルドナは小さなまま、オレっちのベストについてる左右の胸ポケットへと、それぞれ別に入ってもらった。


 「う~ん⋯⋯それにしても身代わり人形たちは大丈夫なのかな?」

 「そうだね〜⋯⋯ヴァチュラー様たちの〜影響を受けてるとしたら〜術が解けてるってことも〜あるかも〜?」

 「今の時間で部屋に戻ってないなら、その可能性が高いな⋯⋯」


 それを確認するためにも、とにかくアパートに急いで帰らないと。

 オレっちとエイベルは、足早に歩き出した。


 時刻は、午後4時過ぎ──早出の使用人たちが帰宅する時間でもあり、住み込みの人たちのための食堂が本格的に夕飯を提供する時間だけあって、お屋敷内の庭や回廊などは人が少なくなっている。その上、できるだけ人と会わないように慎重に歩き進んでいるから今のところ誰とも顔を合わさずに済んでいた。


 「やっと着いた⋯⋯!」


 倉庫が立ち並ぶ場所とはかなり距離があった上に人目を避けて移動したから、オレっちのアパートへとたどり着くまでに30分以上もかかってしまった。その間ミルトちゃんは、オレっちの左胸ポケットから敷地内をキョロキョロと興味深げに見ていた。

 そして、遠くに見えるお屋敷の使用人たちを眺めては「アレってミケラ!?アッチはシバーヌ!?他にもいっぱい⋯⋯!小獣人ばっかりで目移りしちゃうわ!!」と、ポケットから身を乗り出して、興奮しまくっていた。


 右ポケットに入っているチルドナはというと、「やっぱり獣人は、短毛より毛長の方がカワイイ感じがする!」と、よくわからん独自の獣人美醜論を展開していた。獣人からしてみれば、『それって人間で言えば、短髪よりも長髪の方がカワイイってことじゃねーの?』⋯なんだけどな。


 「え~と、鍵は⋯⋯かかって無い、と」


 平日のかーちゃんの帰宅時間は、午後5時過ぎが多い。た〜まに、早出出勤で早く仕事が終わる時もあるが、決まってそういう日は他の人たちとおしゃべりしているので、結局5時を過ぎている。


 ゆっくりと扉を開けて、そ〜っと玄関を覗き見る。


 よし!かーちゃんの仕事用の靴はまだ置いてない!だけど⋯⋯オレっちの通学用の靴はある。ということは、オレっち人形は帰宅しているワケで──


 「よっ、おかえり!」

 「よかった⋯⋯ちゃんと動いてる⋯⋯!」


 オレっち人形は、普通に稼働していた。


 「よかったね〜、タロス〜!」

 「ああ。ホッとしたよ!人形に戻ってたら、ホントにどうしようと思ってたから!」


 オレっちとエイベルが行方不明なんてことになったら、かーちゃんや執事さんだけじゃなく、お屋敷や学校まで大騒ぎになるとこだった。最悪、復活したカガリス様たちに、暗示かなんかでなんとかしてもらおうとは思っていたが。


 オレっちは、オレっち人形を停止させず、そのまま本人として生活させることにした。なんせ、オレっちが留守の間の人形の記憶は、カガリス様が戻らないとこっちにデータ転送されないのだ。ヘタに入れ替わったら、何かしらに矛盾が生じるかもしれないしな。


 よし、チルドナにまた、↑↓(上げ下げ)スキルをかけてもらおう。


 「え~と、僕の人形も〜大丈夫なの〜?」


 エイベルが不安そうに、勉強机の椅子に腰掛けてるオレっち人形に訊ねた。


 「ああ、正常に稼働している。今日も、針をチクチクと刺しにいってた!」


 ああ、服飾学科に行ったんだな。我が分身ながら、妙な言い方をするなぁ。まあ、それはともかく、エイベル人形の方も問題無しっと。


 後は、アッチの大陸に置き去りにしたシルジーさんの安否と、簡易空間に保管されたままのキューブ(フブル姐さん)の様子だな。

 簡易空間が使えない今はどうしようもないが、ミルトちゃんの眷属契約は解除されていないということなので、とりあえず姐さんは無事だと思っておこう。


 《──タロス!!》

 「キュ!?カガリス様!?」


 チルドナに神スキルを使ってもらって再び小さくなったオレっちの頭の中で、カガリス様の声が鳴り響いた。


 「もう復活したんですか!?」

 《してねぇ!だが、声ぐれぇは届けられる!》

 「そ、そうなんですね⋯⋯?」


 「何、どうしたのタロス君?」


 オレっちのポケットから出た後、靴を脱いで、それをベット下に置いていたミルトちゃんが、同じサイズになったオレっちを唖然とした顔つきで見ていた。あ〜、はたから見たら完全に独り言だもんな。


 「え~と⋯⋯カガリス様が、神界から声だけ送ってきたみたいなんだ」

 「えっ!」

 「声だけねぇ⋯⋯まぁ、かなり消耗してたからねー。仕方ないなぁ。ちょっとだけ力を貸してあげる!」


 チルドナがそう言って、指をパチンと弾いた。


 《あっ、コラ!勝手にオープン拡声すんな!》

 「えー、だって、いちいちタロスを介して話を伝達するのって面倒くさいでしょ〜?」

 「そうね。タロス君も大変だし」

 「あの〜カガリス様〜!ヴァチュラー様は大丈夫ですか〜?」


 《ヴァチュは⋯⋯っと、俺もだが、コッチの方でもいろいろあってな。今は神界の方で活動する方が優先になってる》

 「こ゚無事なら〜それでいいです〜」


 今まで口には出さなかったが、エイベルもかなり心配していたのだろう。少しホッとした様子だった。


 それからのカガリス様の話を簡潔にまとめると、まず今回の件は、神界でもフブル姐さんのことを含めて、ザドキエルやタルタロスからの憑依神たちへの対処をどうすべきか、という大問題になったらしい。

 しかし、肝心の二大神が最終的に下した結論は、『各々の判断に任せる』というものだった。


 ⋯⋯?つまり、介入するかどうかは、自分たちで決めてね〜⋯⋯って、こと!?


 ちょっと、待てや!一番上の判断がソレっておかしくない!?

 特に、フブル姐さんのかーちゃん⋯⋯もとい、母神様!それでいいの!?神様の親子関係って、そんなに希薄なもんなの!??


 《大昔とは違って、大神は情では動かない。俺らを管理するシステムだと思った方がいい。それでも地大神メガニーブ様は、まだ感情が残っている方だと俺は思っているが⋯⋯》


 メガニーブ──ああ、あのオレっちに憐れみスキルを恵んでくれた⋯⋯って、それどころじゃなかった!

 情が残ってるって!?でも実際は、配下の神々に丸投げしてるだけでしょ!?自分の娘が弱ってるってのに──


 《上には上の思惑があるんだ。しかも、個々の判断に任せるつーことは、下位世界に介入することをある程度認めたという事でもある。実際、己の加護種に憑依するために精密神器を製作するのに長けた奴らに、憑依神器を大量に注文してるしな》

 「ま、マジですか!?」

 《マジだ。だが、それには少し時間がかかる。しかし、末姫様を簡易空間に入れっぱなしという訳にはいかないからな。とりあえず俺の憑依神器をとある奴に貸しておいた。簡易空間の(パスワード)を教えてあるから、しばらくはそいつに任せる。ちなみに、もうすぐオメーたちの前に現れる筈だ》


 「!??」


 オレっちやエイベルに続く、古き神々の憑依者!一体どんな加護種で、どーいう性格の神様なんだろう!?


 《ああ、すでにコッチに着いているな。少しばかり驚くかもしれねーが、奴はヴァチュと同じくれぇ冷静な判断ができるし、下位世界での今までの経緯は全て伝達済みだから、頼りになるぞ!》


 《そんなに持ち上げなくてもいいですよ、カガリス。それにしても、たまたま相性のいいワタシの眷属が、彼らに近い存在で良かった》


 「キュっ!?」

 「えっ!?」

 「ええ~〜!?」

 「新たなモフモフ来た〜っ!!」


 オレっち、ミルトちゃん、エイベルが、聞き慣れない口調の声にビックリして周囲を見渡すなか、チルドナだけが窓の方を見上げていた。


 新たなモフモフ──うん。いつの間に窓際に立っとったわ。


 紫銀の体毛に、ツンと長い鼻、そして、やたらに金糸が織り込まれたゴージャスなベストと二本のふっさり、もっさりした尻尾──


 って、小さくなってるから判別するのに時間がかかったけど、(相手は巨人サイズ)アンタ、ウルドラに留学しているハズのマルクス坊っちゃんやないかいっっ!! 


 「マルクス坊っちゃん!?」

 「それは、憑依したワタシの加護種の名ではあるが、今はムービィと呼んでくれたまえ」


 そう名乗った瞬間、坊っちゃんの淡褐色の瞳が、パアっと金色に輝いた。

 あ、確かに神様だ!それに、雰囲気も少し違う。口調はやや似ているような気もするが、傲慢さが控えめだ!(マルクス坊っちゃんは、常に上から目線)


 「さて、カガリス。君から情報をもらっていろいろとワタシなりに考えたのですが⋯⋯末姫様のキューブがあるこの簡易空間は、絶対に安全とは言えないでしょう。ザドキエル側に(パスワード)を解析されたら終わりです」

 《しかしな、ムービィ。外に出して保管するといっても、難しいぞ?》


 だよね。あのキューブ、結構目立つし。


 しかし、ムービィ様は表情一つ変えず、淡々と言葉を続けた。


 「あるじゃないですか。竜の半神がよこしたという、竜神たちの特別な空間が」


 「!!」


 そ、それは、ユーグラム様が言ってた竜神たちのかつてのリゾート地!?もとい、ウルドラにある中央ダンジョンの最下層のことですか!?

ムーヴィ様は本来六本尾です。かつてはその眷属(加護種)たちも六本でしたが、時を経た今の時代、尾の本数はかなり少なくなっています。それは全ての加護種たちにいえる事で、2、3本が普通です。それだけ加護(神力の影響)が薄くなっているんですね。

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