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第百九十話 ヒヤリハットと未知の食とウルドラム大陸への帰還

 「ビックリしたチル!ワシたちと同じサイズの獣人がいるなんてチル!!」

 「加護種のスキルは前から多彩だと思ってたけど、やっぱりスゴいチル〜〜!!」


 チッ・チェさんと交代にきた樹海専門小人研究者、コロ・コロ・リチルさんとマン・マル・リチルさんがオレっちとエイベルをガン見しながら、そう言った。


 コロ・コロさんもマン・マルさんも、チッ・チェさんよりもかなりの年嵩で、共にふっくらとした体型の男女だった。


 オレっちがいろいろな衝撃的な情報をチッ・チェさんに聞かされてから二度寝した後、(情報過多で頭が疲れた)エイベルに起こされて目が覚めるまでの四時間の間に、二人は転移してきたらしい。


 「転移システムの不具合は直ったみたいチルね」

 「うむ。でも予定より時間が掛かってしまって、かなり遅れてしまったチル!」

 「備蓄も尽きてたんじゃなかったチル?」

 「それはなんとか。でも、客人に出せるまともな食事が無くて困ってたチル!」

 「あらまぁ!それじゃ持ってきた食材で、今から何か作るチル!」


 マン・マルさんがそう言って、キッチンの方へと消えていった。


 「⋯⋯」「⋯⋯」「⋯⋯」


 チルチルチルとテンポよく会話している三人の話に割り込めなくて、ポカンとしていたオレっち、エイベル、ミルトちゃん。


 「なんだか申し訳ないわね。アタクシたちも何か手伝った方がいいのかしら⋯⋯?」


 しばらくして我にかえったらしいミルトちゃんが、オレっちを見た。

 じゃあみんなで何か手伝おうか──と、言いかけた時、「白い毛に花冠の小獣人⋯⋯う~ん、どこかで聞いたような⋯⋯?」と、コロ・コロさんがそう言ってオレっちを凝視していた。


 「あっ⋯!そうだ!!何年か前のヒヤリハットだチル!!」


 ヒヤリハット??


 「君、『カリス』チル!?アナナグラで同胞を助けてくれたチル!?」

 「キュ!?」


 コロ・コロさんに、小人さんとの初遭遇を指摘されたオレっちは焦った。


 「ああっ!そういえば、何年か前に久しぶりに現地民に目撃されたって報告があったチル!カリスは絶滅寸前の加護種だからそんなに数がいないし⋯⋯じゃあ、もしかしてタロス君が仲間を助けてくれたチル!?」


 そう言ってチッ・チェさんが、オレっちの両手をギュッと握ってきた。これは⋯⋯どう返答すればいいんだ!?


 「タロス〜、アナナグラで〜小人さんと会ったことがあったの〜?」


 ビックリ目になったエイベルからの視線が痛い。


 「会ったと言うか⋯⋯確かに偶然にも小人さんを見たけど、自分でも信じられなくてさ。幻か白昼夢だったのかな〜?とか思ってたんだ!」


 ハイ、嘘です。ステータス画面で確認して『宇宙人』ってことまで知ってました!!

 でも、ここは誤魔化しておくべきだろう。実際あの時、エイベルたちには話さなかったしな。

 

 「そうよね。小人なんて昔話でしか聞いたことが無い存在だものね」

 「ああ、うん⋯⋯」


 ミルトちゃんの言う通りだろう。あれからオレっちなりに調べた結果、小獣国の昔話の中にもそれらしき存在があった。ただし、どれも妖精っぽい書き方をされていたので、目撃者の話を聞いた作者の想像だったのだろう。


 「あ、あのー⋯⋯ところで、ヒヤリハットって何なんですか?」


 少しでも話題を逸らそうと、気になっていたことを質問してみた。


 「地上の民にボクたちの姿を見られた時や、地下に住んでいる事を知られそうになった時の報告書だチル。どんなに小さな事でもその可能性がありそうだったら、コロニー市民には報告する義務があるんだチル。そして、そうした状況を二度と起こさないために、皆で情報共有して改善していくんだチル!」


 なるほど。まさに、ヒヤリハット!彼らからすれば、その存在が確定されればいろいろやりにくくなるもんな。借りパクとか。

 あるいはその加護神を訊ね──は、無いか。体のサイズが違い過ぎて会話が成り立たないしな。いや、でも集音スキルなら聴き取れるのか?


 オレっちがう~んう~んと考えているうちに、マン・マルさんの作ってくれた食事が用意されていた。速っ!


 ⋯⋯ん?なんか丸い──一口団子みたいな料理だな。三皿出てきたけど、どれも赤と茶、緑の色違いの小さな団子ばかりだ。それが皿からあふれるほど山盛りになっている。

 そして、マン・マルさんは、それらの横にたくさんの木製の長い串が入った容れ物を置いた。


 「赤いのがシビレー、茶色がシブー、緑がネバーチル!レンジで解凍しただけの物で申し訳ないけど、美味しいチルよ!」


 めっさ作るのが速いと思えば、冷凍食品でしたか!


 「ぜ〜んぶ、ワシたちの名物料理チル!」

 「でも、地上の加護種さんたちの口に合うチル?」


 シンプル過ぎる見た目はともかく、味には興味がある。それに、自己治癒を持つオレっちならば多少の毒(種が異なると毒になる食材もある)でも大丈夫だしな!


 「──いただきます!」


 初見の料理に戸惑っているエイベルやミルトちゃんに先駆けて、素早くフォーク代りの串で一色ずつ突き刺し、頭から順番に口の中へ──


 モグモグモグ。


 シビレーは──うん、美味い。ビリッと辛いポテト味って感じ?シブーも胡椒が効いてて美味い。ちょっと固めのミートボールっぽいけど。ネバーは⋯⋯これは⋯⋯すり潰した豆の料理かな?ちょうど良い塩加減で、オレっち的には◎。


 ふんふん。美味しいし、特に違和感も無いし、今のところ体にも影響無し⋯っと!


 「美味しいです!!一口サイズだから食べやすいし!」


 オレっちを凝視していたマン・マルさんたちに、満面の笑みを見せる。それを見たリチル星人⋯じゃなくて小人研究員さんたちは、あからさまにホッとした様子だった。


 おそらく、彼らの食事を食べた加護種は、オレっちが初めてなのかもしれない。そういう意味でも安心したのだろう。それに、種によっては毒以外にも味覚の違いもある。まあ一番の心配は、自分たちの名物料理が不味いと思われることだったとは思うが。


 「じ、じゃあ〜、僕たちも〜⋯⋯」

 「そうね。頂きましょう!」


 オレっちの反応を見たエイベルとミルトちゃんも、三色の団子料理を食べ始めた。


 「辛くて〜美味しい〜!この赤いの〜!」

 「アタクシ、この緑のが一番好き!」

 「オレは、どれもイケる!」


 モグモグ、ハムハム、パクパクと三人で食べ進むと、マン・マルさんがそっとお茶を出してくれた。この色と香りからして、緑茶かな?


 「あ、あの、皆さんもどうぞ!」


 お茶を飲んだ後、宇宙食⋯もとい、地底食の興奮から覚めたオレっちは、ハッとなった。


 いかんいかん。オレっちたちだけで食べ尽くすとこだった!


 「ワシとマン・マルはいいチル。でもチッ・チェは食べるチル!」

 「久しぶりのまともな食事だチル!いただきますー!」


 そう言ってチッ・チェさんは、木串に料理を刺せるだけ刺して、ガツガツと食べ始めた。






 ◇◇◇◇◇


 「会ったばかりで残念チルが、これでお別れだチル!」


 食べ終えて早々に、ウルドラム大陸へと転移することになったオレっちたち。


 「本当に何から何まで──ありがとうございました!!」

 「ありがとう〜ございました〜!」

 「本当に助かりました!お会いできて嬉しかったです!!」


 一番奥まった部屋にあったいかにも未知の装置ですっぽい透明なカプセルの前で、コロ・コロさんとマン・マルさんにお礼と別れの挨拶をする。


 「向こうのコロニーには詳細な連絡をしてあるし、ボクも一緒だから心配しなくていいチル!」

 

 ヤケにデカいリュックを背負ったチッ・チェさんが、そう言って胸を張った。


 「さあ、みんな忘れ物は無いチルか?」


 チッ・チェさんはともかく、オレっちたちは最初から何も持って無い状態だったから、その心配は無い。


 「ハイ、ありません!!」「はい〜無いです〜!」「⋯⋯。⋯⋯あ!あったわ、忘れ物!!」

 

 ミルトちゃんが、ハッとしたように叫んだ。


 「えっ、何かあったっけ?」

 「チルドナよ!!あのコ、まだ寝てるんだわ!!」


 ⋯⋯。⋯⋯。──マジで忘れてた!!!


 急いで見にいった結果、チルドナは寝台の上で三角座りをしたまま固まっていた。本人曰く、寝ていた訳ではなく、空気中の魔素を吸収していたらしい。


 「この人形の体じゃ神力の回復が思うようにいかなくって」

 「ふ〜ん⋯⋯?」

 「⋯⋯言っとくけど、わたスがアンタらに継続して掛けてるスキルのせいでもあるんだからね!」

 そう言ってチルドナが口を尖らせた。


 目は口ほどに物を言う──ちょっとジト目で見すぎちゃったかな?確かにチルドナ本人の残念さはともかく、この神スキルには感謝してる。

 このサイズじゃないと樹海の魔獣や魔蟲たちから逃げ切れなかったし、小人さんたちとも会えなかったしな!


 「うん。そこは感謝してる。ありがとう、チルドナ!」

 「チルドナさん〜ありがとう〜!」

 「そうね。凄いわ、チルドナ!」


 「わかればいいんです!!」

 フンッっと両手を腰に当てて、チルドナは言った。単純な奴め。

 

 こうしたハプニングはあったものの、その後はすんなりと転移し、ついにウルドラム大陸へと戻ることができた。






 ◇◇◇◇◇


 「え~と、それは事情聴取ってヤツですか?」


 大陸間転移の先は、ウルドラの地下にあるコロニーだった。

 ここから小獣国へと行くには、別の転移装置を使わなければならない。そしてそれだけなら単純なことなのだが、オレっちたちの事情を知ったリチルのお偉いさんたちが、そこに待ったをかけた。


 「うん。事情を詳細に伝えた結果、この機会にいろいろと訊きたい事があるようなんだチル。それに、このコロニーを案内したいけど、キミたち小獣人の姿はここではどうしても目立ってしまうチル。コロニー長から街全体に情報伝達してもらわないといけないチル」


 チッ・チェさんが、申し訳なさそうな顔でそう言った。


 確かにこのサイズの獣人なんて今まで存在しなかったのだから、何も知らずに突然見た者はパニくるだろう。


 結局、それまでの間、オレっちたちは転移装置のあるこの施設から一歩も出られず、コロニー内を出歩くこともできなかった。

 でも、施設の高い場所から窓越しに見る彼らの街は、オレっちたちの街よりも未来的で、かつての世界よりも高度な文明を持っていることがわかった。

 

 そもそも、地下深くにありながら空が青く、太陽が輝き、時折曇ったりするのだ。そこからして、この文明レベルがどれ程のものかが察せる。疑似太陽に疑似天候──魔法を一切使えない彼らだが、未だにスゴい科学力を保持しているらしい。


 「スゴい地下都市ですねっ!」

 「規模はかなり縮小されちゃったチルけどね」

 「?」


 キュ?コレで!?


 「エネルギーはともかく、機器のメンテナンスの問題で昔ほど高度な生活じゃないチル。都市の中心街の他は上の文明と変わりないチルよ。確実に、文明レベルは下がってるチル」


 なるほど。さすがに数万年も経つとそうなってしまうものなのか。


 ──ハッ!今頃気づいた!!


 魔素を取り込む器官を持たない彼らは、この星でどうやって生き延びてきたんだ!?(根本的問題)

第百四十六話にカーリリスのイラストを載せました。基本的にモフの方が描きやすいです。人間は難しい⋯⋯

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