第一章 実力派集団
日本と似て非なる国、東国。北海道より少し大きいくらいの国土の東側。なだらかな地形が多いこの国では珍しい、小高い丘の上にある街「イドパ市」の中心にひと際目立つ建物がある。そこには東国政府警察局異能犯罪対策本部という異能力者たちが集う組織がある。一言で説明するのなら優秀すぎるが故に左遷された者たちの最後の居場所だ。
東国政府警察局異能犯罪対策本部には、神食人抵抗殲滅特務課、地域安全特務課、侵入捜査特務課、異能捜査特務課、航空警備特務課、人事特務課といった6つの部署があり、その中でも危険な任務を背負うのが神食人抵抗殲滅特務課…通称GCR課だ。1世紀前の東国政府が立ち上げた由緒ある部署の1つで、人を喰らう食人から国を護ることを仕事としている。
神食人抵抗殲滅特務課、地域安全特務課、侵入捜査特務課、異能捜査特務課、航空警備特務課には1~3課まであり、1課が仕事量も強さもトップ、しかし常人ならざる者を相手にした戦闘という仕事の中で殉職する者も多い。そもそもGCR課の相手は何か。名前から分かる通り、天上を支配し国を壊滅させようとしている神、そして神が人間や天使を弄んで誘拐し、人を喰い殺す化け物である食人が敵である。そんな食人を全て殲滅し神を殺すことで国に平和をもたらすことを目的としたのがGCR課なのだ。
GCR課は指示斑、戦闘斑、補助斑の3つに分かれており、1課だけで総勢12人在籍している。本格的に国を守護しているのは指示斑と戦闘斑と補助斑だが、1~3課まである課は基本戦いに身を置いている。王立警察とほぼ同等の権力を持ち、極道とほぼ同等の力があるGCR課は日常的に武器の所持や使用、手錠の所持や使用、異能力の使用が認められている。これは、GCR課…東国政府警察局異能犯罪対策本部の中でも特に権力と実力の高い集団、GCR1課の物語。
お揃いの藍色のYシャツに鴨頭色のアウターを羽織り、墨色のスキニーパンツ、栗色のショートブーツの足首をズボンの裾の内側に入れて隠す…これこそが彼らの制服であり、正装だ。班によってアウターの色や形こそ違えど、アウターの右下にハートのスートを縫い込んでいるから一目で1課だと分かるだろう。班によってはアウターの後ろが長くなっているため、ポケットに武器を隠したり太ももにホルスターをつけている。皆、純白の手袋を身に着けて任務に向かう。栗色のベルトの背面には各人が異能力を使うための魔力が濃縮された宝石が縫い込まれている。任務中、右耳には宝石や切り替えボタンの付いたインカムをつけておりこれで救援を求めたり任務完了や戦闘開始の合図を送ったりしているのだ。これこそが彼等の命綱であることに間違いはない。