二回目
「もう少し小さく」
「これくらい?」
「もう少し」
オルティナが細い杖を上げる。水が指先ほどの球になって測定器の前へ浮かび、ゆっくり回る。
「これ以上小さいと面倒なんだけど」
「あなたならできるでしょう」
「雑」
検査官は何も言わず器具を見る。透明な石の中で、光がゆっくり揺れる。
「安定しています」
「はい」
「判定に変更なし」
「B級?」
「そうです」
「よかった」
「何か心配が?」
「別に」
いつもの検査。いつもの結果。オルティナは少しだけ器具を見る。
「一つ聞いていい?」
「何でしょう」
「同じ日に、これ二回やることある?」
「同じ測定を?」
「うん」
「機器の不調や、結果に疑義があれば」
「A級なら?」
「A級だから同じ測定を繰り返す、ということはありません」
「詳しい検査は?」
「通常は別の項目を追加します」
「そっか」
やっぱり少し変だ。
◇
検査室を出る。廊下。角を曲がる前に職員の声が聞こえた。
「まだ戻ってないの?」
「隔離側から?」
「そう。魔力反応計」
「昨日持っていったやつ?」
「検査詰まってるんだけど」
オルティナの足が止まる。
「予備は?」
「使ってる」
「故障?」
「違うって。隔離側で必要になったらしい」
昨日、魔力反応計が隔離側へ持ち出された。
「すみません」
声をかけると、二人が振り返った。
「何?」
「その器具」
「これから検査?」
「もう終わりました」
「じゃあ」
「昨日、隔離側に持っていったって」
できるだけ普通に聞く。
「同じ型?」
「そうだけど」
「壊れてたんですか」
「いや」
「じゃあ何で」
「向こうで必要だって」
「誰が言ったんです?」
「正式な持ち出しなら、隔離管理官から申請が来るよ」
「隔離管理官?」
「うん」
「ありがとうございます」
それ以上は聞かなかった。アリナに使ったかはまだ分からない。
◇
「昨日?」
監理院を出てから、俺が聞き返す。
「うん」
「同じ魔力反応計?」
「同じ型」
オルティナが言う。
「壊れてたわけじゃない」
「隔離側で必要だった」
「そう」
アカポリスが考える。
「前は」
「何?」
「誰がアリナに二回目の検査をさせたか、だった」
「うん」
「今は」
一度、監理院を見る。
「昨日、隔離管理側が魔力反応計を必要としていたところまで分かった」
「それがアリナの二回目なら――」
言いかける。止めた。
「……いや」
オルティナが俺を見る。
「何」
「まだアリナに使ったか分からない」
「そうだね」
少しの間、話が途切れた。
「そういえば、ティリナとは検査で知り合ったんだよな」
「うん。何度か話しただけだけど」
「ほかに仲のいい魔法使いは?」
「いるよ。レイリ」
「どんなやつ?」
「私より口が悪い」
「それは相当だな」
「失礼な」
「どこにいるの?」
「村。私の故郷に住んでる。ここからはちょっと遠いけど」
「へえ。お前にも友達いるんだな」
「……どういう意味?」
「いるんだなって」
「二回言わなくていい!」
オルティナが笑った。つられて少し笑う。
監理院の扉は、すぐそこにあった。
「じゃあ次」
俺が聞く。
「何を調べる?」
アカポリスが言う。
「隔離管理官が誰か」
「その人が申請した?」
「正式な持ち出しなら、ね」
「じゃあまず名前」
「ああ」
監理院の扉を振り返る。アリナを隔離している側から、二回目の測定を求めた理由を、今度は直接聞ける。




