五つ目
「公式の回収記録にある、未知の魔法装置の破片は四つです」
北の事件現場。広場に立つ衛兵が報告書を開いた。王国式の刻印はなく、一部には黒い石が残っている。
バレンティアは記録を見た。
「もう一つある」
「え?」
「五つ目だ」
衛兵が目を見開いた。
◇
「なぜ記録にないんです」
「私が提出しなかった。見つかった場所が気になってな」
「場所?」
「広場から離れた路地だ」
「爆発で飛んだだけでは?」
「その可能性もある。だから確認する」
◇
路地は狭く、両側に建物が並ぶ。広場からは直接見えない。
「ここですか」
「ああ」
当時、金属片が石壁の下に落ちていた。
「もう何も残ってませんね」
「当然だ」
古い壁には傷が多かった。そのうちの一つに、バレンティアの目が止まる。
「……これは」
「何です?」
二本の線。交わっている。浅い。ただの傷にも見える。
「ただの傷かもしれませんよ」
「そうかもしれない」
バレンティアは紙を出し、二本の線を写した。あとでただの傷だと分かるにしても、形は残しておける。
「息子さんも大変そうですね」
「なぜだ」
「あなたに育てられたのでしょう?」
バレンティアが考える。
「私よりは、素直だ」
「娘さんは?」
「……私にも遠慮はないな」
「それは、いいことですね」
「ああ」
バレンティアは写した線を畳み、懐へしまった。
「また言い返してもらわなければな」
◇
戻って五つ目の破片を四つの記録と並べる。
「ほかの四つと同じですか?」
「似ている。だが、同じ装置のものとは限らん」
バレンティアは厚さや破断面を確かめた。五つ目には、一面だけ黒ずみの濃い部分がある。
「ここ」
衛兵も気づいた。
「焼け方が違いますね」
「そう見える」
灯りへ傾けると、ほかの面は鈍く光を返すのに、そこだけ光らなかった。指では触れず、位置だけを確かめる。
「明日、表面の汚れだけを落とす」
「その下に何かあるんですか?」
「確かめる」
バレンティアは五つ目を見下ろした。広場から離れた路地と、壁の二本の線。そして、ほかの四つとは焼け方の違う一面。
明日、その下を調べる。




