違う道
「昨日と同じ場所には行かないよ」
アカポリスが言った。
「地下は?」
「今日は行かない」
「でも」
「見られたかもしれない」
「かもしれないだけだろ」
「そう」
「じゃあ」
「だから違う道」
監理院から少し離れた通りを歩く。オルティナも一緒だった。
「後ろ」
アカポリスの声に振り向きかけた。
「坊ちゃん」
「まだ何もしてない」
「今しようとした」
オルティナは通り沿いの店の窓ガラスに目をやった。後ろを歩く人たちが、薄く映っている。
「こう」
「なるほど」
「私より上手いね」
アカポリスが言った。
「嫌な褒め方」
しばらく歩いたが、灰色の帽子は見つからなかった。
「昨日の人は?」
「見えないね」
「偶然だったのかな」
「そこはまだ追えない」
アカポリスが前を向いたまま言う。
「でも、昨日と同じ場所へ戻らない理由にはなる」
「……アリナは中にいるんだよ」
「分かってる」
「別の道歩いてる間も」
「ああ」
「何もしないで時間だけ使うの、嫌なんだけど」
アカポリスが俺を見る。
「急ぐのと、急いでるところを見せるのは別だよ」
「……」
「相手がいるなら、坊ちゃんがどれだけ急いでるかも情報になる」
「分かった」
「ならいい」
「私は」
オルティナが言った。
「監理院に普通に入れる」
「検査で?」
「そう」
「便利」
「その言い方嫌」
少し、杖を持ち直す。
「これからも検査あるし」
「だから」
オルティナが続ける。
「変なことして入れなくなるのは困る」
「じゃあ無茶できない?」
「しない」
「即答」
「普通に入れるなら、普通に入った方がいいでしょ」
アカポリスが笑った。
「その方がいい」
「でしょ」
「そういえば」
思い出した。
「何?」
「アリナ、昨日同じ検査二回やったらしい」
オルティナが止まった。
「同じ検査?」
「魔力反応の測定」
「同じ日に?」
「うん」
「私はない」
「一回も?」
「少なくとも、同じ日に同じ測定を二回はない」
アカポリスが聞く。
「A級だから増える?」
「詳しく見るなら別の検査を足すと思う」
「同じものをもう一回、じゃない?」
「私はされたことない」
アカポリスが考える。
「誰が二回目を決めた」
「分からない」
「同じ人が測った?」
「そこも」
「じゃあ」
アカポリスが言った。
「次は人だね」
「誰?」
「アリナに、二回目の検査をさせた人間」
オルティナが監理院の方を見る。
「私」
「何?」
「次の検査、普通に行く」
「うん」
「そのとき、同じ測定を二回する理由を聞いてみる」
アカポリスがオルティナを見る。
「無茶は?」
「しないって」
「ならいい」
「ティリナのこともあるし」
一度、俺を見る。
「決まるまで付き合う」
「ありがとう」
「急に素直」
「言うときは言うよ」
「そっか」
オルティナが杖を持ち直し、先に歩き出した。




