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執事がラスボスな件  作者: 肩ぐるま


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第8話 商人の検討

「ふむ、闇社会のコントロールですか。主殿も甘い。一層のこと制圧してしまいますか」

独り言を言いながら、セバスはダンジョンマスターの権能である、ダンジョンコントロールパネルを開いて、召喚できる魔物をチェックしていく。

クイーンキュバス。エルダーリッチ。シャドーシーカー。


クイーンキュバス

サキュバスの上位種にして希少種。サキュバスの魔法とスキルが強化された上に、戦闘能力が大幅に強化されている。魔王に進化する可能性を持ち、強大魔王種の一つとされる。


エルダーリッチ

聖魔法以外のあらゆる魔法に精通したリッチの上位種。すべての魔法が大幅に強化されている。魔王に進化する可能性を持ち、普通魔王種の一つとされる。


シャドーシーカー

ターゲットの影に潜んで、追跡するスキルを持つ。同時に数百のターゲットを捕捉し、その影に潜み、監視・束縛する能力を持つ。


セバスは、その能力に満足し、クイーンキュバス、エルダーリッチ、シャドーシーカーを呼び出した。

「お前達は、スラム街に行き、闇社会で一番大きな勢力を乗っ取って、スラムを支配しろ。何をしたか、どうなっているか、報告は不要だ。しかし、私からの命令があれば絶対服従しろ。それと、スラムにいる鍛冶士のドーソン、スラムとは関係がないがルルーベル娼館のサリー、ルルー、ベルタの4人は仲間だから手を出すな。お前たちが魔物だということを誰にも知られるな。常に人間の姿でいるか、目に見えないようにしていろ。それと、スラムから出るな。それでは行け」

セバスの命令に3体の魔物は頷くこともなく、黙って消えた。


その日の夜、ランドリアの街のスラムの闇社会の勢力図が変わった。

幾多に分かれて争っていた闇勢力が、一つに統一された。スラムを制覇したのは、男を四つん這いにさせて、その背中に座るのが趣味の美しい女ボスだということだ。


『さて、闇社会の件は、一段落着きました。次は、手駒になりそうな商人と貴族ですな』

セバスは、ホテルのオーナー室で顧客名簿に目を通しながら、神眼、予知、全知のスキルを使いながら人選を進めていく。

条件は、老舗大手でないこと。商会主が手腕や能力の優劣が巷間に知られておらず、急に頭角を現しても不自然ではないこと。人格に大きな欠陥がなく、目を見張るべき資質や潜在能力やスキルがあることなどだ。

そして、最終的に次の3人を候補として絞り込んだ。

パップス商会のパップス。ダグラス商会のダグラス・フォン・ドノバン。ムザール商会のムザール・デクスン。

パップス商会のパップスは、名前に家名がないことから分かるように純然たる平民だ。親の資産を引き継いだわけでもなく、どこかからかき集めてきた僅かな資金を元手に商売を始めて、徐々に頭角を現してきている。特徴は、人たらしであることらしい。少し裕福な人間から金を借りるのが上手いらしく、小さな出資金を集めては、儲けを出して、利子付きで返済し、また、借りては、さらに商売を大きくするということを繰り返しているらしい。現在は、パンと生活小物を売る小さな店と、行商用の馬車1台で商いを回しており、稼ぎに見合わないこの高級ホテルを幾度か利用していることからも、野心の大きさが窺われる。セバスが何らかの後押しをすると、一気に頭角を現すと考えられる。

『この男が、一番有望か?まだ、どこともしがらみが出来ておらぬし、今のうちに取り込んでおくか』


ダグラス商会のダグラス・フォン・ドノバンは、家名があることから分かるように貴族の出身だ。貴族家から籍を抜いたわけではなく、その気になれば、貴族の禄を食むことも出来るが、野心が旺盛なのか独立心が強いのか、貴族街の近くに店舗を出し、年々店舗を大きくしている。扱っているのは、宝飾から服飾、武器防具から食料品まで幅広い。貴族の顔を生かして、貴族達の領地からの輸送を請け負うという商いもしている。貴族達からは新進気鋭と評価されているが、パップスのように何もないところからの出発ではないので、無から有を生み出す手腕があるかどうかは未知数といえる。貴族として、ただの変わり者なのか、暴れん坊なのか、才覚のあるタイプなのか、会ってみないと分からないところだ。

『資金に困っていない風なので、出資を申し出て接近を図るのは難しいかも知れない。しかし、何らかの繋ぎを付けておくのには悪くない相手のようだ』とセバスは判断した。


ムザール商会のムザール・デクスンは、家名を持つが、それは買ったもので、貴族の家系ではない。しかし、親が行商人として蓄えた財と信用をうまく活用して商売を大きくし、家名を買うことで販路を広げたりと、遣り手の二代目といえる。店舗も3つあり、行商用の馬車も10台がフル稼働している。総合的に見て、これぞ新進気鋭と感じられるが、欠点がなさ過ぎるのところに、セバスは引っ掛かりを感じた。親の商売を発展させた手腕は見事なものだが順調すぎるところがある。

『これは、何者かがすでにバックアップしているのかもしれない。他人の手垢がついていると、こちらの手駒にするのは難しいかもしれない』というのがセバスの結論だった。

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