第9話 貴族の検討
『次は貴族か』
セバスは、商人の次に、手駒にすべき貴族の検討に入った。
商人の場合は、老舗大手でないという基準があったが、貴族の場合は、そのような基準がない。
その家系に歴史があろうがなかろうか、その貴族に勢力があろうがなかろうが、裕福であろうが貧困であろうが、そういったバックボーンは抜きで、信用できるかどうかの一点が重要になってくる。
もちろん有能であることは必要だし、実力や胆力の有無も重要な要素ではあるが、信用が出来て、実力のある貴族を抱き込むとなると、地方都市でしかないランドリアの枠組みには収まらない。それこそ、この国の実権に影響を及ぼそうという国盗りレベルの話になってくる。
そこまでセバスは考えて、またもや顧客名簿に目を通し始めた。
セバスの神眼、予知、全知を使ってさえ、貴族の選定は難しかった。
その中で、かろうじて候補に残したのは、フィデラル・ウィンスロー男爵、リーズ・ゲェスティ男爵、ダニエル・フランドル子爵、フィヨールド・アボックス子爵の4人だった。
貴族達が再三に渡って裏切りを働き、横暴と強欲の極みのような輩ばかりの中で、裏切りの回数が少なく、しかも、その裏切りは、止むに止まれぬ事情があったとスキルが告げている者達である。
フィデラル・ウィンスロー男爵
ランドリアの近隣にある2つの村の領主。数代前の戦乱で準男爵から男爵に陞爵し、以来、男爵位を保持し続けているが、狭い領地からの収入は少なく、中位以上の貴族からは貧乏貴族と蔑まされている。人物、家柄とも可もなく不可もなくと評価されている。他の貴族との付き合いは少ない。
リーズ・ゲェスティ男爵
ランドリアの近隣にある3つの村の領主。数代前の戦乱で平民から男爵に叙爵され、以来、男爵位を保持し続けている。領地替えが何度かあり、3代前から、現在の領地に落ち着いている。領地の狭さにもかかわらず、作物の収穫が比較的豊かで、貴族同士の付き合いでも面目を保っている。奴隷売買で金を儲けているとの噂がある。もっとも、この世界では奴隷売買は合法だ。
ダニエル・フランドル子爵
ランドリアからかなり離れた鉱山の領主。13代前から続く貴族家であり、鉱山からもたらされる富で豊かな鉱山都市を運営している。家臣に鍛冶士を多く抱え、戦役の時は、鍛冶や鉱山労働で鍛えられた屈強な者達が兵士になり、フランドルの強兵は名高い。独立独歩の気風を貫いているが、鉱山の利権を狙う他の貴族家からの仕掛けに苛まれている。
フィヨールド・アボックス子爵
先祖の功績により王国から特別に国費を支給されている、領地を待たない貴族。1年の半分は王都で官僚を務めており、その給金もある。上位貴族との親交も多いが、懐事情は常に厳しく、本人も質素倹約を務めており、堅物と噂のある人物。
『こうしてみると、リーズ・ゲェスティ男爵以外の3人は脈があるかもしれない。しかし、リーズ男爵も気になるので、4人とも直接会って確かめないといけないな』
とセバスは考えた。
その頃、セバスに仕事を押し付けた俺は、アキハやカトレア達の冒険者組の拠点に転移し、再開を喜び合っていた。
いや、喜んでいたのは俺だけで、アキハ達は平常運転だった。
しかも、「久しぶり~」と抱き合っていたのは、アマンダとブルガリに対してだけで、俺は蚊帳の外だった。
しかし、疎外感を無理やり振り払って、アキハ達と話すことにした。
「転移する前に言ったが、暫くここに泊めてくれ」
「え~、グランビアホテルのVIPルームに泊まれるのに、なんでここに泊まりたがるのよ~?」とアキハ。
「いや、みんなの顔が見たいからな」と俺。
「見てもしようがないでしょう。どうせ私たちは、ご主人様の分身なわけだし」とワストンにも突き放される。
「ここは女所帯で知られているから男がいると不審に思われます。用事が済めば、直ぐにホテルにご帰還ください」とカトレアにまで冷たくされて、俺はしょんぼりしてホテルのVIPルームに戻った。
VIPルームに戻るとセバスはいなかった。
魔力の繋がりで探すと同じホテルの別の部屋にいた。何かに集中しているようなので、邪魔をするのはやめて、部屋付きのメイドを呼んで早めのディナーを持ってきてもらった。
ステーキを食べながら、
『明日になったらドーソンのところへ行ってみるか』と考えていた。
しかし、ドーソンがいるのはスラム街なので、俺一人で行くと舐められるかもしれない。
『もう一人呼んでおくか』ということで、ハドソンという職人ドールを召喚した。
背丈は、ドーソンと変わらず150センチくらいで、筋骨隆々のドワーフタイプだ。
召喚してすぐに、固有スキルの+00を2回使った。これで、ステータスの数値は万単位、ドーソンと対等の強さになった。




