表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛しい私のお人形  作者: 永眠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/30

24.シェーゼ視点・認めない。


足音が近づいてくる。


軽くて、必死で、迷いのない足音。

聞き覚えしかない彼女――セレスティの足音。


(……俺は逃げない。)


そう思うのに、身体は彼女とは逆の方向へ動く。

逃げているというより――逃げさせられているような、曖昧な足取りなのだ。


彼女が名を呼ぶ声が耳に届く。


「シェーゼ……っ!」


呼ばれて、振り返りそうになる。

返事をしてはいけないのに、喉が勝手に動きかける。

大切な人に呼ばれて、言葉を返すのは当然だろう?

ないはずの心が訴えかけてくる。


俺に、そんな情はもうないはずだ。


だから俺は、逃げている。…認めたくないから。


けれど彼女は追ってくる。

走って、息を切らして、俺に追いつこうとする。


角を曲がった瞬間、彼女の指先が袖に触れた。

その一瞬の温もりが、俺の抑えてきた感情を刺激した。


(……やめてくれ。)


逃げる理由なんて、本当はわかっている。

触れられたら、気づかれてしまう。気付かれたら、ずっと一緒という約束が守れない。

人形ではないことも。

…そして――



主の声に、応えたいと思ってしまうことも。


そのすべてが露わになってしまう。


だから逃げた。

逃げるたび、胸が痛くなった。


彼女の声がまた響く。


「シェーゼ、逃げないでくださいよ……っ!」


足が止まりかけた。


止まりたくなる。

その声に呼び止められるたび、心臓が、まるで反発するように脈打つ。


だめだ。

止まれば、きっと終わる。

この幸せが、崩れてしまう。


だから扉を押し、部屋を抜け、また廊下へ。

動くたび、心が軋んだ。

心臓の音もやけにうるさい。耳障りだ。


開いた扉の向こうで、一瞬だけ振り返る。


彼女がこちらを見ている。

追い詰められた小動物のように――いや、違う。

まるで「逃げられるのが嫌」だと言っているようだ。


その瞳が、いつもは全く動じないはずの俺の心を揺さぶる。


(何故……そんな目で。)


足が止まりそうになる。

けれど、それ以上に、踏み出した。


逃げる。

まだ気付かれるわけにはいかない。

まだ近づいてはいけない。


彼女の言葉に応えてしまう前に。


(俺は……人形ではない。)


その事実だけは、まだ言えない。


2つの足音が再び響く。


終わってほしいのか、終わらせたくないのか、

自分でもわからないまま俺はまた、彼女から逃げるように、何処かに向かって駆け出す。


ブクマ、評価等よろしくお願いしますねえ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ