第7話 — 四大貴族家
「ジュリアス? なんでそんな格好してるんだ、兄弟?」
俺は後頭部に手をやった。
「話せば長い。入口で止められちまってさ。だから宴に入るために、ちょっと工夫するしかなかったんだ」
カグラは大笑いした。
「ハハハハハ! 悪かった、兄弟。衛兵に伝えるの忘れてた」
「気にすんな。入れたんだから、それでいい」
俺たちが話していると、ジャンがカグラへ近づき、片手を口元に添えて耳元で囁いた。
「陛下、王国で最も力を持つ貴族家の当主たちが、こちらへ参ります」
カグラの笑みが薄れた。ごくりと唾を飲み込んだが、すぐに座ったまま姿勢を正した。
「来てもらおう。迎える準備はできてる」
ジャンは手で小さく合図し、彼らが近づくことを許した。
最初の貴族が前へ出た。カグラの前まで来ると、すぐに跪いた。
「ジェフ・レイヴナー公爵と申します。陛下のご即位、心よりお祝い申し上げます」
カグラは頷いた。
「ジェフ公爵……あなたの家は王国の諜報活動で素晴らしい働きをしている。それに、優秀な影の兵士たちもいる」
ジェフは顔を上げ、カグラを見つめた。
「お言葉、感謝いたします、陛下。これからもヴァレドーンの発展のため、尽力してまいります」
カグラは軽く微笑み、頷いて応えた。
その会話を聞きながら、俺は数秒間ジェフを観察した。
*影、か……*
立ち去っていく彼を目で追った。
*ジェフが王国にとって役に立つのは確かだけど、あの家は高度に訓練された暗殺者を育ててる。それに、先王はつい最近暗殺されたばかりだ。*
俺はわずかに眉をひそめた。
*こいつ、真っ先に疑われるべきじゃないのか?*
それ以上考える間もなく、次の貴族が近づいてきた。
「私の名は……」
だが、言い終える前に、カグラがあまり興味のなさそうな目を向けて遮った。
「マイク公爵? 合ってるか?」
男は驚いたようだった。
「は、はい、陛下。マイク・ベルグレイブ。ヴァレドーンで最も力を持つ一族の当主でございます」
カグラはわずかに首を傾げた。
「今の財務大臣だよな?」
「はい」
マイクは姿勢を崩さなかった。
「陛下のご即位を心より歓迎申し上げます」
カグラの口元に小さな笑みが浮かんだ。
「ありがとう、マイク」
彼は数秒間、公爵を見つめた。
*マイクの家が王国で最も影響力を持っているのはわかる。でも、どうしてこいつが財務大臣としてここまで失敗したのか理解できない。*
カグラは視線を逸らした。
*まあいい……*
マイクが離れ、次の者へ場所を譲った。
「マイコン・アルカニス公爵と申します」
カグラはすぐに彼を指さした。
「ああ! アルカニス家の当主だな。王国に送り出している有望な魔法使いたちについて、いくつか報告を読んだ。感心したよ。その調子で頼む」
マイコンは微笑んだ。
「そのようなお言葉をいただくには及びません、陛下」
「いや、十分ふさわしいよ、マイコン」
最後に、四人目が近づいた。
「ブラッド・アイゼン公爵と申します。陛下のご即位をお祝い申し上げます」
「ありがとう、ブラッド」
カグラはしばらく彼を見た。
「これからも戦争大臣として頼りにしてる。よくやってくれてるよ」
ブラッドは笑みを浮かべた。
「そのお言葉を励みに、さらに精進いたします、陛下」
最後の公爵が離れると、カグラは肩の力を抜き、深く息を吐いた。
「やっと終わった……」
ジャンはその隣に立ったままだった。
「今の四名が、ヴァレドーンで最も影響力を持つ貴族家の当主たちです」
カグラは横目で彼を見た。
「わかってるよ、ジャン」
俺はその隙に近づいた。
「なあ、カグラ」
彼は俺へ目を向けた。
「広間のバルコニーに行ってる。そこで二人きりで話したい。それに、少し外の空気も吸いたいしな」
カグラはその頼みに少し驚いたようだった。
「わかった、兄弟。先に行っててくれ。すぐ後を追う」




