第6話 — 貴族たちの宴
カグラはすでに、自らの即位を祝う盛大な宴の準備を済ませていた。
その頃、俺は宴が開かれる広間を探して王宮の廊下を歩いていた。空はすでに闇に包まれている。太陽はとっくに姿を消し、代わりに月がその夜の王都を照らしていた。
そのとき、王宮のかなり人通りの多い一角から何人かの騎士が出てくるのが見えた。
*あそこか?*
入口へ向かって歩いた。だが、扉をくぐろうとした瞬間、二本の槍が目の前で交差し、行く手を塞いだ。
「申し訳ありませんが、貴族以外の方をこの扉からお通しすることはできません」
俺は眉をひそめた。
「は? でも俺は国王の近衛騎士だぞ」
自分の紋章を取り出し、二人の前に掲げた。
「見えるだろ?」
衛兵の一人は一瞬汗を浮かべたが、それでも態度を崩さなかった。
「申し訳ありません。しかし……命令は命令です」
俺は歯を食いしばった。数秒間二人を睨んだあと、ようやく背を向けた。
「わかったよ……」
ぶつぶつ独り言を言いながら、廊下を戻り始めた。
「何が何でも、あの宴には潜り込んでやる」
どうやって入るか考えながら、うつむいたまま歩き続けていると、ふと顔を上げた。
一人の使用人が、たくさんの飲み物を載せた盆を持ってこちらへ歩いてきていた。
俺は目で彼女を追った。
すると、ゆっくりと笑みが浮かんだ。
*いいこと思いついた。*
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王宮大広間。
舞台はすでに準備され、数十人の貴族たちが式典の開始を待ちながら互いに談笑していた。その夜の重要性とは裏腹に、雰囲気は比較的穏やかだった。
カグラはジャンへ目を向けた。
「ジャン、宴を始める準備はもう全部できてるか?」
ジャンは一枚の紙を手渡した。
「こちらです、陛下。演説の原稿でございます。これで準備はすべて整いました」
カグラは紙を受け取り、真剣な表情になった。
「わかった。今から舞台に行く」
演説の原稿を手に、広間の中央へ歩いていく。少しずつ話し声が止み、貴族たちの視線が新たな国王へ集まった。
カグラは深く息を吸った。
「ヴァレドーンの貴族たちよ。今宵、こうして集まってくれたことに感謝する」
広間を見渡してから、言葉を続けた。
「俺の即位が突然のものであり、この王国が困難な状況にある中で行われたことは理解している。それでも俺は、ヴァレドーンを守り、その制度を強化し、民の安定のために尽くす覚悟をもって、この王冠を受け継いだ」
ジャンは離れた場所から注意深く見守っていた。
「俺は一人で国を治めるつもりはない。長年この王国に仕えてきた者たちの経験を頼りにするつもりだ。そして、ここにいる一人ひとりが、これからもヴァレドーンの未来のために力を貸してくれることを願っている」
カグラは少し間を置いた。
そして、持っていた紙を下ろした。
「まあ……」
何人かの貴族が互いに顔を見合わせた。
「ここまではジャンが書いたんだけどな」
ジャンは目を見開いた。
カグラは小さく息を吐いた。
「でも、一つだけ自分の言葉で言いたいことがある」
今度は顔を上げ、目の前の貴族たちをまっすぐ見つめた。
「俺が玉座にいる限り、誰かを見て、公爵に生まれたから、伯爵に生まれたから、男爵に生まれたから……あるいは何の爵位も持たずに生まれたからという理由だけで、その人間の価値を決めるつもりはない」
ジャンはまだ彼を見つめていた。
*待て……これは原稿になかったぞ。*
カグラは続けた。
「貴族も民も、同じ王国の一員だ。ヴァレドーンが本当に繁栄を望むなら、両者が共に歩んでいかなければならない」
顔に小さな笑みが浮かんだ。
「だから……みんなの力を貸してほしい。本当に必要になると思うからな」
沈黙。
カグラは一瞬目を閉じた。
*やらかしたか? いや、そんなはずない。自分の言葉に自信を持たないと。*
再び目を開き、貴族たちへ毅然とした視線を向けた。
すると……
パチ。
出席者の一人が拍手を始めた。
すぐに二人目。
そして三人目。
一分もしないうちに、広間全体が拍手に包まれた。
カグラは安堵の息を吐いた。
*ふぅ……*
片手を上げた。
「宴を楽しんでくれ」
そして、ようやく舞台を降りた。
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カグラは王族用の区画へ向かった。そこは最上位の貴族たちのために設けられた一角だった。
中央に腰を下ろし、宴の様子を眺める。片側にはジェラルド、もう片側にはジャンが立っていた。
カグラは笑みを浮かべ、宰相を見た。
「最後はうまくいってよかったな」
ジャンが答えようと口を開いた。
だが、何か言うより先に……
俺が飲み物でいっぱいの盆を持って近づいた。
「陛下、一杯いかがですか?」
カグラは目を見開いた。数秒間、俺をじっと見つめる。
「ジュリアス?!」
そして俺の服へ目をやった。
「なんでお前、使用人の格好してるんだ?」




