第5話 — 最初の一歩
謁見の間。
カグラはジャンが置いていった書類を座って読んでいた。
一方、俺はジェラルドから正式に近衛騎士の役職を与えられていた。簡単に言えば、これでカグラのそばにいることを正式に許されたわけだ。
しばらくして、カグラはようやく書類を読み終え、ジャンへ目を向けた。
「それで、大臣……俺が理解した限り、軍事面は問題ない。装備についても大きな問題はないんだな」
カグラは書類をテーブルの上に置いた。
「でも食料事情はあまり良くない。国外から入ってくる食料に高い金を払ってる。それに経済は……まったく良くない」
ジャンは両手を背中へ回した。
「それで、陛下。どうなさいますか?」
カグラは顎に手を当て、数秒間考え込んだ。
*一つの問題は別の問題につながってる。まずは経済に集中しよう。経済を安定させられれば、食料問題を解決する余裕もできる。*
そして沈黙を破った。
「まずは経済問題を解決する。どうしてここまで悪化したのか、簡単に説明してくれ」
ジャンは頷いた。
「始まりは数年前です。亡きジェームズ王は、それまで財務大臣を務めていたヴィクター・アーク伯爵を解任し、マイク・ベルグレイブ公爵をその職に任命しました」
カグラは注意深く聞いていた。
「ヴィクター伯爵のもとでも経済は決して良好とは言えませんでした。そこでジェームズ王は、当時まだかなり若かったマイクに賭けたのです。しかし、彼の在任中に税収は落ち、支出は増え、王国の蓄えは減り始めました」
カグラは大笑いした。
「ハハハハ! 『減り始めた』だって? そのマイクの管理下で経済は崩壊しかけてるじゃないか」
「おっしゃる通りです、陛下。何か解決策はございますか?」
カグラは両腕をテーブルに置いた。
「ああ。まず、ヴァレドーンの全貴族家の当主について、経済面と行政面の詳しい情報を集めてほしい。爵位は関係なく、全員だ」
ジャンはわずかに眉を上げた。
「すべての家を、ですか?」
「全部だ」
カグラは頷いた。
「集まり次第、書類を持ってきてくれ。一人ずつ資料を確認して、それからどうするか決める」
ジャンは身体を前へ傾け、右手を左胸の下へ添えた。
「承知いたしました、陛下。本日中には、すべてお手元に揃えてみせます」
彼は部屋を出ようとしたが、足を止めた。
「ああ、陛下。忘れるところでした。まもなく王宮大広間にて、陛下の即位を祝う貴族たちの盛大な祝宴が開かれます。貴族たちが新たな国王へ挨拶し、お目通りする機会でもございます」
カグラはわずかに眉をひそめた。
「そうだったな、ジャン。王になってから、まだ貴族の誰とも会ってない。今日ほどちょうどいい日はないな」
ジャンは小さく笑った。
「承知いたしました、陛下。意欲的なお姿を拝見できて何よりです」
そう言うと、彼は振り返って部屋を出ていった。
扉が閉まると、俺はカグラのところまで歩いた。
「それで、カグラ? 今のヴァレドーンはどんな状況なんだ?」
カグラは立ち上がり、大きな地図をテーブルの上に広げた。
アウレリア大陸
エルドリア
北
│
│
ドレイヴェン ヴァレドーン レイヴン
西 中央 東
カグラは地図を指さした。
「これ見えるか、兄弟?」
俺は眉をひそめた。
「ああ。それがどうした?」
「俺が受け取った情報と報告によれば、今のところいくつかの王国は安定してるらしい」
彼は少し間を置いた。
「もちろん、一つを除いてな」
俺は口元に笑みを浮かべた。
「当ててやろうか……ヴァレドーン?」
カグラは椅子の背もたれに身体を預け、天井を見上げた。
「ああ、兄弟。その通りだ。この国は内部がめちゃくちゃだ」
そして俺へ視線を戻した。顔にかすかな笑みが浮かぶ。
「でも俺はヴァレドーンを立て直すつもりだ。少なくとも、王国が安定するまではな」
カグラは両腕をテーブルに置いた。
「それが俺の個人的な目標だ」
俺は数秒間、その場に立ったままだった。
「マジかよ、カグラ……俺が言ったこと、本当に真剣に受け止めたんだな」
彼は大笑いした。
「ハハハハハ! ああ、兄弟」
そして笑みを少し弱めた。
「そうだ……王国の立て直し、お前にも手伝ってもらえるか?」
一瞬、俺は迷った。
俺の目標はずっと単純だった。金を貯め、山に家を買い、ようやく静かに暮らすこと。
でも、あの馬鹿は俺の兄弟だ。
そして今は、一つの王国すべてを背負っている。
俺は拳を彼へ差し出した。
「もちろんだ、カグラ。俺もやる」
カグラは笑顔を浮かべ、自分の拳を俺の拳に合わせた。
「よし、兄弟。頼りにしてるぞ」
彼はしばらく俺を見た。
「そういえば、お前の個人的な目標は山に家を買って、そこで暮らすことだって言ってたよな?」
「ああ、その通りだ。単純なことだけど、俺にとっては大事なんだ」
俺は肩をすくめた。
「でも、今は少し先延ばしにしないとな? ハハハ!」
カグラも一緒に笑い始めた。
「ハハハハハ!」
数秒後、彼は立ち上がって扉へ向かった。
「行こうぜ、兄弟。出なきゃならない催しがある」
俺も立ち上がり、腕を伸ばした。
「承知いたしました、陛下!」
カグラはその場ですぐに立ち止まり、俺を見た。
「ああ、もう……お前にそんな言い方されると、なんか照れるだろ! ハハハ!」




