第17話 — 逃げ道なし
西門。
カグラとノアはすでに街の奥深くまで進んでいたが、まだ多くの蛮族が抵抗を続けていた。
カグラは横目でノアを見た。
*ノアはもうほとんど力が残ってない……それに、こっちの被害もかなり増えてきた。*
その目が再び前方の敵へ向く。
*このままじゃ……*
そう考え終えるより先に、一人の蛮族が地面へ倒れた。
背後から刃が身体を貫いていた。
すぐに二人目が倒れる。
そして三人目。
カグラは目を細めた。
「ん?」
黒装束の戦士たちが下水道の入口から次々と姿を現し、蛮族たちを背後から襲い始めた。
何が起きているのか理解したカグラは、その場に腰を落とした。
「始まったか……」
安堵したように息を吐く。
「ふぅ……」
その顔に笑みが浮かんだ。
「ようやく精鋭が動き始めたな」
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東門。
ジェラルドはまだ前線にいた。
ルイグとの戦いを終えた彼には、ほとんど力が残っていなかった。それでも立っていられるのは、純粋な意志の力だけだった。
その時、黒装束の戦士たちが蛮族の背後から現れ始めた。
一人、また一人と敵が倒れていく。
ジェラルドは数秒、その光景を見つめた。
そして剣を鞘へ収めた。
「どうやら、俺の仕事はもう終わったみたいだな……」
手を上げ、自軍へ合図を送る。
「そのまま進め!」
精鋭たちが背後から蛮族を襲う中、兵士たちは前進を続けた。
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ハイエム邸。
庭。
カノが慌ただしく入ってきた。
「頭領! 完全にヤバいです!」
フロレンティーノは剣を鞘へ収め、彼へ目を向けた。
「状況は?」
カノは息を整えようとした。
「両側ともやられました! 東も西も! 俺たちの戦士はどんどん押し戻されています!」
フロレンティーノは顎に手を当てた。
「ターシャとルイグは?」
「敵に捕らえられたと思います」
フロレンティーノは歯を食いしばった。
「くそっ……どうしてこんなことになった?」
深く息を吸う。
「それで、まだ何人残ってる、カノ?」
カノは唾を飲み込んでから答えた。
「無事に退却できたのは二百人だけです。残りは重傷を負ったか、死にました」
フロレンティーノは黙り込んだ。
「そうか……」
すると、その目つきが変わった。
「そうだ、カノ……どうすればいいか分かったぞ」
「どうするんです、頭領?」
フロレンティーノは屋敷を指さした。
「地下に下水道へ通じる入口がある。そこを使って逃げる」
カノは耳を傾けた。
「東門の近くに出口がある。そこから出ればラックスの森へ入り、そのまま逃げられる」
カノは目を逸らした。
「今は……それは無理です、頭領」
フロレンティーノは眉をひそめた。
「なぜだ?」
「ラックスの森は騎兵隊に占拠されています」
フロレンティーノは動きを止めた。
「下水道から逃げられたとしても、奴らと戦わずに森を抜けるのは不可能です」
フロレンティーノはテーブルを強く叩いた。
「くそっ!」
歯を食いしばる。
「そこまで読んでやがったのか……」
少しすると、再び冷静さを取り戻した。
「だが、今のところ他に手はない」
フロレンティーノは数秒黙った。
*少し敵を甘く見すぎたかもしれないな。*
庭に拍手の音が響いた。
パン。
パン。
パン。
フロレンティーノとカノが顔を上げた。
「その逃げ道について、一つだけ訂正させてもらいますよ、フロレンティーノさん」
俺は屋敷の壁の上に座っていた。
隣には、俺と一緒に残った六人の精鋭戦士がいる。
俺は笑った。
「下水道にも、もうこっちの兵を配置してあります」
街を指さす。
「それに、地上へ出てあんたたちの兵を背後から襲うよう命じた連中もいます」
肩をすくめた。
「つまり……」
笑みを深める。
「あんたはどこにも行けない」
「ははははは!」
フロレンティーノとカノは俺を見つめていた。
カノは歯を食いしばった。
「お前は何者だ?」
俺は自分を指さした。
「俺?」
壁から飛び降り、庭へ着地した。
「ただのしがない剣士だよ……」
剣の柄へ手を置く。
「そして、影の臨時指揮官だ」
フロレンティーノはすぐにカノを見た。
「カノ! 生き残りを呼べ! 奴らを盾にして逃げるぞ!」
俺は首を傾げた。
「生き残り?」
フロレンティーノが俺へ目を戻す。
「外にいた戦士たちのことなら、全員死んだと教えておきますよ」
屋敷の入口の一つを指さした。
「今言った通り、俺の部下を何人か地上へ上げて、あんたたちを背後から襲わせたんでね」
カノを指さす。
「お前たち」
六人の戦士が身構えた。
「あいつを捕まえろ」
そしてフロレンティーノへ目を戻す。
剣を抜いた。
「頭領は……」
刃を彼へ向ける。
「俺が相手をする」




