第14話 — 戦場の王
西門。
門が崩れ落ちると同時に、ノアは剣を空へ掲げた。
「さあ行くぞ、みんな! 突撃ぃぃぃぃ!」
兵士たちが前進した。
ノアは真っ先に戦場へ飛び込んだ。
最初の蛮族が向かってくる。ノアは左へ回り込み、一振りで剣を振り上げ、そのまま振り下ろした。敵の身体が切り裂かれ、命を失って倒れる。
すぐに二人目が現れた。
ノアは身を低くして足払いをかけ、男が倒れた瞬間、その心臓へ刃を突き立てた。
だが顔を上げた時、自分が囲まれていることに気づいた。
三人の蛮族が、彼を中心に三角形を作っていた。
ノアは高鳴る鼓動を感じながら、両足を地面に踏ん張った。
「三対一か? それ、ズルくないか?」
一人が、その皮肉な笑みに言い返した。
「いつまでも調子に乗ってろ。俺の刃がお前の身体を貫いた時にも笑っていられるか見ものだな」
ノアの表情が険しくなった。
「なら来い!」
三人が同時に突っ込んできた。
近づいた瞬間、ノアは跳んだ。
再び足が地面についた時には、三角形の陣形はすでに崩れていた。
今度は一人ずつ向かってくる。
最初は、さっき口を叩いていた男だった。
左から縦に斬り下ろそうとする。
ノアは右へかわした。
別の一人が右から来る。
ノアは左へ逃れる。
苛立った蛮族が、正面から突きを放った。
ノアは左手で相手の剣を掴み、男が反応するより先に顔面へ拳を叩き込んだ。
蛮族はよろめき、そのまま倒れた。
残る二人はすでに背後から迫っていた。
ノアは身体を回転させ、一人目に足払いをかけた。二人目は頭上から剣を振り下ろそうとしたが、ノアはそれをかわし、斬撃を返した。
蛮族の手が宙を舞った。
「うああああああっ!」
ノアは一人目の敵にとどめを刺し、手を失った男へゆっくりと歩き始めた。
男の剣が途中に落ちていた。
ノアはそれを蹴り飛ばした。
「痛いか?」
蛮族は必死に後ずさった。
「や、やめろ……頼む……」
ノアは剣を掲げた。
「心配するな。その痛み、俺が終わらせてやる」
「や、やめ……ぐっ! ゴホッ、ゴホッ……」
刃が振り下ろされ、蛮族の心臓を貫いた。
ノアは剣を引き抜き、鋭く振って刃についた血を払った。
そして再び前へ進む。
その時、何かが彼の注意を引いた。
短い紫色の髪と印象的な青い瞳を持つ女が、一軒の家の屋根から飛び降り、通りの中央へ着地した。
見たところ、武器は持っていない。
ノアは大した期待もせず、ただ彼女を見ていた。
一人の兵士が前へ出た。
「おい、そこの女性! 市民ならここから離れてください。我々は――」
言い終えるより先に、女が呪文を呟いた。
「土魔法――泥沼」
兵士たちの足元の地面が変化した。
「何っ!?」
何人もの脚が同時に沈み始める。
ノアは目を見開いた。
「下がれ! 今すぐだ!」
剣を構える。
「この女は危険だ! 俺が相手をする。お前たちは俺の後ろへ!」
見知らぬ女から目を離さないまま、ノアは素早く味方の兵士たちを見た。
*ここに兵が集まりすぎてる。*
*ジュリアスの作戦は、二つの前線が前進を続け、敵をどんどん後ろへ押し込むことが前提だ。*
表情を引き締める。
「兵士たち、よく聞け! 作戦通り進め。ただし二部隊に分かれろ。左右の通りから前進するんだ!」
ノアは女へ剣を向けた。
「こいつは俺が引き受ける。すぐ前線で追いつく!」
「はい!」
兵士たちが動き始めた。
その時、女の背後に数百人の蛮族が現れた。
そのうちの一人が尋ねる。
「どうします、ターシャ?」
ノアから目を逸らさず、彼女は答えた。
「奴らの前進を止めなさい」
「了解。ご武運を」
蛮族たちも二手に分かれ、ヴァレドーン軍の進撃を食い止めるため、左右の通りへ向かった。
ノアは剣を握り直した。
*こいつは大物だな。*
ターシャがゆっくりと彼へ歩き始めた。
「あら? もう剣を構えるの? 自己紹介もしないつもり?」
挑発するように笑う。
「騎士って、そんなに礼儀知らずだったのね」
ノアは少し構えを緩めた。
「自己紹介か? ならいいだろう」
剣を身体の横へ下げる。
「俺はノア。フェルナンド子爵の近衛隊長で、兵士たちの臨時指揮官だ」
女は笑った。
「ノア、ね?」
自分を指さす。
「私はターシャ。『三本柱』の一人よ」
ノアは黙った。
*三本柱、か。聞いたこともないな。*
目を細める。
*最初の襲撃では、こいつらの誰一人いなかった。*
ノアは肩をすくめた。
「まあ、どうでもいい」
次の瞬間、彼女へ跳び込み、上から斬りつけるため剣を掲げた。
ターシャは即座に反応した。
「土魔法――土壁」
巨大な壁が地面からせり上がる。
ガキン!
ノアの剣が激しく障壁へ叩きつけられた。
衝撃で両腕が痺れる。
数歩後退した。
「クソ女……」
壁が崩れ去る。
その向こう側で、ターシャは土を長い槍へと形作った。
「武器なしで戦うなんて退屈でしょう? ねえ、指揮官さん?」
彼女は笑った。
「あはは!」
ノアは歯を食いしばり、全力で突っ込んだ。
剣と土の槍がぶつかる。
一撃、また一撃。ターシャは恐ろしいほど正確に防ぎ、反撃してくる。まるで次に彼が何をするのか、すべて分かっているかのようだった。
ノアは横薙ぎを放った。
ターシャは後ろへ跳んだ。
地面へ着くよりも早く、すでに次の呪文を唱え始めていた。
「土魔法――正義の手」
無数の手が地面から現れ、ノアへ襲いかかった。
「チッ!」
一つ目を斬る。
後退し、二つ目を破壊する。
そして左へ回り込んだ。
だが、その背後からさらに巨大な手が現れた。
「何っ!?」
土の指が彼の身体を包み込む。
ノアは必死にもがいた。
「く、くそ……この野郎!」
ターシャは腕を組んだ。
「頑丈なのね、指揮官さん?」
右手を伸ばす。
「でも、これで終わりみたいね」
ターシャはゆっくりと指を閉じ始めた。
同時に、巨大な土の手がノアの身体をますます強く締めつけていく。
「うああああああっ!」
息ができなくなっていく。
視界がぼやけ始めた。
*これで……終わりなのか?*
その時、戦場に声が響いた。
「火魔法――炎のブーメラン!」
巨大な炎の湾曲刃が空を切り裂いた。
ゴオッ!
炎のブーメランが、ノアを拘束していた土の手を切断した。
彼は膝から崩れ落ち、必死に息を吸った。
「ゴホッ……ゴホッ……」
すぐそばから声がした。
「大丈夫か、ノア?」
ノアはゆっくりと身体を向けた。
視界が戻り始める。
最初に見えたのは、ただの人影だった。
次に、灰色の髪。
目を見開く。
「カグラ……陛下?」
ノアは立ち上がろうとした。
「も、申し訳ありません、ですが……陛下がなぜここに!?」
カグラはターシャから目を離さず、笑った。
「見れば分かるだろ?」
その手の周囲に炎が現れ始める。
「こっちの有利をもっと広げに来たんだ」
ノアも笑みを浮かべた。
カグラは彼へ手を差し出した。
「立て、ノア」
視線は敵から外さない。
「戦いは、まだ始まったばかりだ」




