第13話 — 城壁の向こう側
翌朝……
謁見の間。
カグラは片手で頬杖をつきながら、玉座に座っていた。
「はぁ、つまんねえ……みんなもう出発の準備してるってのに。俺も戦いに行きたかったな」
ため息をつく。
「ここに座って何もしないのは退屈だ」
ジャンは玉座のそばに立っていた。
「陛下、今は危険だということはご理解ください。以前も申し上げましたが、陛下に戦う力があったとしても、現在ヴァレドーンに残る王家の血筋は陛下お一人だけなのです」
カグラは視線を逸らした。
「はいはい……もういいよ」
そこで何かを思い出したようだった。
「フェルナンドはどこだ? あいつも出発の準備をしてるのか?」
ジャンは首を横に振った。
「いいえ、陛下。奥方とご子息と一緒におります」
「そうか……」
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ヴァレドーン南門。
ジェラルドは、俺たちの前に集まった戦士たちを指さした。
「これで全員だ。頼まれた通り、六百人」
俺は彼へ目を向けた。
「ありがとな、ジェラルド」
彼は頷いた。
「戦場で会おう」
「またあとでな」
ジェラルドは背を向け、自分の部隊へ合流するために去っていった。
俺は改めて、目の前にいる六百人の精鋭戦士へ視線を戻した。
*さあ、仕事するか。*
そのうちの一人を指さす。
「おい、そこのお前。ジャンから俺の作戦は全員に説明されたか?」
戦士は大声で答えた。
「はい!」
俺は笑った。
「よしよし」
腰の剣を整え、進むべき道へ身体を向けた。
「じゃあ行くぞ。仕事だ!」
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俺たちはヴァレドーン南部を馬でおよそ二時間進んだ。
遠くに、ハイエム子爵領を囲む巨大な城壁がようやく見えてきた。
到着すると馬を降り、城壁へ近づいた。表面に手を滑らせ、それから拳を握って軽く三度叩く。
コン、コン、コン。
「そこまで硬くないな……」
さらに数秒、構造を観察した。
「これなら通り道を作れそうだ」
剣を抜き、素早い動きで壁に四本の斬撃を入れ、四角形を作った。
剣を鞘に収め、一歩下がる。
そして足を前へ踏み込んだ。
ドン!
蹴りが四角形の中心を直撃し、その部分の壁が向こう側へ崩れ落ちた。
目の前に開口部ができる。
俺は笑った。
「よし。うまくいった」
最初に俺が中へ入った。
反対側へ出ると、左を見て、それから右を見る。
敵はいない。
*よし。誰もいないな。*
開口部のほうへ振り返り、親指を立てて合図した。
すぐに戦士たちが、俺がそれ以上何も言わなくても次々と通り抜け始めた。
*ジャンが全員にちゃんと作戦を説明してくれてるといいんだけどな。*
しばらくして……
ドォン!
東から轟音が響いた。
ほぼ同時に、西からも別の轟音が響く。
ドォン!
俺は肩をほぐした。
「さて……どうやら始まったみたいだな」
壁を抜けていく男たちへ目を向ける。
「俺も自分の仕事を始めるか」
最後の一団が移動すると、六百人の戦士のうち、俺のそばに残ったのはわずか六人だった。
計画通りだ。
俺は彼らへ目を向けた。
「お前たち六人は俺の指揮下に入れ」
剣の柄に手を置く。
「来い。蛮族のリーダーが隠れてる場所へ向かうぞ」
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ハイエム邸。
一人の蛮族が庭を慌ただしく駆け抜けた。
「フロレンティーノ頭領!」
テーブルについていた男は、少しも慌てる様子を見せなかった。静かに紅茶のカップを持ったままだ。
「攻撃を受けています! フェルナンド子爵の仕業かと。間違いなく領地を取り戻しに戻ってきたのでしょう!」
蛮族は深く息を吸った。
「ヴァレドーンから援軍を連れてきています。圧倒的な数です。兵士が大勢います!」
フロレンティーノはもう一口紅茶を飲み、カップをテーブルへ置いた。
「状況はどうだ、副頭領カノ?」
「東西の門を破られ、すでに街への侵入が始まっています。我々の戦士も抵抗していますが、圧力が強いです」
フロレンティーノは立ち上がり、カノの肩を軽く叩いた。
「上出来だ」
カノは彼を見つめた。
「ターシャを西へ送り、あちらの兵を指揮させろ。ルイグは東だ」
フロレンティーノは庭を数歩歩いた。
「両側から圧力をかけさせろ。突破口ができ次第、俺たちは自分たちの領地へ逃げ帰る」
その顔に薄い笑みが浮かんだ。
「ここでやるべきことはもう済ませた。そろそろ引き上げる頃だ」
カノは頷いた。
「承知しました、頭領」
彼は背を向け、庭を出ていった。
フロレンティーノは悠々と椅子へ戻り、紅茶のカップを手に取った。
その顔に意地の悪い笑みが浮かぶ。
*あの間抜けな子爵が連れてきた援軍も、大したことはないだろう。*
もう一口飲む。
*どうせ即位したばかりの王が、成果を見せようとしてるだけだ。*
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西門。




