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第10話 — 最初の賭け

評議会室。


部屋の扉が開いた。


マテウス・ヴェラスコ男爵が、見るからに緊張した様子で入ってきた。顔には数滴の汗が流れている。彼はテーブルまで歩くと、一言も発さず、その場に跪いて敬意を示した。


カグラは彼へ目を向けた。


「顔を上げてくれ、マテウス」


「は、はい、陛下」


マテウスはまだ緊張したまま従った。


カグラはテーブルに両腕を置いた。


「どうやって、あれほど早く家の借金を減らしているのか説明してほしい」


マテウスはただ頷き、数秒間黙っていた。


そして深く息を吸った。


「お許しいただけるのであれば、陛下……ご説明いたします」


話はかなり長く続いた。


マテウスは、ヴェラスコ家の当主になってから行ってきた施策を詳しく説明した。資金を得るための方法は、一族が所有する宝石の売却から、何の用途もないまま残されていた土地や屋敷の売却にまで及んでいた。


カグラはそのすべてを注意深く聞いた。


説明が終わると、その顔に笑みが浮かんだ。


「俺が探してたのは、こういう人間だ」


マテウスが目を上げた。


「必要なら難しい決断もできる。でも、経済を崩壊させない人間だ」


マテウスは目を見開いた。


「え?」


ジャンも驚きを見せた。


「では、陛下……彼なのですか?」


カグラは笑った。


「ああ。彼だ」


マテウスは何が起きているのかまったく分からない様子で、二人を交互に見た。


「へ、陛下……何のお話をされているのか、私には……」


カグラは立ち上がり、彼のところまで歩いた。


「マテウス、お前にはヴァレドーンの新しい財務大臣になってもらう」


男爵は固まった。


「俺はお前に賭ける」


カグラは彼の前で立ち止まった。


「それと、何か言う前に一つ。自分がただの男爵だからって、劣ってるなんて思うな。まして、これから任せる責任の大きさに押し潰される必要もない」


彼は軽く笑った。


「そんなことは考えずに、自分の仕事をしてくれ」


マテウスは数秒間黙っていた。


「承知いたしました、陛下」


そして敬意を示すように頭を下げた。


「謹んで大臣の職をお受けいたします」


再び顔を上げると、マテウスはカグラを見つめた。


*まるで私の心を読んだかのようだ……*


その表情が少し和らいだ。


*私は本当に、これほどの役職を任されるには自分では足りないと思っていた。*


*すごい……*


カグラはテーブルへ戻り、指を組んだ。


「ジャン、二つ頼みがある。マイク・ベルグレイブを呼んでくれ」


ジャンは頷いた。


「それと、ヴェラスコ家に残っている借金を王国で完済してほしい」


マテウスは再び目を見開いた。


「陛下……?」


「個人的な問題を気にせず、新しい仕事を始めるためのものだと思ってくれ」


ジャンは一礼した。


「承知いたしました、陛下」


その後まもなく、ジャンとマテウスは部屋を出ていった。


扉が閉まるのを待ってから、俺はカグラを見た。


「ずいぶん計算高く動いたな?」


カグラは首を傾げた。


「ん?」


「マテウスの借金を払わせて、あいつの家をヴァレドーンに恩義のある立場にしたんだろ」


カグラは俺をじっと見つめた。


「何言ってるんだ、兄弟?」


俺は眉をひそめた。


「え?」


「俺はただ、大臣としてプレッシャーなく働けるように借金を払わせただけだぞ」


俺は黙った。


カグラも黙った。


「……」


*こいつ、無意識でやったのか?*


***


数時間後……


評議会室の扉が再び開いた。


ジャンがマイク・ベルグレイブを連れて入ってきた。


カグラは椅子の一つを指さした。


「よう、マイク。ここに座ってくれ」


マイクはテーブルまで歩き、席についた。


「陛下。それで……なぜ私をお呼びになったのでしょうか?」


カグラは真剣な表情になった。


「マイク公爵、ここ数年の財務報告をかなり注意深く確認した」


マイクは黙っていた。


「あなたに経済の知識があり、父がそれを理由にあなたを選んだことは認めている。だが、個人の能力だけで判断するわけにはいかない。あなたの管理下で出た結果を見なければならない」


カグラは彼から目を逸らさなかった。


「あなたの在任中、税収は落ち、支出は増え、ヴァレドーンの蓄えは大きく減った。王国はまだ機能している。でも、このまま進めば安定そのものが危うくなる」


マイクは何の反応も見せなかった。


カグラはテーブルに両手を置いた。


「ヴァレドーンの問題が全部あなたのせいだと言うつもりはない。そんなふうに単純化するのは公平じゃない」


少し間を置いた。


「でも王として、俺は王国にとって最善だと思う決断をしなければならない」


部屋を沈黙が包んだ。


「だから、あなたを財務大臣の職から外すことにした」


マイクはカグラを見続けていた。


「あなたが公爵であり、ベルグレイブ家の当主であることは変わらない。この決定は、政府内での役職だけに関するものだ」


そしてカグラは締めくくった。


「ヴァレドーンの経済には別の方向性が必要だ。そして、この決断によって起きる結果については、俺が責任を負う」


数秒間、マイクは何も言わなかった。


不満もない。


怒りも見せない。


反論しようともしない。


ただ立ち上がった。


「これまで機会を与えていただいたことに感謝いたします、陛下」


マイクは一礼し、出口へ向かった。


扉が閉まるまで、俺はその姿を目で追った。


*妙だな……*


腕を組んだ。


*マイクはかなりプライドの高い男に見える。あれほど重要な役職を外されて、本当に何も感じてないなんて考えにくい。*


俺は扉を見つめ続けた。


*まあ……もしかしたら、最初から予想してたのかもしれない。*


***


数時間後、マテウス・ヴェラスコは正式にヴァレドーンの財務大臣へ任命された。


ただの男爵が、王国で最も重要な役職の一つを任されたのだ。


そしてカグラは王冠を戴いて以来、初めてジャンに頼ることなく大きな決断を下した。


マテウスは、彼自身が選んだ人間だった。


彼自身が負う責任。


ヴァレドーンの王としての、最初の賭けだった。

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