第8話 僕は46億年前の窒素になった
そこは、赤かった。
赤くて黒くて、真っ暗だった。
もしかして僕は今、窒素になれたのか?
そう確認するまもなく――ジェットコースターのような風に飲み込まれた。
「おい! 待て待て待て待て!」
僕は窒素になれたのか!?
窒素になれたことを確認するすべはないのか!?
「あばばばばばばばば!」
なんでだ!?
どういう状況なんだ!?
猛烈な風の勢いに流される。
すると何かにぶつかった!
ぼすっ。ぼすっ。まるでバランスボールをぶつけられたみたいな衝撃だ!
しかもこのバランスボールたちは、やたらと周りを固めている。素早くフォーメーションチェンジしながら、ジェットコースター並みの風に流されている。
くっ! なんて数の多さだ!
僕より小さいくせに、守備だけは一丁前なバランスボールたちだ。
大体こいつらはなんなんだ! 何者なんだ?
バランスボールたちは押し合いへし合い寄ってくる。まるでそれは、六月の不快感……。
はっ!
水か? H2Oか!?
そういえば46億年前の地球は水蒸気に溢れていたという。
なんて密度なんだ……! 人がゴミのようと先人は言ったが、水も大概だ。しかもこいつらはそのうち仲間割れして世界平和を脅かす。
なんてことだ。地球は創成期から危険に満ちている。
そしてこのバランスボールが水蒸気なら、僕はそれより大きい分子ということになる。それにこんな大量のバランスボールと一緒に暴風に煽られているのに、妙な安定感があった。
不思議と焦りを感じない——。
「とうとう僕は、窒素になれたのか」
やったよ!
僕、46億年前の窒素になれたよ!
(※作者の思考とは別物です)
(※誕生時の地球の大気は熱運動が激しかったそうです)
(※分子には質量があります。水分子H2O=18、窒素分子N2=28です)
(※作者は化学分子になったことがないので、質量感から想像して書いています。でも作者は社会分子の一つです)




