第6話 窒素固定が戦犯だった
生命であること、すなわち争いを生む。
それは細胞のすみずみ、DNAにまで刻まれた宿命だった。
要するにそれは、DNAなんてものを爆誕させたものが、一番悪いのではないか?
僕は早速DNA爆誕イベントを調べた。
調べていくと、必ずと言っていいほどにタンパク質が出て来る。タンパク質といえばアミノ酸だ。アミノ酸といえば、炭素化合物だ。
炭素か……。炭素というやつは、地球の平和に何も寄与しない。
しかしずっと見ていくと、必ずと言っていいほどいるやつがある。
C、炭素。
H、水素。
そして、N。窒素。
窒素というやつは、ただいるだけなのにいつも巻き込まれている。
炭素は常に地球を脅かす。水素は軽いのにエネルギーがあるからダメだ。相方の酸素は生命に息を吹き込むから余計にダメだ。
しかし、窒素はいつも、ただそこに佇んでいるだけだ。
そうか。
窒素であれば、ただ佇むだけでいい。窒素であれば、争うこともない。
しかも調べていくと、46億年前の大気は、水蒸気と二酸化炭素と窒素だけだったという。しかしそれが鉄分などを含む地球外飛来物の衝突によってアンモニウム化し、そしてアミノ酸を爆誕させ、DNAへつながったとか何とか。
もちろん諸説はある。
ただ、一つ分かったことがある。
窒素体で守備を固めれば、アンモニウム化を防ぎ、その先のアミノ酸爆誕を防ぐことになるのでは?
僕は窒素とアンモニウム化をもう少し調べてみた。
大気中の窒素は、とても結束が強いらしい。三つの手で固く手を取り合っているから、とても安定しているとか。
素晴らしいじゃないか! あんなにもただ漂っているだけの窒素は、世界平和のために結束と同盟を強く結んでいた! 生命よりも先進的だ!
しかしその結束を脅かす輩がいる。
まず鉄だ。鉄を得て人間は武器にしたが、鉄とは地球創生時代から既にその兆候を見せていたらしい。何故ならこいつらは、窒素の三つの手を弛ませようとするからだ。まるで甘い言葉で誘い込む詐欺師だ!
次に圧力だ。圧力! なんてことだ! 周りから圧力をかけられたら、窒素にはどうすることもできないじゃないか! しかも熱攻撃まで加えて来るとは、全力で窒素を抹殺しているとしか思えない!
そうして離れ離れになった窒素原子たちは、誘い込まれるように水素に誘導される。これがアンモニアを爆誕させてしまう。
いわゆる化学的窒素固定というやつだ。
いや、落ち着け。
これはたかだか20世紀前後に発見された手法でしかない。しかも発見したフリッツ・ハーバーとやらは、とんでもない化学兵器を生み出している。だめだ。やはり生命を生んでしまってはいけない。
しかし、この化学的窒素固定とやらは、妙に的をついているような気がした。
46億年前の地球はとても生命が誕生できる状態ではなかったという。マントルとマグマに覆われた地表。大気には、水蒸気と二酸化炭素と窒素だけしかいなかった。
それなのにいつしかアミノ酸を作り、そして生命を誕生させてしまう。
そのアミノ酸には、アンモニウムみたいなやつがついてくる。アンモニウムとは、アンモニアに水素がコバンザメしたやつだ。
つまり、悪いのはやはりアンモニアか?
そして窒素の固い三つの手を揺るがすイベント、すなわちそれは、窒素固定。
僕はついに見つけてしまった。
窒素固定こそが、生命などというとんでもない兵器を生み出す戦犯なのだと。
(※作者の思考とは別物です)
(※地球のDNA誕生には諸説しかありません)
(※窒素の固い三つの手とは、窒素分子N2の三重結合(N≡N)を指します)
(※窒素固定とは、大気中の窒素分子N2を窒素化合物に変えることです。ハーバー・ボッシュ法は人工的な窒素固定法の一つです)
(※ハーバー・ボッシュ法は窒素固定であり、窒素固定はハーバー・ボッシュ法ではありません)
(※ハーバー・ボッシュ法と、地球創生期の窒素固定と、生物による窒素固定はそれぞれ異なります。というか地球創生期の窒素固定は謎しかありません)
(※窒素固定における鉄は、ただの触媒です。鉄以外の金属も触媒になり得ます)
(※大気中の読者を取り込むのはどうしたらいいのでしょうか?)
(※地球の圧力=大気圧に社会的な同調性はありません)
(※作者は生命活動を支持します)




