第4話 僕は動物界に絶望した
なんていうことだ……。人類である前に哺乳類であることに原因があった。哺乳類である以上、争いは止められない。
あまりの衝撃に、僕は唖然とした。静かにアフリカの方を向いて両手を合わせる。
すまん、アウストラロピテクス。お前に全ての罪を被せてしまった。
しかし哺乳類の根元を刈ればいいのか?
根元って何だ?
カモノハシでいいのか? どこに行けばカモノハシはいるんだ? 鳥っぽいから、とりあえず森か湖を探せばいいのか?
僕は原生林に探索に行くことにした。
カッコー、カッコー。
ああ、森はなんて平和なんだ。
争いごともない。軋轢もない。搾取もない。意地汚い哺乳類の醜さを見ることもない。
目の前をサササッと駆け抜けていくリスを、僕は睨みつけた。そんな無垢な見た目で騙されると思うなよ。
すると突然。
空から何かが落ちてきた。
落ちた先を見ると、小さな卵が割れていた。宇宙人のミニチュアみたいなのが、見えていた。
僕は思わず口を押さえた。この子に何の罪があるんだ! さっきのリスの仕業か!?
僕はリスを抹殺するため、木に登った。小賢しいリスは、タタタタタッと逃げていく。なんと小癪な!
しかし、鳥の巣はリスに荒らされてはいなかった。良かった。
……ん?
巣の中で、小さいタコみたいなやつが動いている。これは……ヒナか? なんかグロい。
小さいタコのような見た目のヒナは、もぞもぞと動いて、他の卵を巣の中で転がしていた。
おい、ダメだぞ。いくらお前が一番最初にかえったお兄ちゃんだとしても、弟たちで遊んじゃダメだ。
しかし僕がいくら注意しても、ヒナは言うことを聞かない。ヒナはタコの吸盤みたいな背中に卵を一つ乗せると、それを巣から追い出した。
「え! ダメだって!」
僕は咄嗟に手を伸ばしたが、卵は呆気なく地面に向かっていった。
僕は唖然とした。
僕が呆然と固まる横で、ヒナは別の卵を転がし始めた。あっという間に巣から卵が追い出される。
僕はすかさず巣から距離をとった。
あのヒナ……弟皆殺ししている!
あんな、鳥とも見分けがつかない姿なのに! あんな小さいのに、そんなにも親を独占したいのか!?
するとふと、別の光景が目に飛び込んできた。
カッコー、カッコー。
そう鳴く鳥が、別の巣にでんと座っていた。そのでっぷりした大きな口に、そいつよりも小さな鳥が餌を与えている。
カッコー、カッコー。
カッコー、カッコー。
まるでそれは、引きこもりニートのおっさんとその母親のように見えた。
あまりの醜さに、僕は木を降りた。スマホでカッコウを調べる。
托卵。
子育てキャンセル派のカッコウのメスは、卵を別の鳥の巣に産むらしい——ついでに元々巣にいた卵を一つ消し去るとか。しかも孵化したカッコウのヒナは、他の卵を排斥するとか。
なんてことだ……。
カッコウとは、藤原道長だったのか? 赤ちゃんポストなんてものじゃないぞ。何故なら赤ちゃんが権力闘争に参加しているのだから!
しかもあろうことか、この托卵というやつはカッコウだけの話ではないらしい。鳥はかなり前科があるし、爬虫類にもある。魚なんかは稚魚が托卵先の卵を食べるとか! あぁ、昆虫まで……。
そして僕は見つけてしまった。
進化的軍拡競争。
軍拡競争!
カッコー、カッコー。
なんてことだ……。
軍拡競争をしているのは、人類に始まったことではなかったのか。
カッコウも、ワニも、ナマズも、ハチだって、みんなみんな、軍拡競争しているんだ!
そいつらの共通点は何だ?
背骨があるとかないとか、毛があるとかないとか、卵を産むとか生まないとかではない。
動くやつか?
そうか、動物か!
動かなければ、まだ救いはあるのか?
そうだ! 貝になろう!
貝は動かない! 動かなければ、醜い争いなど起きない! 貝になれば――。
ホタテ……めっちゃ泳ぐじゃねえか。
動画サイトに出てきた動画を見て、僕は唖然とした。しかも海底のみならず、水中をぱふぱふ泳ぐ。
こいつらは……動物だったのか……!
しかも貝の世界には、粘液の跡を辿る情報戦が繰り広げられているという。
情報戦!
つまり、スパイの祖先は貝類だったのか!?
なんてことだ。
どんなに祖先をたどっても戦争の未来しかない。
だってよくよく考えてみたら、クリオネは超危険戦闘機だし、ミジンコすら猟奇的だ。
だめだ、どんなに小さくしたって動物は動物。
動物界そのものが、平和を脅かす存在だったのだ。
(※作者の思考とは別物です)
(※カモノハシはその辺の原生林にはいません)
(※リスに罪はありません)
(※托卵は摂関政治ではありませんし、摂関政治は托卵ではありません)
(※カッコウの托卵調べてみると奥が深いです)




