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とある異世界転生者のアンダースロー  作者: 村山良朝
アンダースローと異世界転生者
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第三話

 俺には魔力がない。


 したがって、魔法が使えない。


 心臓から生成されるはずの魔力が、全く生成されていないということだった。


 魔法が使えないなんて、現代日本では当然の事なんだけれども、この世界では非常識そのものだった。

 まあ、なんというか、堪える。


 ベルモント家はここら一帯では有名な家であるらしく、その長男が魔法を使えないだなんて、それだけで一大不祥事なのだった。


 だから、アリーシャさんは必死で俺に対し、あの手この手で治そうとしているのだった。

 結果は、全く振るわず。


 今回の魔力養成ギブスも俺の魔力の生成が認められず、アリーシャさんはかなり落ち込んでいる様子だった。


 俺に魔法が使えないのは、それは現代日本から転生したからではないのか?

 ふと、俺はそんな仮説を立てた。

 魔法は、認識の問題なのだと家庭教師の魔法使いが言っていた。

 呼吸をするのと同じように、例えば雷を生じさせるのが当然だと自身に思い起こさせるのが重要なのだと。


 現代日本には、魔法を使う人間なんていない。空を飛んだり、杖から炎を出したり出来る奴はいない。

 その当たり前のような常識が、魔法をつかえなくさせているのではないか。


「……現代に帰れる手段はないのか?」


 ここは、俺がいて良い世界ではないのだ。

 ここにやってこれたということは、元居た世界に帰れるということではないか。

 死んでここに来たというのなら、自殺――は最後の手段として、いろいろ調べようと俺は動き出した。


 そこで、家の中の書庫を一年かけて読み漁った。


 この地域の風土と歴史、地名と伝説、どういった魔法があるのか――と色々な書物を読み漁ったが、これと言った手掛かりは得られなかった。


 しかし、ひょんなことから、俺は手掛かりを得てしまった。

 息抜きに、スポーツの本を読んでいた時だ。

 その本に、信じられない記述があるのだ。


 “野球”


 思わず本を取り落しそうになった。

 その単語は、もちろんこの世界の言葉で書かれているのだが、発音するとそうなるのだ。

 しかも、このスポーツ、九人対九人で行われ、攻撃側と守備側に分かれて、一塁、二塁、三塁、本塁を回ることが出来れば得点になり、この得点を九回まで競うとある。

 ヒット、アウト、セーフ、ホームラン、盗塁、フライ、ゴロなどなどなど。

 まんま野球だ。

 急いでルールブックを確認したが、驚いたことに、インフィールドフライなどの特殊なルールも明記されてある。

 これは明らかに、現代世界の誰かがこの世界にやってきた痕跡だ。

 これをたどって行けば、現代世界に通じる道が開けるんじゃないのか……?

 俺は野球に関する歴史について書かれてある書物を探すように、出入りの商人に頼んだ。

 しかし返事は芳しいものではなかった。 


「坊ちゃん、そりゃ、セントサイモンの国王にでもならなけりゃ、分かりようがないですぜ」


 セントサイモンとは、この国の中心部にある大都市だ。

 野球の歴史や、どういった経緯で生まれたのかは、何故だか禁句であり、一切分からない。


「ただ、まあ、プレアリーグのどこかの球団に入って、優勝したら別ですがね」


 プレアリーグとは八都市で開かれている都市対抗のリーグ戦である。

 その優勝チームは、セントサイモン国王から望むものを与えられるのだという。


「これだ!」


 俺の前世は、小学校一年生から数えて十年間野球をしていたのだ。

 野球なら、自信がある。少なくとも、魔法を覚えるよりかは、この世界のプロになれる方が確率が高い。

 そう言った甘い期待は、その翌日、粉々に粉砕された。  

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