第二話
どうやら俺は輪廻転生をしてきたようだ。
――というのを、六歳の頃にようやく分かった。
ここが現代日本ではない。家は欧州風のお屋敷で、その扉を開けると、レンガ造りの街並み。さんさんと輝く太陽。青々と広がる空に、翼竜が飛んでいる。
その翼竜が降下してきて、中庭に降り立つ。
「まいどー、空の宅配便です。お父さんかお母さん、いる?」
「……」
俺が輪廻転生してきた世界は、どうやら恐ろしくファンタジックな場所であるようだった。
人を見れば緑色の肌の人なんて珍しくもないし、髪も金、銀、赤、青なんでもござれ。
俺は、お屋敷へと入って、お袋……ああ、いや、お母様をお呼びする。
「あら、ようやく届いたのね」
と、俺のこの世界のお母様である、アリーシャ・ベルモントはいそいそと中庭へと急ぐ。
配達員から荷物を受け取り、翼竜が空へと飛び立った後、彼女は俺の方をくるりと向いた。
「カズヤ。お話があります」
この世界の名前は、親からではなく、自分で決められる。カズヤは前世での名前だ。
もうあの空の宅配便が来た時点で俺はすごく嫌な予感がしていたのだが、逃げられない。逃げられない、理由があった。
アリーシャさんは俺には聞き取れない言葉を唱える。
魔法だ。
この世界には、魔法がある。
魔法を使う時に生じた魔力光が止み、箱の中身が開示されていた。
「お母様、これは……?」
「魔法力養成ギブスよ」
ふんす、と得意満面の鼻息が漏れ出るアリーシャお母様。
「この『よくわかる! 魔法力養成ギブス』によると、これを着けているだけで、魔力がもりもりと上昇するらしいわ」
というわけで、その魔法力養成ギブスとやらを、俺は着けることとなった。
ギブスは強力なバネが仕掛けられていて、六歳児の俺はかなり力を込めないと押し戻されるものだった。
これは魔力と言うより、筋力が上がるのでは……?
というより、この人、また騙されているんじゃないのか……?
彼女は事あるごとに、こういった魔力を促進させる薬や器具を買ってきていた。
そしてそれら全てが、全く意味のないガラクタであった。俺の魔力は、全くうんともすんとも上がってはいない。
それ故に、この仕打ちを、意味もないと思っていても逃げることは出来なかったのだ。




