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ゾンビ! ゾンバー! ゾンベスト!  作者: 桃野産毛
第二章 末期の水

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第9話 蓮

「でかいライトを持ってるヤツは周囲を照らせ!

ムースのホースを持ってるヤツは、

あの手へ向かって構えろ!」


 ニシナの指示に従う戦闘員たちは、

怯え震える。


「おんどりゃぁ!」


 ミキはいきなり落ちている着ぶくれゾンビを一体、

片手で持ち上げた。


「手前のやつから!」

「わかってる!」


 ミキはニシナの指示通り、

手前に見える灰色の手に向かってゾンビを投げつけた。

灰色の手にぶつかった、着ぶくれゾンビ。

手は粉々に砕ける。


「おぉ!?」

「まだだ!」


 歓声を上げかけた戦闘員をニシナがしかりつける。

すると、さっき着ぶくれゾンビに潰された手は、

また地面のゾンビの隙間から伸びてきた。


「別のがきたか、復活してるか。

どっちかわからねぇけど、

脆い。

 砕かない方が処理しやすいか?

ムースを試す!」


 ニシナは灰色の手にムースを噴射した。

ムースの付着した部分は固まったように見えたが。


「なん!?」


 ムースの固まった部分が高速で上へ上がり、

手のある位置に移動した。

そして、ムースのはガントレットのように、

灰色の手に装着され。


「避けろ!」


 高速手振り下ろされる、

灰色の拳。

ガントレットのせいで威力が増しているのか、

積まれていた着ぶくれゾンビが何体か貫通した。

 着ぶくれゾンビの着ている拘束衣は、

一枚でもかなりの強度と伸縮性のあるものだ。

それを何十枚と重ね着して着ぶくれいる身体を、

灰色の手は易々と貫いて見せる。


「ありゃ、ダメだ!

逃げろ!

何がなんでも逃げろ!」


 灰色の手が一斉に襲いかかってきた。

ニシナとミキは逃げ出すが、

足元の着ぶくれゾンビのせいで、うまく走れない。


「また来た!」


 ニシナとミキは跳んで灰色の手をかわす。

しかし、回避しそびれた作業員の一人の

下腹部が貫かれてしまった。

彼もパワーアシストスーツを着ている。

稼働しており、

人工筋肉と強化服が身体を包んで守っていた。

 それなのに、灰色の手はそれすら貫いてしまい。

彼の身体を持ち上げ、

どこかへ連れ去ってしまう。


「ちっ! 散れ!

二人以上で組んで散れ!」


 ニシナはそう叫んで起き上がり、

走る。


「ニシナ!」

「おう!」


 ミキはニシナに並走して、

ひょいとニシナを持ち上げ背にのせる。

身長差からすれば、逆なのだが。

パワーアシストスーツの性能としては、

これが正解だった。


「ムースが効かねぇなら!」


 ミキの背中の上から、

ニシナは何かを投げた。

それは轟音を上げて炸裂する。


「普通の爆弾だ!」


 爆心地の着ぶくれゾンビたちは、

爆風で拘束衣のまま吹き飛ばされる。

灰色の手は爆風で崩れてしまうが、

またすぐ着ぶくれゾンビの隙間から生えてくる。

 だが、生えてきた灰色の手はさっきより小降りだ。


「何となくわかった!

ありゃ、骨粉と泥だ!

 骨粉を樹脂で固めて動けるなら、

骨粉が泥まみれになっても同じか!」


 ニシナはそう叫ぶ。

ミキ以外誰に聞こえているか分からないが、

叫ぶ。

ミキはニシナにたずねる。


「爆弾何個あるの?」

「後三つ!」


 ミキはカモシカのように、

着ぶくれゾンビを踏みつけて跳びはね、

襲いかかってくる灰色の手の群れを避けていく。

 ミキは疑問をニシナにぶつける。


「ここ、底までコンクリートで固めたんだって聞いたよ?

どこに泥があったの?」

「知るかよ!

ここに突き落としたゾンビに付いてたのとかだろう!

数万、数十万体近くのゾンビがここにいるんだ!

何が混入しててもおかしくない!」


 無数の灰色の手は、

攻勢を強める。


「くそっ!

逃げ場もねぇ!

もういっちょ!」


 ニシナは二個目の爆弾を進行方向の遠くへ投げた。

炸裂して、灰色の手が一瞬散る。

散った先に、着ぶくれゾンビがいない床が見えた。


「ミキ、あそこへ向かえ!」

「おうとも!」


 少女はパワーアシストスーツの稼働率を上げて、

さらに人工筋肉を膨張させる。


「跳ばすから、掴まれ!」


 ニシナは振り落とされないよう、

ミキの肩を掴んだ。


 ゾンビは、道具を使うことはできない。

道具を使うための知能が失われているためだ、

と言う仮説が有力だ。

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