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ゾンビ! ゾンバー! ゾンベスト!  作者: 桃野産毛
第一章 死亡判定

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第2話 蓮華

 ゾンビの活動を止める方法。

それが未だ分かっていない。

 有名なお話のように、

頭を潰しても、首だけになったとしても、

ゾンビは生者に向かっていった。

身体の肉や筋が腐敗して、

骨が露出しようとも。

火炎放射器で焼き払い、

炭化した肉の破片が骨についただけになっても。


 火葬して、骨を砕き骨粉にしたとしても、

微細な振動で動き続けた。


「孤独死?」


 女性の大家が、

マスターキーを片手に二人に話を続ける。


「身寄りのない独居老人だったんだけどねぇ。

持病もないって、聞いてたんだよ。

でも、この夏の暑さで、

ぽっくり逝っちまったみたいでさ。

 昨日から部屋の中でごそごそしてんだけど。

ドアを開けて出てこないんだ。

おかしいなって、窓から覗いたら」

「死んでた、と」


 ニシナはホースを構えて、

大家に向かって親指を立てて見せる。


「俺らに任せな!」

「部屋はもこもこで汚さないでくれよ。

そのもこもこ、

専用の剥離剤じゃないと取れないんだから」

「じゃぁ、誘い出して、

外で捕縛(つ)かまえるか」


 ミキはそう言って、

前掛けの様な、

マントのようなものがついた小ぶりのフルフェイスヘルメットを被る。

パワーアシストスーツの頭パーツだ。

マントの端はスーツの胸元にあるロックで固定できる。

 ミキはおもむろに上の服を脱いで、

スーツとヘルメットを繋ぐ。

そのせいで、

シャツの首はのびのびのびろびろだ。

そして、ミキは何故か服を着直す。

パワーアシストスーツを稼働させると破れる服を、

着直す。


「ミキ、お前の服は経費にしねぇって言ってるだろ?

俺、お前が服選ぶとき、

破れる音と感触で選んでるの知ってるぞ。

だから、柄が二の次になって、

そんなダっせぇ服装なんだよ」

「なっ!?

ダサい?!

このシャツの良さが分からないなんて!

センス無さすぎ!

その魚屋ルックで良く言えるね?!」


 ミキの服は、

パワーアシストスーツの上に。

パンダが空を飛んで、

海を泳いでいるケーキを捕まえようと、

釣りざおを構えているイラストが描かれたTシャツ。

下はジャージと白い運動靴だ。

 ニシナの服装は、

魚屋や漁師がつけている長靴とスボンと前掛けが一体化した。

胴長、チェストハイウェーダーなどと呼ばれる物とTシャツだ。


「あんなにたくさん靴を持ってて、

いーっつも、それじゃん!」

「あれは俺のコレクション!

ゾンビの汁とか、ムースを付けたくないの!」


 ニシナの趣味はスニーカー集め。

たくさんスニーカーを持っているものの、

基本的にはこの服装で活動している。

 大家はためいきをついて。


「いいから、仕事して。

中の物はうちで引き取るんだから、

絶対汚さないで」

「強突張りだなぁ」

「部屋が腐肉まみれになってるんだ。

損害賠償代わりだよ」


 大家はそう言って、

二人を問題の部屋の前に連れていく。

部屋は三階にあった。

そして、マスターキーをドアに刺して、

再度二人に釘を刺す。


「安くない金払ってるんだ。

いい加減な仕事はしないでおくれ?」

「分かってる。

ニシナ」

「おうよ。

ミキはゾンビを誘い出して一階に降ろす。

俺はお前をアシストしつつ、

一階でムースを吹き付けて固める」


 大家が、鍵を開けた。

部屋の中からおとが近寄ってくる。


「開けるよ?」

「来い!」


 大家がドアを開けると、

腐臭が部屋からあふれ出し、

中からゾンビが飛び出してきた。


「ほい!」


 ミキはパワーアシストスーツを稼働させ、

ゾンビの身体を受け止める。

ヘルメットとスーツを繋いで、

隙間なく人工筋肉が身体を覆うので、

ゾンビの猛攻にもびくともしない強固な鎧になっている。

 大家はその隙に退散した。


「よし、階段こっち!」


 ニシナの誘導に従い、

ミキはゾンビの身体を引っ付かんで歩く。


「腐ってて掴みづらい!」

「気張れ!」


 何とか二階におりる。


「あ!

人があがってきた!」

「ちょ!

のいてもらって!」

「ごめんなさい!

ゾンビの回収です!

ゾンビが通ります!」

「えぇ?!

臭いから、早くして?」


 下からあがってきていた住人に退いてもらい、

ニシナはミキを誘導して階段を降りる。


「まだぁ!?」

「一階だ!

建物から出よう!」


 何とかゾンビの身体を建物から引きずり出して、

ミキは地面に投げた押した。


「しっゃ!」


 そこをすかさず、

ニシナがムースを放出する。

立ち上がる前にゾンビがムースで固まった。


「よし!

ねぇ! ニシナ!

くっさいから、アタシに水かけて!」

「おう!」


 ニシナは泡立って固まったムースをよそに、

懐からペットボトルに入れた水道水を取り出した。

そして、ミキにペットボトルの中身をかける。


「ぬっるい!

全然爽快感ない!」

「我慢しろ!」


 水でさっぱりしたミキは、

ムースが完全に固まって動けないゾンビを持ち上げた。

地面に面していた辺りのムースが薄い。

ゾンビがうごめいているのが見える。

 ニシナがすかさずそこにムースを吹き付けた。


「ちょ!

アタシごと固める気?!」

「大丈夫だったろ?」


 絶妙にムースが当たらなかったミキは不機嫌そうに。


「ほら!

早く調べて!」

「はいよ、っと」


 ニシナは懐からスティックのような機械をとりだした。

そして、固まっているゾンビの身体にかざして、

反応を確認する。

 すると、頭の辺りに機械を近づけると、

ピーっと音がなる。


「よし! 当たりだ!

『保険』に入ってる!」

「やった!

五千円プラスだ!」


 ニシナとミキはハイタッチして喜んだ。

『保険』。正式名称『安楽保険』。

ミキは大喜びで。


「保険屋さんに連絡して!

回収依頼して!」


 ゾンビは保険加入者の場合、

一体一万五千円で保険屋が回収する。

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