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ゾンビ! ゾンバー! ゾンベスト!  作者: 桃野産毛
第一章 死亡判定

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第1話 輪菊

 それは、突然の出来事だった。

ある日、いきなり死者たちが一斉に動き出した。

土葬されたものは、地面から這い出し。

無差別に生者を襲い、食らい、殺した。

 世界中あっという間に分断され、

パニックに陥り。


 しかし、絶望はしなかった。


 人類は人類自身が想像するよりも、

遥かに意地汚かった。


「あー!

もう、ここで電池切れるとか?」

「ツイてないねぇ」


 男は舌打ちをしながら、

懐中電灯から電池を抜き取ってポケットへ入れた。

充電池だ。捨てるのはもったいない。


「ミキ、お前のライトで前照らしてくれ」

「まぁ、しゃーないか」


 ミキと呼ばれた少女は、

暗闇へ向けて懐中電灯の光を伸ばす。

深夜の不気味な、山の中。

怪しげな雰囲気が流れている。


「ニシナ。

あんた、ライトないんだから『ムース』構えとけ」

「あぁ、そうだな」


 ニシナと呼ばれた少年は、

光らなくなった懐中電灯を腰のベルトに挿す。

そして、背中に背負ったタンクから延びるホースを両手で構えた。

 二人はさくさく山の奥へ進む。


「おいでなすった!」


 ニシナは笑って、ホースを構えた。

その視線の先には、複数の人影。


 歩く死体、ゾンビだ。


「四体。

あれか、練炭自殺か」

「奥に見えるの、車か、あれ。

ちゃんと目張りしてなかったから、

出てきたんだろう」


 ミキがゾンビたちの奥を照らすと、

ドアが開いた車が一台あった。


「あれ、練炭で死んで、

その後車ごと爆さんするつもりだったみたい。

車の中にポリタンクとなんか装置見える」

「……ミキ。

俺にはよ、あの装置、まだ動いてるように見えるんだけど」

「ニシナ、目ぇいいね。

たぶん動いてるよ。

タイマー的にあと五分で爆発する」

「嘘だろ!?

急げ!」


 ニシナはホースを構えて、

ゾンビに向かって走り出した。

ゾンビたちはニシナに気付いて、

ニシナはゾンビに囲まれる。

 しかし。


「おりゃ!」


 ホースから液体を射出して、

ゾンビたちの足元へ撒き散らすニシナ。

地面に着いた瞬間、液体は発泡して泡立ち、

十倍以上に膨らんで固まる。

 断熱材の吹き付け発泡ウレタン。

それを無害化して、安価に用意できるようにしたもの。

それが、『対ゾンビ捕縛兵器』。

通称、『ムース』。

 ニシナはゾンビたちを足止めしたら、

そのままホースを上へ向ける。

ムースがゾンビの腰、腕に張り付いて動きを制限し。

顔に張り付いて噛みつかせないようにした。


「ニシナ!」

「おう!」


 草むらから飛び出した、

無傷のゾンビを華麗に回避してムースを浴びせるニシナ。


「急いで!

あと三分!」

「運べんのか、これ!?」


 ゾンビは合計五体。

ムースにまみれて固まり、無害化した。

ミキはニシナと手分けして、

人の形に固まった発泡スチロールみたいなものに縄をかけて行く。


「よっし!

パワーアシストスーツ、稼働!」


 ミキは腰に着いたスイッチをいれる。

すると、ミキの身体を包む服が膨れ上がって裂ける。

中から除いたのは、バキバキでムキムキの身体。

 パワーアシストスーツ。

ダイビングのウエットスーツのように首から下を包むスーツ。

スイッチをいれると、

スーツ内に敷き詰められた人工筋肉が稼働して、

今のミキのような姿になり、筋力を爆発的にあげる。


「ニシナ!

ライトもって!」

「あいよ!」


 ミキは五本縄を持って、

ムースに包まれたゾンビ五体を引きずって駆け出す。

ニシナもそれを追いかけて走る。

二人はあっという間に車から離れた。


 そして、タイマーがゼロになった。


 車が大爆発する。


「うわぁぁ!」

「あはははは!」


 笑うミキを見て、ニシナも苦笑いした。


「これで五万か!」

「ガソリン代と電気代で二万引いて!

後、私のご飯に一万!」

「そんなもんに、一万も出せねぇわ!」


 ゾンビは、一体一万円で売れる。

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