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LEVEL5 〜超能力を巡る戦いの記録〜  作者: 更待クロム
第1章:政府革命編
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第6話:萌黄の過去

※本エピソードには、一部ショッキングな自然災害などの描写が含まれます。苦手な方や、体調に不安のある方は閲覧をご遠慮いただくか、ご注意してお読みください。

私、涼風萌黄には父と姉がいた。


父は刀匠だった。父の部屋には父が打った立派な太刀が飾られていた。


小さい頃から私も刀が大好きでよく父が刀を打つところを見ていた。


ある日、私は父に剣道をしたいと言った。父は子供達に剣道を教えていた。


私が子供達より幼かったのが心配だったのか、父は私に他の子供達と一緒に教わらせてはくれなかった。


それでも私が頼むと、父は私だけに稽古をつけてくれた。


父は剣道で鍛えるべきは精神で、肉体はその後だと言った。私は父の教え通り稽古に励んだ。


父はいつも稽古が終わると私を褒めてくれた。私はそれが嬉しくて、いつも稽古が楽しみだった。


小さい頃から母がいなかった私は姉を母親の様に思っていた。年の離れた姉は海外旅行が好きだった。


日本に帰って来ると外国の話をしながらいつもお土産をくれた。


姉は料理も得意で私の好物は焼きおにぎりだった。


姉がまた旅行から帰ってきた。その時のお土産はモデルガンだった。


姉はかなり気に入ったらしく、自分用にもう一丁買っていた。


モデルガンを私が無くして泣いた時、姉は自分のを私にくれた。その時小学生だった私でも少し申し訳ないなと思った。


ある日、父は私に抜刀道を教えると言った。抜刀道は真剣で藁などを切る武道で剣道との相乗効果で強くなるらしかった。私が抜刀道を習得した時、父はとても嬉しそうだった。


それからは父と模擬戦を始めた。私も大好きな刀を使えてとても嬉しかった。


高校生になり、勉強で忙しくなっても私は刀を握り続けた。父は相変わらず部屋に立派な太刀を飾っていた。




ある日、私が積み重ねてきた幸せが、崩れ落ちた。


学校の帰り道、突然足元が揺れ初めた。あまりに大きな地震に驚き、恐怖を感じた。


地震がおさまると、私は家へ急いだ。


家の前に着くと、私の呼吸は荒くなった。


私の家はこの辺りでは珍しく木造だった。それが災いしたのか家は全壊していた。


この日は父も姉も家にいた事を私は思い出していた。


「お父さん!お姉ちゃん!返事をして!」


私は泣きながら叫んだ。


「萌黄」


小さな声が聞こえた。


「お姉ちゃん!」


「私をおいて逃げな。お父さんは私を庇って死んじまった。私も足を骨折したみたいだ。

それにここから動けないのさ。ここは海に近いからしばらくすると津波が来る。

私は絶対間に合わないから萌黄だけでも助かってくれ」


「そんな、お父さんが死んだ...お姉ちゃんも助かって!はやく行こう!」


すると姉は涙を流した。


私が見た姉の最初で最後の涙だった。


「...おねがい」


海ではすでに船が沖へ向かっていた。


私は泣く泣く高台へ逃げた。その手には太刀とモデルガンが握られていた。


私が高台を登り切ったころ、ついに津波が来た。


津波は瞬く間に家を飲み込み、街を飲み込んだ。変わり果てた街を見て私は嗚咽が止まらなかった。


私は自分が嫌いになった。


父と姉を助けられなかった。何より私は姉をおいて逃げてしまった。私はそれがとてもとても悔しかった。


この時私の中に何かが生まれた。


仮設住宅に住み始めたころ、私はまた刀を握った。悔しさを全て稽古に向けた。


ある日、レボルから手紙が来た。内容はほとんど一希にきたものと同じだった。


私は怒りで頭が真っ白になったが、それでも私の冷静な部分が告げていた。自分にはどうする事もできないと。


新しい学校には入学したが、行く気になれなかった。この頃の私は幸せを手に入れるのが怖かった。


アルバイトはしたので安いアパートに住むことができた。私を心配したバイトの友達が抽選で手に入れたとある旅館のチケットをくれた。


私はその気持ちが何より嬉しかった。


旅館を満喫していると見覚えのある顔の男を見かけた。


その顔を見た瞬間、私は怒りで理性が吹き飛んだ。肌身離さず持っていた父の形見である太刀で部屋に入った男の首を刎ねた。


私は何も考えず、モデルガンを男の頭に向けて引き金を引いた。


「パァーン」


大きな音が鳴り私は正気に戻った。


「弾が、...出た!?︎」


音も鳴らないはずのモデルガンから出た弾丸は男の頭を貫き床を貫通した。


私が驚いていると人の気配を感じた。見られたら殺すしかないと考えた私は気配を消して背後に立ち、首を刎ねようとして得体の知れない気配を感じた。


それが露草一希との初対面だった。



アパートに帰ると私は状況を整理した。


総理だと思った人物は顔が似た別人だった。


私は人を殺した挙句、更に人を殺すところだった。


男からした気配はレボルも言っていた超能力を持つサインだった。


モデルガンから弾丸が出た。しかもかなりの弾速で。つまりモデルガンが銃のような何かになった?


この時の私は状況を整理しても落ち着くことができなかった。


大好きな刀で、父の形見で人を殺してしまった。そして姉の形見で男の頭を貫いた。


私は自分がとても恐くて、とても嫌いになった。そして忘れようとした。


その日は眠ることができなかった。



次の日、私は学校に行く事を決心した。


同じぐらいの年の男を見て、自分も行くべきだと思ったから。そして学校にけばこれ以上人を殺さないと思ったから。このままではいけないと感じたから。


私は制服を着て学校に向かった。入学してから登校していなかったので私は転校生と勘違いされた。


そして、旅館にいたあの男、露草一希と出会った。


私は少し驚いた。そして彼を連れて校舎裏に行った。


私は彼に警察に突き出して欲しかった。もしくは自首するつもりだった。


しかし彼は「涼風が自首する必要はない」と言った。


私は全て自分が悪くて、犯罪者で、凶悪犯だと思っていた。


でも彼はそれを否定した。


自分が恐くて、嫌いで、死にたいとさえ思った私にとって、君の言葉がどれだけ嬉しくて、どれだけ私の力になったか君は知らないでしょう。


だから私は、全力で君の役に立つよう努力すると、このときから心に決めた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。7時30分に毎日投稿中です。

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