第33話:体験と決心 中編
高校は知り合いが誰もいない遠くの学校にした。
私はまたいじめられるのが恐ろしくてトランスジェンダーである事を誰にも言えないでいた。
でもそんな私にも友と呼べる存在がいた。
「おはよう、美空。今日も暑いな」
「おはよう、駿介。夏だからね」
彼の名は朽葉駿介。
とても気が合うのでいつも私は彼とばかり会話していた。
それでも、言えない。
どんなに仲の良い友達でも、本当の私を受け入れてもらえるとは限らない。
私は秘密が彼に知られてしまう事が怖かった。
だから彼と笑っている時も、私の心が完全に晴れる事はなかった。
ある日、担任の先生が私に声をかけた。
私は先生に言われた通り、放課後に先生と2人きりになった。
「姫乃、...前から姫乃は朽葉がいないところで時々顔を曇らせる事があるな。
2人は仲が良いだろ?朽葉にも言えない悩み事があるのか?
言いたくなかったら言わなくてもいいが...」
私はものすごく驚いた。
ここまで私をしっかり見てくれる先生がいるとは思わなかった。
そして私はもう一度覚悟を決めた。
この、生徒をとても気にかけてくれる、少し顔が怖いけど優しい先生にすべて打ち明けよう、と。
「黒鳶先生、実は、...僕は女になりたいんです。
でも、友達に馬鹿にされた事があって、...それで怖くて駿介に言えなかったんです」
私の説明を先生は嫌な顔一つせず、真剣に聞いてくれた。
「なるほど。勇気を出して、先生に教えてくれてありがとう。
それで、姫乃はどうしたいんだ?
校則としては別にスカートを履いてもらっても構わないが、まずは親御さんに伝えるのが一番だろう。
今のままが嫌なら、行動する事が大切だ。
もちろん先生もできるだけ協力しよう。言いづらい事も代わりに先生が話してもいい。
今のままでいいなら、先生は誰にも言わないし、余計な事もしない。
姫乃が決める事だ。
でも、自分の個性は隠すものじゃ無いと先生は思う。
個性が輝いていないと、その人の輝きも失われてしまうからな」
先生が真剣に考えてくれている事がただただ私は嬉しかった。
先生のいう通りにすれば、なんとかなるかも知れない。
それでも私は悩んだ。
なりたい私でありたい。
だけどあの日の絶望が頭をよぎる。
あんな体験はもうしたくない。
私が悩んでいる事を察した先生は私を励ました。
「大丈夫だ。朽葉も、他のみんなも、ありのままの姫乃を受け入れてくれる。
馬鹿にする様な人はうちにはいない。クラス全員がお前の味方だ」
先生の言葉を聞くと、不思議と勇気が湧いてきた。
もしかしたら、今度こそ受け入れてもらえるかも知れない。
先生に励まされ、私は遂に決心した。
「みんなに伝えます。声をかけて下さりありがとうございました」
「それはよかった。まずは親御さんに伝えなさい」
先生がそれを聞いて嬉しそうにする姿を見て、私も嬉しくなった。
「はい!」
曇っていた私の心に、光が差し込んだ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。次回の投稿は10月6日の19:30です。
これを読んでくださっている皆さんの中には、タイトルを読んだ時に
「また中編...」
と思っている方も多いと思います。
言い訳をすると最近執筆の時間があまり取れず、常にギリギリで投稿してしまっています。
今は大丈夫ですが今後、投稿する頻度が下がってしまうかもしれません。
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そして私になにか落ち度があれば、コメントで教えていただけると幸いです。




