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LEVEL5 〜超能力を巡る戦いの記録〜  作者: 更待クロム
第1章:政府革命編
32/38

第32話:体験と決心 前編

これは、とある1人の少年の物語。



その少年は自分は普通だと思っていた。一般的な中学生男子だと。


『普通』。


この言葉が後に、自分を傷つける事になるとは知らずに。



小学生の時から、友達はたくさんいた。


少年はそれほど人気者だったわけではない。


やんちゃ者達が集まり、周りの大人しい男子も巻き込んで一緒に遊んでいた。


その中には、その少年も含まれていた。


中学に上がってからも、小学校からの友達もたくさんいたので少年は簡単に友達を作る事ができた。


みんなと同じだと思っていた。いつも普通でありたかった。


でもなにか、違和感があった。


自分は周りと何かが違う。


でもそれが何なのかわからない。


それはとても些細なものだったが、少年の心の中に確かにあった。



ある日、先生は今まであまりしてこなかった授業をすると言った。


「お前らももう中学生だからな。ふざけずに真剣に授業を受けなさい」


いつになく真剣な先生の表情に少年とそのクラスメイト達の間に緊張が走った。


授業の内容は性に関してだった。


体の性、心の性などについて少年達は学んだ。


先生は言った。


世の中には医学的な性別と本人が自覚する性別が一致しない人達がいると。


その言葉を聞いた瞬間、少年は自身の心の中に眠る、違和感の正体に気がついた。


自分は周りの男友達と、好きな物が少し違う。


かっこいいのは好きだ。


でも、かわいいのも好きだ。


幼い頃からかわいいドレスに憧れている自分がいた。


かわいくなりたい。


少年はこの時初めて、自分の気持ちに気がついた。


性教育は小学生の頃から受けてきたので今更ふざける人はおらず、なんの問題もなく授業は終了した。



それでも彼等を馬鹿にする人間は確かにいる。


そしてそんな事をする人間は、このクラスでは決まっていた。


人気者である彼は、授業が終わり先生が教室からいなくなると周りの男子に話しかけた。


「あ〜、授業だるかった〜!体は男で心は女、みたいな?そんな奴本当にいたら、気持ち悪くね?」


「あ、ああ...」


「そ、そうだな...」


せっかく真面目に先生の話を聞いていた人も、次々と意見を変えていく。


それはまさにこの世の不条理を表していた。


この時少年は偶然次に授業がある教室に向かっており、この会話を聞いていなかった。


確かによかったのかも知れない。


でもそれが余計に事態を悪化させた。



放課後、少年はクラスの人気者である彼にカミングアウトをした。


変かも知れないけれど受け入れてほしいと。


少年はこの時これまで生きてきた中で一番緊張していた。


でも、彼を信じていた。


少年の親友でもあった彼は、少年の言葉を聞くと、冷たく笑った。


「マジかよ。気持ち悪っ」


その瞬間、少年と彼の間に見えない壁が現れた気がした。


「そん...な...。僕が...普通じゃないから...」


私は悔しかった。


やはり普通ではない人間は淘汰される。


気づいた頃にはもう遅い。


彼はクラス中に私の話を広め、私をいじめ始めた。


事あるごとに私を仲間外れにし、あらゆる嫌がらせをされた。


私はみんなに受け入れられなかった事が苦しくて、悔しかった。


でも言えない。


親にも、先生にも。


彼はそんな私の性格を知っていて、嫌がらせが終わる事はなかった。


ある日、いつもの様に学校に来ると私の机にたくさんの落書きが書いてあった。


私が涙を浮かべてそれを消すのを周りは眺めて、ニヤニヤしていた。


「ほら、早く消さないと先生が来ちゃうぞ」


こんなの、もう嫌だ!


いっそ逃げ出したい!


私が心の中でそう叫んだ瞬間、何かが生まれた気がした。


「ほらモタモタすんなよ!」


彼はいきなり私に近づいて来ると、私を蹴った。


しかし、私が痛みを感じる事はなかった。


「ん?避けてんじゃねえよ。うぜえんだよ」


避けた?


「僕は避けてなんか...」


そのとき、チャイムが鳴った。


「キーンコーンカーンコーン」


「ゲッ!やべ!」


彼とその取り巻きは急いで席に戻る。


少しして、先生がやって来た。


私は落書きを消し終わったが、立っているところを先生に見られてしまった。


「?...どうした、姫乃。早く席に着きなさい」


「...はい」


私はSOPを得た事に気づく事はなく、誰にも何も言えないまま中学を卒業した。

ここまで読んでいただきありがとうございます。次回の投稿は10月3日の19:30です。

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