第27話:乱入者
高層ビルに囲まれた道路の真ん中に浮かぶ不気味な球体。
僕達の目の前で変異したサルスの目のうちの一つが突然光り出した。
「ギュイイーーンッ!!...」
《何か来ます。気をつけてください!》
僕はこれから来るであろう何らかの攻撃を目で見てから避けようとした。
「ギャオ!」
その時、1匹のサルスが僕の目の前に飛び出してきた。
「ブウォン」
光る目から一筋のビームが放たれる。
「ドッ!!」
サルスに対しては威力が減少しやすいのか、そのビームがサルスを貫通することは無かった。
「ガミオ!」
直撃を受けたガミオは、即死していた。
「そんな...ガミオ!!」
ガミオに、助けられた。出会ったばかりの僕を、助けてくれた。
でも、死んで良いなんて、言ってないやろ!
僕の心は悔しさでいっぱいになる。
「ブウォン」
「バキッ!」
《ッ!!左腕が吹き飛んだッ!私はもう戦えないので、和さんは早くここから逃げてください!
指揮権は、あなたに預けます》
朽葉さんは唯一の武器であるマシンガンを続けて発射されたビームによって吹き飛ばされた。
それでも死なないことを最大限に活かして僕を逃がそうとしてくれている。
「ありがとうございます!」
僕はガブジロウの背にまたがり、その場から全力で離れた。
僕と一緒に変異したサルスを追いかけていたサルス達も、ガブジロウの後に続く。
葵とトカゲマルは、すでに僕が残していたサルス達と、救出対象を乗せたたくさんの車と共に地下シェルターに向かっている。
安全運転をしている車にならサルスの足で今からでも追いつける。
僕がサルス達と共に退避するのを見届けた朽葉さんは、笑みを浮かべながらつぶやく。
《この身体は最強だと思っていましたが、...まだまだ改善の余地がありそうですね。
...和さん、...できる限り時間は稼ぎました。...無事に...逃げ切ってくださいね...》
「ブウォン」
朽葉さんは光に包まれ、後には何も残らなかった。
僕は新たに浮かび上がった一つの問題に悩まされていた。
変異したサルスを振り切って葵達に合流することだけを考えていた。
でも、もしも振り切れなかったら?
逆に合流すると全滅もあり得る。なら、僕のすべき事は決まっている。
僕は後ろを見た。遠くからだんだん球体が近づいて来るのが見える。
「こっちについて来て!」
僕が目的地とは違う方向に曲がると、後ろから変異したサルスもついて来た。
やっぱり僕が狙いか。
すでに覚悟は決めている。何としてでも、救出対象を守り抜く!
「ギュイイーーンッ!!...」
この音は!
僕が振り返ると変異したサルスはすぐ近くまで迫って来ていた。
「ブウォン、ブウォン、ブウォン、...」
「「ドッ!!」」
僕について来ていた後方のサルスが僕と目の射線上に割り込み、ビームを防いだ。
連射されるビームに何匹も突っ込んでいく。
そんな地獄絵図に僕は耐えられなかった。
「もう死なないで!僕を置いて逃げてや!」
サルス達は聞く耳を持たない。殺戮劇は止まらなかった。
「もう、やめて。...」
僕にとってサルス達は仲間だった。友達だった。
「ブウォン、ブウォン」
「「ドッ!!」」
後ろを見れない。
終わらない地獄に、僕の心は壊されていく。
気づけば、あれだけいたサルス達の走る姿は跡形もなく消え、道路には僕を庇ったサルス達の死体が延々と転がっていた。
「ブウォン」
僕を乗せていたガブジロウが僕を放り投げた瞬間、ビームがガブジロウに直撃した。
「ガブジロウ!!」
「ドッ!!...ドサッ」
「ぐっ!」
地面に叩きつけられた僕は、立ち上がるとゆっくりとガブジロウに歩み寄った。
「ここまで僕を運んでくれてありがとう。...よく頑張ったね。...みんなも、ありがとう。
...でも、...もうすぐまたみんなに会えるよ」
「ギュイイーーンッ!!......」
変異したサルスは再びチャージし始めた。
ごめん、葵。
もう一緒にいられない。
サルスの目はいっそう光り輝く。
「ああ、...綺麗やな...」
不気味な美しさを感じさせる光に僕が魅入っていると、聞き覚えのある音が周りに響いた。
「パチン」
変異したサルスの巨大なその姿は、音と共に一瞬にして掻き消えた。
「討伐完了っと♪」
「閉じ込めただけでしょ?」
二つの人影が遠くに見える。
「いやーそれにしても、まさかヘリが墜落するとはね〜」
「操縦士の人に申し訳ないという気持ちはないの?」
「勿論思ってるよ」
「というか、あなたもそれを使えるとはね」
「ふふんっ!先生だからって私を舐めないでね!」
人影は徐々に近づいて来る。
そして、目が合った。
「あれ、和くんじゃん。久しぶりだね!」
そう言って笑うその顔を、僕は知っている。
「平坂先輩、...どうしてここに...」
先生と呼ばれたもう1人は、どこかで見たことがある気がする。
「先生はね、序列4位の隊長の1人なんだよ!」
じゃじゃーん!と言ってもう1人の女性に向けて両手をヒラヒラさせる。
せっかく助かった僕の命は、再び風前の灯になった。
もはや逆らうのも馬鹿らしい。
仲間をすべて失った僕の目の前に、特審の最高戦力が2人も現れてしまったのだ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。次回の投稿は9月18日の19:30です。




