第14話:日本の危機
SOPを使用した犯罪者には内閣府特務防衛審議会が定めた、危険度というものが存在する。
最小限の実働隊の派遣で確実に処理をするためだ。
この制度は常に人手不足である特審にとって必要不可欠である。
危険度は5段階にわかれ、それぞれ最低限派遣される人員が決められている。
危険度レベル1...軽犯罪(初犯)を犯した者の危険度で数人で確保するが注意喚起をした後解放する。殺害は許可されていない。
議会でしか裁判を行わないためレベル1は不起訴になる。
危険度レベル2...繰り返し犯罪を犯す者や凶悪犯罪を犯した者の危険度。1人につき5人以上派遣する。殺害は許可されていない。
議会で裁判をおこない法律に則り罪を課す。死刑の判決が下される可能性もある。
危険度レベル3...集団での計画的な犯罪などやレベル2以下では確保できない者の危険度。
確保が難しい場合、殺害が許可されている。裁判をおこなうが判決のほとんどが死刑である。
序列30位以上を1人以上派遣する。
危険度レベル4...犯罪組織などやレベル3以下では対処できない者の危険度。速やかに殺害する。
隊長を1人以上派遣する。
危険度レベル5...国家滅亡の危機。隊長を3人以上派遣する。過去にレベル5が記録された事はない。
SOPを秘匿する事が非常に困難であり、やむをえず公表する事も有り得る。
涼風萌黄は一般人を殺害しレベル2に指定された。
その後、1回目の杉原の撃退によりレベル3に上がり、2回目の杉原達の撃退により一希達6人全員が危険度レベル4になる。
これにより完全に確保から殺害に変わる。これは議会のみ知る事実。
一希達はまだその事を知らない。
そして一希達の目の前に現れた、後に「サルス」と呼ばれる事になる化け物の危険度はレベル5に指定される。
特審初の出来事であり、この時、議会では議論が続いていた。
◆◆◆
化け物は何かを探す様に歩き回っている。
(なんだアイツ。恐竜?)
(どう見ても違うでしょ。あれが何かは分からないけど、目が無いという事は鼻か耳が頼りなのよ。
動かなければ音は出ないけど...)
(嗅覚があれば時間の問題だな)
さて、どうするか。
俺が悩んでいると和が言った。
(露草先輩、ここは僕に任せてください)
...そうか、それがあった!
和が前に出る。
そして化け物が気づくより先に叫んだ。
「僕と友達になって!」
「グルルルル...」
化け物は勢いよく振り向き、和に向かって歩き出す。
そして鼻息を荒げて和を頭でつついた。
「この子、僕に懐いたみたいです」
「...よかった〜。和がいなかったら危なかったよ」
「トカゲマル、アオタロウと仲良くしてや」
和はアオタロウをトカゲマルの頭に乗せた。
「名前は...それでいいの?」
「センスがないって言いたいんですか!?︎」
「いや...そんな事は無いよ」
和の気迫に宗一が押し負けた。
そういえば電話が繋がったままだったな。
「朽葉さん、観てましたか?この生き物が何か分かりますか?」
《私には分かりません。藤黄さんがいなければかなり危険な相手だったと思われます。
とりあえず、露草さん達を念のため中に転移させます。
そこの...トカゲマルも一緒で大丈夫ですよ》
「分かりました。お願いします」
俺達は一箇所に集まる。そして視界が一気に光に包まれ、施設内にワープした。
ワープした場所は最初に来た部屋よりも大きな場所だった。
月城さんと朽葉さん、そして武装した人が何人か集まっていた。
「藤黄さん、トカゲマルとコミュニケーションはとれますか?」
「話せるわけではないので難しいですね。でも、大体分かります」
和がトカゲマルの顎に触れ、目を閉じる。
「好奇心であの辺りをうろうろしていただけみたいです。それと、仲間がいっぱいいるみたいです」
「いっぱい!?︎それは本当か?」
「はい」
「わかった。藤黄君、ありがとう」
月城さんはそう言うと研究員に指示を出していく。
「聞いていたな。お前達はこの生き物が出没した情報を集めろ。
お前達は特審に潜入している者に情報を送れ。何か分かれば朽葉に報告するように」
「「分かりました!」」
そうして研究員達は慌ただしく走っていく。
「藤黄君、君のトカゲマル君を調べさせてもらうが、良いかな?」
「勿論です!丁寧に扱って下さいね」
「大丈夫だ。安心したまえ。そうだ、君達を部屋に連れて行かないとな。私についてきなさい」
月城さんは大荷物を持った俺たちを見てそう言った。
トカゲマルは武装した人達と朽葉さんに別の部屋に連れて行かれた。
「ここが、君たちの部屋だ。男女で部屋を分けているが部屋数の都合上、3人ずつで使ってもらう」
「凄っ!」
「ホテルみたいだね」
清潔そうなベッドが3つ、洗面所に浴室まである。
なんと洗濯機まで置いてあった。
「右が男部屋、左が女部屋だ。正面をずっと進んでつきあたりを左に行くと銭湯がある。勿論無料だ。
銭湯が開いている時間は6時から21時まで。清掃の当番表は部屋に貼ってあるから後で見ておいてくれ。
そして右に曲がると食堂がある。朝は7時から、昼は11時から、夜は18時からそれぞれ3時間開いている。食堂も無料だ。他に何か質問はあるかな?」
「はい!」
宗一が手を挙げた。
「採算は合うんですか?電気代とか...」
「よくぞ聞いてくれた!発電と最高に相性の良いSOP所有者がいてな、電気はほぼ無限に使えるのだよ。
ただ、個人に頼る事になってしまうから発電に関する研究もしているのだがな。
食料に関しては仲間の農家から支援してもらい、代わりに電気を届けているというわけだ。
研究費についても似たようなものだな」
「すごーい!」
「実質無料という事かしら」
凛は目を輝かせながら、萌黄は感心したように言葉を漏らした。
「職員達にも見返りにあらゆる研究をしてもらっている。昨日ははっきり言っていなかったが私は準備が整い次第特審に訴えようと思っていた。
無論、向こうは私を消そうとする。それに抗うために君たちを使うつもりだった。
捨て駒という意味では無いぞ。だが状況が変わった。
アレがたくさんいるとなると一般人の目を誤魔化すのは不可能だろう。特審も一般人を守るためSOPの秘匿を諦める。
それが一番良いが、そうでなくとも協力関係を作り騒動がおさまった後、交渉を持ちかける事もできるからな。君たちを使うという名目はあるが私が保護したかっただけだと思ってくれていい。
長話ですまなかったな。部屋に荷物を置いてゆっくりしているといい。何か分かれば連絡しよう」
そう言うと月城さんは研究室へ戻って行った。
ここまで読んでいただきありがとうございます。次回から3日に1話の投稿に変更いたします。よろしくお願いします。次回の投稿は8月10日です。




