第9話 マオ君は私のもの
今日も今日とて、マグノリアとマオは炊き出しの大盛りご飯を食べに来ていた。
「今日のご飯はちょっと物足りないわね」
「そうじゃの。何と言うか、大盛り加減が足らないのじゃ」
「マオ君は成長盛りというのにね。今日の配膳係の職員さんはクビにしようかしら笑。って、冗談よ」
聖女と言う職業は、各種さまざまな特権が認められている。教会職員さんの人事権もその一つであった。
冗談とは言ったものの、やろうと思えばコンマ一秒、指先一つで一方的な解雇が可能である。
「マグノリアよ。立場が下の者をやすやすと切り捨ててはならぬぞ。味方を増やすことを考えねばな。かつての我が軍と等しく先細りじゃ。スライム一匹でさえ侮ってはいかん」
「マオ君は本当に物知りね。尊敬するわ」
「我と同じ轍を踏ませる訳には行かぬからな」
マオの見た目は羊系ショタではあるが、れっきとした生まれたての魔王。含蓄のある数々の言葉に、マグノリアは幾度も納得させられている。
「ふふ、マオ君が居れば勇者を倒す(勇者の借金を踏み倒す)ことも出来そうね」
「我はしばらく遠慮したいぞ……」
「??」
そんなこんなで炊き出しを食べ進めていると、思わぬ人――『核火葬砲』の二つ名でお馴染み、シャーリー聖女がやってきた。
「お二人方、ちょっと失礼するわね」
「シャーリー聖女、おはようございます」
「おはよう、マグノちゃん。そしてマオ君♡」
「おはようなのじゃ」
シャーリーが炊き出し会場に姿を現したのは、これまで数える程しかない。
それなのに今日やって来たのは、マオに会う。それだけの為であった。
彼女はマグノリアと同様、重度のショタ好き。孤児院の所長を務めている責任者でもあり、子どもを笑顔にさせることだけを生きる悦びとしていた。
そんなシャーリーが最近密かに目を付けているのが、マオである。
真ん丸な瞳、真ん丸な顔、モッフモフのモフ。その全てが彼女の性癖にブチ刺さっていた。
叶うことならマグノリアから奪って孤児院で、いや、個人的に預かりたいと本気で思っている。
その為の足掛かりを作るために、わざわざ炊き出し場へやって来たのだ。
シャーリーは親密度アップを狙って、いきなり仕掛けた。自らの分の炊き出しをマオに差し出したのである。
「はい、マオ君。あーん♡」
「シャーリーよ、気が利くな」
――私のマオ君に何するの!
――このNTRメス豚がッ!
と、マグノリアは思わず手が出そうになる。
けれど、周りには庶民達の目があった。聖女として、元貴族令嬢として、暴力を振るうなどあってはならない。
そう、ここは言葉だ。
言葉でどちらが上かを分からせる必要がある。
次はマグノリアの仕掛けるターン。
「マオ君、私とシャーリー聖女のどっちが好き?」
「それは圧倒的にマグノリアじゃの。我はお主を好いておるし」
「シャーリー聖女はどう?」
「どうと言われてもの。単なる優しい聖女様じゃな」
――ほら見ろ。てめえは優しい止まりの女なんだよ!!
――単なる優しい聖女様ァ!!
ワカラセが完了し満足げな表情のマグノリアは、マオと手を繋ぎ炊き出し場を後にする。
一人残されたシャーリーは、味がしなくなった炊き出しの味を噛み締めながら心に誓った。
「マオ君は絶対に私のものにしますから」
◯作品コメント
『核火葬砲』のシャーリーを敵に回したマグノリア。
次回、シャーリーのターン!




