第28話 何か悪いこと
「マグノリアよ、我は悪いことがしたいぞ」
「突然どうしたのマオ君? 反抗期かしら?」
「そうかも知れんの」
朝イチから無抵抗にモフられているマオは突然、魔王としての本能が騒いだ。
しかし、幼きマオは善悪の区別がまだない。そのため、何が善い事で何が悪いことなのか。その判断がつけられなかった。
そこで、マグノリアに判断を仰いでみる。
「マグノリアよ。悪いこととは何じゃ?」
「うーん。難しいわね。確かに言えることは、犯罪は悪いことよね!」
「そうじゃな……。とは言えじゃ。魔王が人が犯す罪と同じ行為をしたとして、悪いことをしたと言えるのじゃろうか? それは人の真似事では無いのかの? 人にとっての悪は、魔王にとっての悪なのかの?」
今日のマオは凄く哲学的だ。
彼から、いつにも無い雰囲気を感じ取ったマグノリアは、無い脳みそをグルグルさせる。
「逆に犯罪では無いことをするのはどうかしら?」
「それでは普通に暮らすのと変わらんじゃろう?」
「確かに!」
「納得してどうするのじゃ!?」
世界で一番簡単なこと。それは、マグノリアを論破することである。
暖簾に腕押し感はあるが、マオの相談相手はマグノリアと決まっていた。その理由は彼への接し方が一番まともだから。
シャーリーは逃げようとすると神聖魔法で脅してくる。とっても火力が怖い。
アガサはモフりの勢いが怖い。四肢全体を器用に使ってモフりつつ、更に頬を擦り付けてくる。普通に引く。
よって、安定印のマグノリア以外に、気楽に相談ができる生物はマオの周りには居ない。
「悪い人が悪いことをするのは分かるわよ。だけど、魔王が悪いことするのは普通の事よね」
「そもそも人とは何なのじゃ?」
「そんなの簡単じゃない。労働基準法が適用されているのが人よ!」
「前々から思っておったが、その基準は何なのじゃ!?」
そんなこんなの問答をしばらく繰り返した結果、マオは明らかに悪い行為を一つ思いついた。
「そうじゃ!勇者を倒すことじゃ! 勇者を倒すことは、絶対に悪いことに違いないぞ!」
「流石ね!やはりマオ君は天才だわ!」
勇者を倒すという平和を脅かす発言をするマオを、マグノリアが止める訳が無い。
「勇者は我の大敵じゃ!定時後に我が魔王城に乗り込んで来たと思いきや、いきなり真っ二つにして来よった。許せんの!」
「私は二十億コロ借りただけなのに、手下が凄くつきまとってくるの。許せないわ! ストーカーよ! 変態なのよ!」
「うむ。やはり勇者は敵じゃの! そうと決まれば、悪は急げじゃ。勇者についての情報集めを始めようかの!」
「「おー!」」
こうして、『勇者を倒そう大作戦』が始まるのであった。
◯作者コメント
魔王としての本能が働いて、勇者を倒したくなったマオ。
果たして、勇者を倒す事は出来るのか!?
まずは、情報収集から進めていきます!




