第25話 いざ、隣町の大教会へ
――隣町の大きな教会前
「遂にこの日が来たわね!」
「のじゃ!」
マグノリアは今日まで、勉強の才能の無さを「これでもか!」とマオに見せつけてきた。
マオは最初は呆れていたが逆に熱が入り、今日に向けてマグノリアをバキバキに仕上げて来ている。
魔王がここまで手塩にかけて教えたのだから、聖女検定五級ごとき落ちる訳がない。
そもそも、五級というのは特段難しい検定では無く、合格率は八割を超えている。
大人が毎日努力を続ければ嫌でも合格点に達する程度のもので、まともに受ければ受かる。
「マオ君は外で待っていてね。この街の教会は大きいから、結界を割ったらタダ事じゃないわ!」
「うむ。分かっておるぞ。我のことは良いからとにかく合格するのじゃ」
「分かった。行ってくる!」
そうして、マグノリアは一人戦場(試験会場)へ向かった。
…
試験直前の待合室。
そこでは、なり立てホヤホヤの聖女達が、くだらないマウントの取り合い合戦を繰り広げていた。
「私ぃ、昨日は一秒も勉強できなかったわぁ」
「分かるー。私も彼氏が離してくれなくて。本当に嫌ー笑」
「五級とか、目つぶってても受かる自信あるくなーい?」
「「「それすぎる笑 m9(^Д^)」」」
マグノリアという人間は、鼻につく会話を聞くと黙っていられない。
『目には目を、マウントにはマウントを』の精神で、途轍もない大声で叫ぶ。
「あーーーー゛! 百億コロも払って聖女になったのは良いものの、最近の野良聖女の質は悪いわねー。これだから神聖魔法が使えるだけの聖女はダメなのよ!」
二十四歳にして、完全なる老害である。
待合室で一番年長である彼女の一声によって、その場は静まり返る。その後、試験が始まるまで誰も一言も喋らなかったと言う。
こうして、マグノリアだけが試験に落ちた。
(三点だった。)
…
「う゛え゛ええん! 落ちた゛ー! 私だけ落ちたの゛ー!!」
「うむ、予想通りじゃの。なでなで」
誰も知り合いが居ない隣町であることを良いことに、大きな教会のど真ん前でマオに泣きつくマグノリア。
マオはこうなることを何となく予想していた。彼女をバキバキに仕上げはしたのだが、合格出来るとかそういう次元では無かったのだ。
余りに大人気なく泣いているので心配した教会の職員さんが駆けつけて、小声で話しかけてくる。
「貴方は先ほど五級の試験を受けていらっしゃった、マグノリア聖女ですね。そこまで合格したいのであれば裏道もありますぞ」
「何ですって?」
「即金で一千万コロを寄付頂ければ、直ちに合格証書を発行致しましょう! ほら、あちらに『勇者金融』の隣町支店があるでしょう。あそこで借りるのです」
「ちょ、ちょっと考えさせて……」
「ええ、三分間待ちましょう」
聖職者とは思えない悪魔の囁きであった。
マグノリアにとって『勇者金融』とは敵地である。その支店に自ら赴き金を巻き上げ――
ではなく借りることは至難の技。
それに、この職員さんはマグノリアの直感的に少し怪しい。新たな『勇者金融』の手下ではないかと思われた。
「マオ君、どう思う?」
「うむ。コヤツの本心は分からぬが、我に考えがあるぞ。従ってくれるかの?」
「さすがマオ君! じゃあ、今回は甘えちゃうわ」
作戦会議を終えた二人は、再び職員さんと向かい合う。
「さあ、三分間待った。答えを聞かせて貰おう!」
「バルスじゃ!」
「それはッ!……一体何だ?」
「――は、ちと魔力不足じゃから無理として。一つ交渉したいのじゃ」
「え、ええ。聞きましょう」
「今から勇者金融で金を借りてくるでの、三十分で支度してこの場所に集合じゃ。お主は合格証書を持ってくるのじゃ」
「随分と物分りが良いですな、良いでしょう。一千万コロ、耳揃えて持ってきなさい」
そう言い捨てると、そそくさと教会の中に入っていく職員さん。
マオに全てを丸投げしたマグノリアは内心、「これって逆転合格になるのでは??」と楽観的に考えていた。
◯作者コメント
当たり前のように、マグノリアだけ落ちちゃいました、、
でも一千万の賄賂で資格ゲットのチャンス!
諦めるのはまだ早い!??(諦めろ)
何故かラピュタ風味に、、笑




