第22話 魔王の眷族
両者の賭けは、アガサの無条件降伏という形でマグノリアの勝ちに終わった。
そして、先ほどのアガサの契約魔法によって講和契約が結ばれたところであるが、契約内容は以下の通り。
一、アガサはマグノリアの言うことを何でも一つ聞くこと。
二、マグノリアはアガサに勝負中に行使した魔法の使い方を教えること。
「さて、契約も終わった。早速、例の魔法を教えてくれ」
「待ちなさい。魔法を教える為には、まず私の言うことを聞いて貰わないといけないの」
「分かった、早く言え」
「シャーリー連れてきて」
しばらくして、教会の外で待ってもらっていたマオを彼女が連れてきた。
「連れてきましたよ」
「ありがとう。さて、アガサ。貴方はこれから私が言うことを全て受け入れるの。それが契約よ、分かった?」
「ああ、そういう契約だからな。勿体ぶらないで早く言え」
咳払いを一つしてから、マグノリアはマオの秘密をアガサに告げる。
「まず、このマオ君は魔王です」
「何? こんなモフモフした羊の見た目のショタが魔王? 信じられんな」
「そして私が先ほど使った魔法は邪悪魔法でした」
「はぁ!? 確かに魔王だけが使える専用の属性魔法があると聞いたことはあるが……」
「だからね、アガサ。邪悪魔法を使いたければマオの眷族になりなさい!」
「なん……だと?」
アガサの優秀な脳ミソは、フル回転して思考を巡らせる。
──コイツが魔王?いや……ありえん
──だが、そもそも教会に魔王を連れ込むなんて大問題だ!
──マグノリアは既に魔王の手に落ちたのか?
──そういえば、シャーリーもマオを連れてきていたな。魔王側なのか?
──もしかしたら私以外の全員はマオの仲間?
──魔法が知りたい!どうしても知りたい!
──ええい。どうにでもなれッ!!!
色々なショックを短時間に受けたアガサは、少しでも大事にならないように事態を都合よく解釈した。
「嘘をつけ、マオは魔王ではない。だが、魔法を使うために眷族にはなろう。何も問題は発生していないッ!」
聖女長としての本来のあるべき姿は、事態を整理して聖女教会の本部に報告することである。
だが、アガサはマグノリアと契約をしてしまった。本部に報告すれば、マグノリアとの契約を破ることに抵触する可能性があった。
報告が出来ないのであれば、もう何も問題が起こっていない事にするしかない。
仮にマオが本当に魔王であったとしても、知らぬ存ぜぬを突き通す覚悟は既に済んでいる。
「問題はない! 問題は無いんだ。 問題は無いと分かった上で聞くのだが、本当にマオは魔王なのか?」
「ええ、マオ君は魔王よ」
「そうね、確実に魔王ね」
「うむ、我は先日復活した魔王であるぞ。魔王覇気を食らってみるかの?」
「いや、いい。さっき既に食らっているからな」
アガサはこの秘密を墓場まで持っていくことを心に誓った。
だが、神にだけは隠し事をすることは出来ない。
──ああ、神よ。魔王の眷族になることをお許し下さい。
その時、教会の女神像が光り輝いて「面白そうだから、オッケー!」と言ったような気がした。
だが、それが現実か幻覚かを確かめる術はアガサには無い。
◯作者コメント
聖女長のアガサがマオの眷族になりました!
アガサ、必死の自己暗示です笑




