第13話 滅びの◯ーストストリーム
うるうるとした瞳のマオは、マグノリア達をポコポコと叩きつつ、揺さぶり起こす。
「――ノリアよ、起きるのじゃ!」
「はっ!? 生きてる……」
聖女二人はほぼ同時に目を覚ました。
マオが浄化されずに居る状況から察して、神聖魔法の発動の食い止めに成功したようだ。
とは言え、一時的に食い止めただけである。
シャーリーを何とかして丸め込めなければ、再度暴走して神聖魔法を発動してしまう可能性はゼロでは無い。
マオはマグノリアにとっての生きる希望、活力そのものである。失う訳にはいかない。
「何か手を打たねば……」と考えたマグノリアは思いつきで提案をしてみる。
「シャーリー、私と交渉しましょう。マオ君が魔王であれ人間であれ、失いたくないのはあなたも同じ。利害は一致しています」
「つまり何が言いたいのかしら?」
「『マオ君モフモフ券(十枚綴り)』を発行しましょう! モフモフは撫でて良し、吸って良しです!」
「うげっ! そのようなもの勝手に発行するではないぞ」
「それは妙案!」とシャーリーは思った。
世界一のSPばりにガードが硬いマグノリアを突破して、マオをモフるのは至難の技。
誰にも邪魔されずに戯れることができるなんて、想像しただけでヨダレが垂れた。
「ジュル。それはとっても魅力的な提案ですね。一考に値します」
先程は魔王と聞いて反射的に火葬砲を撃ってしまったが、冷静になって考えてみれば、マオを神聖魔法で浄化するメリットはほとんど無い。
確かに魔王を倒せるかもしれないが、現状は全くもって無害。そうであれば、モフモフ出来た方が良いに決まっている。
例え星が滅ぼうと、滅ぶその瞬間にマオをモフモフ出来るのであれば、全ての他事は些事。
いっそのことマオに滅ぼされるなら本望とさえ、シャーリーは考えている。
(もちろん、聖女的には失格だ。)
極大の神聖魔法を行使した自らの愚かさを悔やみつつも、出来るだけマオ君と長く接触できるように策を練る。
「券ではダメね、年間パスポートにしてくださいな」
「吹っかけてきたわねー、話にならないわ。ね、マオ君?」
「話にならんのは、お主らじゃ!」
マオは小さなモフモフの体をジタバタさせて、必死に抵抗する。
そこで、シャーリーは彼を諭すように言う。
「冷静に考えてみて。モフモフ出来ない魔王なんて、百害あって一利無し。生かしておく必要が無いのよ? 選んで欲しいのだけどね、私に無制限にモフられるか、浄化されるまで神聖魔法を浴びるか、どっちがいいのかな?」
「なぬっ!?」
「クッ、魔王よりも魔王に近い聖女ね」
「何とでも言うが良いわ!力こそ正義なのよ!」
そう言い放つと、再び右手が神々しく輝き始める。シャーリーは先ほどの一発を再び打つつもりだ!
「あ゛ー!もう、分かったわよ私の負け。マオ君も良いわね」
「命には代えられないのじゃ……」
「交渉成立ね!笑」
…
ようやく落ち着いたので、目的だったクエスト達成に向けて動き出す。
『マオの無条件モフモフ権』を得た火力聖女は、鼻歌交じりで通りすがりの魔物を尽く浄化させながら突き進み、目的のダンジョンへとあっさり到着した。
今回のクエストは、このダンジョンの最奥に居るボスを倒すというものである。
「マグノちゃん、ここのダンジョンボスを倒すだけで三千万コロ貰えるのよね?」
「ええ、それでお家の代金はほぼ取り返せるんじゃないかしら」
「では、手っ取り早く終わらせます」
そう言うと、シャーリーは長々とよく分からない詠唱を開始した。
同時に先ほどとは比べものにならない神聖力が、彼女に集まってくる。
――ゴ、ズゴゴ
――ズ、ゴゴッゴッ、ゴゴゴゴゴ!!
――がガガガがガガガッがが!!!!!
地面は割れ、余波だけで木々がなぎ倒れる。近くに居たスライムは一瞬で灰になった。
「マグノリアよ、逃げるのじゃ!」
「賛成!急ぎましょう!」
物陰に隠れた二人は、背筋をビクビクさせながら地面に這いつくばるしかない。
目の前に太陽があるような、途轍もない圧。
それが今まさに、ダンジョンの入り口に向けて全放出されようとしていた。
「アーク!ディバイン・レイ!!!」
――キーーーーーーーーン!!!
――ドガアァアアアン!!!!!!
ダンジョンの入り口とほぼ同じ大きさである、半径五メートルほどの光の束が放たれる。
まさに、神の裁き。
それ以外に例えようがない。
数分後、砂ぼこりが晴れた時には、ダンジョンは跡形なく消え去っていた。
「クエスト完遂!簡単ね!」
その光景を見たマオは、一生シャーリーに逆らわないことを心に誓った。
「わ、我の全盛期よりも強いのじゃ……泣」
◯作者コメント
ダンジョンボスを倒すのではなく、ダンジョンごと倒しちゃいました笑
クエスト達成!
流石、『核火葬砲』のシャーリー!




