第11話 お金を集めよう
毎夜毎夜、シャーリー家のキッチンから直結しているダクトによって、美味しそうな匂いが直送されてくる。
炊き出し場で一日一食しか食べていないマグノリア達であるが、毎日『突撃隣の晩御飯』をするのは良くないと思い、「ここぞ!」という日に限って出向くと心に決めていた。
しかし、カレー!ペペロンチーノ!と連日続いて「ここぞ!」が来てしまう事件が発生。
(シャーリーによる意図的な飯テロ)
今日もきっと出向くことになるのだろうと内心諦めつつ、匂いが来るのをじっと待っていた。
「今日は来ないわね」
「来ないのじゃ」
「もしかしたら何かあったのかもしれない」
「気になるのじゃ。見に行くかの?」
「そうしましょう!」
そうして、二人は『マオ君との愛の巣♡』もとい、シャーリー宅へと向かった。
…
「お邪魔するのじゃ」
「入るわよ」
「いらっしゃーい……シクシク」
家に訪れた二人を待っていたのは、もやし炒めをつまみに大酒を飲むシャーリーだった。
「一体どうしたの!?」
「もう、やけ酒よー……シクシク」
わざわざ隣に引っ越し、連日手料理を振る舞ったにも関わらず、マオは相変わらずマグノリアの手の内にある。
それに、元々お金持ちでも無い彼女は、五十年ローンでこの家を購入していた。
先が見えない不安に突然襲われたことにより、お酒を飲む以外の行動が出来なくなるデバフがかかっていたのである。
「ちょっと飲み過ぎよ」
「マグノちゃん、愚痴聞いてくれる――」
酒臭い息を浴びながら事情を聞いたマグノリアは、「悩みがドブくらい浅っせえな」と思った。
しかし、貴重な夜ご飯係をここで失う訳には行かない。
要するにお金だ。家のローンを返してさえしまえば、元の聖女シャーリーに戻るはず。
何より、マグノリア達の胃袋は、シャーリーの手料理によってガッチリと掴まれていた。
「マオ君、私に手っ取り早くお金を稼ぐ作戦があるの。協力してくれる?」
「それは勿論良いがの。そのような方法があるのなら、お主は何故今まで借金を返しとらんのじゃ?」
――っっ!?
マオによる鋭利な刃物の様な正論に、思わずヤケ酒をあおるマグノリア。
涙も二滴零れたが、彼女はシャーリー程打たれ弱くはない。
お金が無い程度のことでは、マグノリアの毛が生えた心を折ることは出来ないのだ!
「マオ君、それはね。私には出来なくて、シャーリー聖女には出来る方法があるのよ」
…
次の日、炊き出し場で三人仲良く朝食(大盛)をとった後に向かったのは――街を囲む結界の外。
結界の外というのは即ち、魔物が闊歩している環境ということを意味している。
魔物というのは魔素が集まって生まれるものであるが、倒しても魔素自体が消滅する訳では無い。
時間経過と共に徐々に集まってきて、ある時突然魔物として発生する。魔王であるマオも例外ではなく、数十年かけて復活を果たした。
「この辺りは、大した魔物はおらんの」
そのマオを先頭にして、三人は目的地へと突き進む。目指すのは、冒険者ギルドでクエストが掲載されていたとあるダンジョンである。
「マオ君、私とっても帰りたいのだけど」
魔王であるマオと、魔物の弱点である神聖魔法が使えるシャーリーはさておいて、マグノリアは正真正銘の丸腰であった。
運動神経も悪いので、もし野良スライムを誤って踏んづけてしまえば、たちまち足は消化されてしまう。
「マグノリアよ、落ち着くのじゃ。我も魔王レベル壱じゃがの。この辺におる魔物ならば我の魔王覇気で逃げ出すに違いないぞ」
「ん? 今魔王と言ったの? 聞き間違えかしら?」
「あ……」
マオが魔王であることが、シャーリーにバレてしまった。
◯作者コメント
街の結界は蚊取り線香レベルの魔物避けのため、普通にマオは通過できますし、割れる事はありません!
教会の結界は強力だったので、マオが通過したことで割れて警報が鳴りました。
(無駄な世界観作り込み、、笑)
次回、シャーリーの魔王退治!




