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■第29話「君と交わした嘘」
夜が深まり、ようやく追手の気配が遠のく。
二人は大きな木の根元に腰を下ろした。
しばらくの間、言葉はなかった。
呼吸を整えるだけで精一杯だった。
やがて、リナが静かに口を開く。
「約束……覚えてる?」
戦争が終わったら、遠くへ行こう。
あの時の言葉。
レイは苦く笑う。
「叶いそうにないな」
現実は、それどころではない。
追われる身となった今、そんな未来は遠すぎる。
それでもリナは、首を振った。
「それでも、信じたい」
その言葉に、胸が締め付けられる。
あれは嘘だった。
叶うはずのない約束。
それでも――
「……ああ」
レイは小さく頷く。
「嘘でもいい」
その一言に、すべてが込められていた。
君と交わした嘘。
それが、今の二人を繋いでいる。




