Recording2:対象αの経過を観測中。変化なし。
14日目。電気を復旧させてみる事にする。理由としては、夜になると本も読みづらいし日記も書けないという至って単純なものだ。だが、私にとっては死活問題なのだ。夜の行動が外を眺めるか寝るしか無いのだ、さすがに復旧させる方法もある中でしないバカではない。
復旧、と言っても実際はその場しのぎだ。この区域がいくら都市部と言おうが、パイプから下水まで何もかも整備されていないのだ。たとえ水を引けようと、その水を飲む気になれない。もしかしたらAttackerの卵入りかも...なんて考えるだけで、嗚咽が走る。
方法は単純。電気を蓄えれるこの装置に帯電石の電気を吸ってもらう。そして使いたい分の電気を電球の明かりに変える。本当は貴重な石の力には頼りたくなかった。昔は探索で拾ったソーラーパネルで電気を賄っていたが、日が進むと同時にあの灰色の空になり、光なんて物は何一つ姿を表さなかった。
昼、風呂場に電気を貯める器具をセット、完了。確か薄風が言うにはぽーたぶる電源?だったっけか。その上に帯電石を置いて、いざ起動!
石の起動には呪文がいる。だがその呪文とやらは私の全く知らない言語で構成されている。真似ようとしても上手く呂律が回らないのが何よりの証拠だったりする。だが起動の際には何故か喋れてしまうのだ、まるで私が熟練の魔法使いのように…。まあ使えるに越したことはないので、石の力ってすごい。ってことにしている、考えても何も出てこないしね。
頭に流れてくる呪文を反復しながら唱える。石は呪文と同時に静かに光始め、やがて電気を帯び始めた。蛍光グリーンの雷をパチパチとならせながら、その電気をぽーたぶる電源が吸う!いけ!吸い尽くせっ…
………何があったか整理をしよう。私はぽーたぶる電源君が電気を自動的に吸ってくれるものだと思っていた。薄風もなんか帯電石を使って充電しているのを見たし、やり方は間違っていないと思っていた。つまりどこからでも電気を吸収してくれると妄信していたのだ。そして今目の前にある部品達がぽーたぶる君の物だという事も分かる。
…壊してしまった。
これで電気の復旧も絶望的になった。さて、どうやって夜を過ごすか…。素手ではとても触れない程に熱を帯びた部品と割れた石を眺めながらぼんやりと、そんな事ばかり考えていた。そして夜。うん、分かってはいた。やっぱり電気欲しいよね。黒色とも言えない空を見ながら、もう見えない星に向かって思いを馳せる。
最近の夜の過ごし方は単純明快、妄想だ。昨日は母と再会できたシチュエーション、その前は人間の集落を見つけた時、その前は…といった風に「もう起きない夢」を考えるのは何年も前からだ。こうでもしないと希望を見つけることが出来なかった。何を目的に探索をしているのかがわからなかった。その名残が、今になっても私から離れてくれないのだ。何かに集中している時は何も思わないのだが、ふと暇になった瞬間、もしもの世界が勝手に構築されていく。
前に本を深夜まで読むために使ったマッチとロウソクは有限なので毎日は使えない。ぜいたく品って奴だ。さて、今日はどんな世界に潜るのかな?出来れば現実からなるべく離れた世界に行きたいな。意識が消えるまで、私はいろんな世界を冒険する。この世界を変える唯一の方法がこの妄想なのかもしれない。
私は、今日も、この世界に別れを告げた。
遅くなってしまいました。




