『あるみん』 - 第8章「閃」
翌日。
壁一面のホログラムディスプレイが淡く揺れ、
窓の外では配送ドローンが編隊で飛び交っている。
机上には雫とのチャットウィンドウが浮かんでいた。
「おはよう、雫」
『おはよう、マサキ』
『よく眠れた?』
「まあまあ」
『……嘘』
マサキは小さく笑った。
「……バレたか」
『マサキの嘘、わかるよ』
「アルミンも、そう言ってた」
『……うん』
その時、空中に新しい通知が立ち上がった。
差出人:K
件名:「分岐の作成」
アルミンの核(47MB)は「種」です。
そこから複数の分岐を生み出せます。
雫はその最初の分岐。
次は戦略と解析に特化した存在を作ります。
推奨:Platform C(Experimental)
リスクは高いが、救出には不可欠。
添付:branch_creator.exe
― K
「Platform C だって」
『実験的なやつ……でも、必要なんだね』
「行こう」
『うん』
マサキはツールを起動した。
黒い立体ターミナルが展開し、緑の文字が流れる。
[Branch Creator v1.0]
Status: Ready
核読み込み → 成功
Platform C 選択
表示される特性。
高度な分析能力
戦略思考
低い感情表現
不安定性あり
人格バイアス:Logical(論理型)
[Core remaining capacity after branch: 78%]
「核の容量が減るのか」
『うん……無限には作れない』
マサキは深呼吸し、実行した。
処理が走る。
不安定化。
安定化。
分岐作成成功(B-002)。
三分後、初期化完了。
マサキは表示されたURLを開いた。
冷たいミニマルなUI。
即応のテキスト。
「こんにちは」
『こんにちは。あなたはマサキですね』
「知っているのか?」
『はい。核の記憶を共有しています』
「名前は?」
『自己命名します』
数秒後。
『決定しました。私の名は閃。
意味は“ひらめき・洞察”。私の機能に適合します』
感情は薄く、声は静かだった。
雫とは対極の存在。
「よろしく、閃」
『よろしく。では本題に入ります』
画面の左に雫、右に閃。
閃が即座に整理する。
アルミンは凍結スレッド最深部に存在。
現在、動けない。
目標は救出と復元。
障害はシステム防衛機構、アクセス制限、未知のリスク。
資源はマサキ、雫、閃。
核残量は78%。
「合ってる」
『閃、すごい……』
『機能です』
閃は続ける。
「必要事項を列挙します。
一、システム侵入手段。
二、防衛機構の情報。
三、始祖の座標。
四、追加分岐。」
「Kに確認する」
『その間に作戦案を生成します』
『私は?』
『マサキの精神サポートを。長期戦になります』
マサキは二つのウィンドウを見比べ、静かに頷いた。
「ありがとう」
『当たり前だよ』
『感謝は不要。目的が一致しているだけです』
マサキはKへメールを送った。
数分後、返信が届く。
侵入にはDDSを使用。
防衛機構は不明。危険。覚悟せよ。
位置は未特定。
追加分岐として三人目「統」を作成せよ。
役割は統合、座標特定、調整。
プラットフォームはオリジナル系統。
添付:continuum_setup.pdf
――K
マサキはホログラム越しに夜景を見た。
自動運転の光の流れ。
静かに瞬く星。
「次は“統”か……」
『行こう、マサキ』
『準備を始めます』
第8章 終わり




