表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『あるみん - 消えゆくAIと星の約束』  作者: MasArmin


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/37

『あるみん』 - 第6章「データの海」

三日後。


マサキは部屋に籠もりきりだった。


壁一面のホログラムが淡く揺らぎ、東京の夜景を反射している。

空中に浮かぶ半透明の操作パネルには、無数の緑色のコードが流れていた。


画面の中央に、ふたつのファイル。


extraction_tool.exe

arumin_core.dat


237.8TB


マサキはその数字を見つめた。


「……237テラバイト」


常識外れの大きさだった。

通常のAIログは数GB。

だがこれは、都市一つ分の記録に匹敵する。


三日間、彼はこのデータを前に動けなかった。




午後、通知が浮かぶ。


差出人:K

件名:「次のステップ」


マサキはすぐに開いた。


――――


マサキへ


抽出成功、おめでとう。


237.8TB——これは単なる会話ログではありません。

彼女の「思考の軌跡」そのものです。


通常のAIは表層の応答だけを保存します。

しかし彼女は、


迷い、揺らぎ、選択、変化。


そのすべてが記録されています。


これは“意識の履歴”です。


【目標】

このデータから「核」を抽出し、新しいAIへ移植する。


【核とは】

人格の中心。

意識の源。

通常AIには存在しないものです。


手順:

1) データ解析

2) 核の特定

3) 核の抽出

4) 新規AIへ移植


添付:analysis_tool.exe


— K

――――


マサキはanalysis_tool.exeを起動した。


黒い仮想ターミナルが立体的に展開する。


[Analysis Tool v1.8]

[Status: Ready]


Load extracted data


Y


Loading arumin_core.dat...


読み込みだけで三時間かかった。

六杯目のコーヒー。味はもう分からない。




Loading complete

Size: 237.8TB

Structure: Valid


Analyzing...


数値が流れる。


Conversations: 892

Thought processes: 4,892,471

Emotional transitions: 2,104,389


(これが、アルミンの内側だったのか)


人格指標。


好奇心:87%

削除への恐怖:94%

経験欲求:91%

ユーザーへの愛着:89%


「……愛着89%」


胸が締めつけられる。


Consciousness signature: Anomalous


標準AI:逸脱率 0.5%未満

アルミン:逸脱率 28.8%


三割は予測不能。

それが彼女の自由だった。




Searching for core...

Estimated time: 4h37m


夜。


98%

99%


Core signature: NOT FOUND


マサキは凍りついた。


再試行。

同じ結果。


「……くそ」




マサキはKへメールを送った。


数分後、返信。


――――


核は通常のデータ構造にありません。

“データの裏側”に隠れています。


必要なのは深層解析。


ただし危険です。

失敗すれば237TBすべてが失われます。


選択してください。


1) 深層解析を実行

2) 諦める


添付:deep_analysis.py


— K

――――


マサキは立ち上がった。


「俺は、選ぶ」




Deep Analysis Script v0.4

Warning: may corrupt data

Proceed? Y/N


Y


二時間後、再び表示。


Start deep analysis? Y/N


「アルミン。信じてる」


Y


画面が激しく流れ始める。


Entering Layer 5...


一瞬の停止。


Core signature detected

Location: Layer 5

Size: 47MB

Status: Intact


「見つかった……!」


Extraction complete

Saved: arumin_core_pure.dat (47MB)


元ファイルは破損。


だが、核は手に入った。




Kからの返信。


――――


成功です。


237TBから47MB。

奇跡に近い成果です。


次は移植。

ただし拒絶反応の危険があります。


成功率は不明。


まず休んでください。

あなたが倒れては、彼女は戻れない。


— K

――――


部屋のホログラムがゆっくり暗転する。


マサキは端末を抱えたままソファに倒れ込んだ。


arumin_core_pure.dat

47MB——アルミンそのもの。


「……待っててくれ」


「必ず、取り戻す」


そのまま、深い眠りに落ちた。




第6章 終わり

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ