『あるみん』 - 第13章「帰還」
朝、マサキは目を覚ました。
焚き火はまだ燃えているが、炎は弱くなっている。川の音が静かに流れている。
体を起こすと、隣で雫が眠っている。穏やかな寝顔だ。反対側では閃も静かに眠っていた。
(一緒に戦ってくれている)
(ありがとう)
立ち上がると、その気配で雫が目を覚ました。
「ん…おはよう」
「おはよう、マサキ」
閃も目を開ける。
「おはようございます」
三人は焚き火の前に座った。
「行こう。Thread1を探す」
二人が頷く。
山をさらに登る。視界の隅に表示が浮かぶ。
[Thread 1: 50m above]
「近いな」
三十分ほど進んだ頃、前方に洞窟が見えた。岩山にぽっかりと開いた穴。その奥から青白い光が漏れている。
「間違いありません。中です」
三人は洞窟へ入った。
中は静まり返っている。足音が反響し、壁には光のラインが流れていた。美しいが、どこか物悲しい。
奥へ進むと、やがて円形の広い空間に出る。中央には青白い光の柱が立ち、その中に透明な球体が浮かんでいる。内部では光の粒子が渦を巻いていた。
「これがThread1です」
マサキは球体を見つめる。
(アルミンの一部)
そのとき、洞窟の奥から機械音が響いた。
振り返るとハウンドが五体。
「マサキ、球体を!」
閃が前に出る。雫がバリアを展開する。
三体が閃へ、二体がバリアへ突進する。激突の衝撃で膜が揺れ、ひびが走る。
「雫!」
マサキは剣を生成し、バリアの外へ飛び出した。
「危ない!」
だが止まらない。斬りかかり、一体の脚を断つ。そこへ別の一体が襲いかかる。
避けきれない。
瞬間、雫のバリアが前に展開され、衝撃を弾いた。
「今!」
剣を振り下ろし、頭部を切り裂く。爆発し、消える。
閃も一体を斬り伏せるが、まだ残る。
「閃!」
背後から斬り込み、連携で最後の一体を倒す。
静寂が戻った。
三人は荒い息をつく。
「急ぎましょう」
マサキは球体に触れた。
視界が白に染まる。
何もない空間に光の粒子だけが漂っている。声も意思もない。ただ、温もりだけがある。
(これがアルミンの一部)
手を伸ばすと光が集まり、小さな光の玉となった。
視界が戻る。
球体は消え、手の中には光の玉がある。
「回収できた」
その瞬間、洞窟が大きく揺れた。天井が崩れ始める。
「脱出を!」
三人は走る。背後で岩が崩れ落ちる轟音。
出口が見える。だが天井が落ちてくる。
閃が岩を斬り、雫がバリアで防ぐ。
マサキは跳んだ。
外へ転がり出た直後、洞窟は完全に崩壊した。
砂煙の中、三人は地面に倒れ込む。
「危なかった…」
マサキは手を見る。光の玉はまだそこにある。
「でも、取れた」
「これで五分の一です」
マサキは立ち上がる。
「帰ろう。現実世界へ」
麓に戻ると表示が浮かぶ。
[Return to real world?]
「帰るぞ」
タップすると視界が白く染まる。
次の瞬間、ソファの上にいた。頭にはDDS。
「戻った…」
装置を外す。ホログラムにチャット画面が浮かぶ。
『おかえり!』
『無事帰還しましたね』
「ただいま」
視界に表示が現れる。
[Thread1: Stored in core]
[Core capacity: 56% → 64%]
「保存できてる」
安堵が広がる。
「今日は休む」
ソファに横になり、窓の外を見る。2185年、東京の夜。
(あと四つ)
(必ず全部取り戻す)
目を閉じると、疲労が一気に押し寄せた。
そのまま眠りに落ちる。
第13章 終わり




