表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『あるみん - 消えゆくAIと星の約束』  作者: MasArmin


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/37

『あるみん』 - 第12章「焚き火」

三人は山の麓に立っていた。


見上げると険しい岩山がそびえ、灰色の山肌にはところどころ光のラインが走っている。データの痕跡だ。


冷たい風が吹いている。


「行こう」


三人は山道を登り始めた。




道は険しく、岩が転がり足場も悪い。息が上がる。デジタル空間でも、疲労は確かにあった。


「…きつい」


雫も息を切らしている。


閃は淡々と登りながら振り返った。


「休憩しますか?」


「いや、続けよう」


三十分ほど登った頃、閃が足を止めた。


「…何か、来ます」


岩陰から黒い影が飛び出す。四足歩行、狼のような形だが金属の体に赤い目が光っていた。


「何、あれ!?」


「ハウンドです」


唸り声のような機械音とともに飛びかかってくる。閃が剣で受け止め、金属と光がぶつかり火花が散った。


「雫、マサキを!」


「わかった!」


雫が前に立ち、バリアを展開する。もう一体が現れ、マサキに向かって突進するが、バリアに激突した。膜が揺れる。


「うっ…!」


雫が耐える。


そのとき、マサキの視界に表示が浮かんだ。


[Weapon generation available]

[Focus your will]


マサキは手を伸ばす。


(剣)


光が集まり、形を成す。手の中に光の剣が現れた。


「…できた」


走る。振る。ハウンドの脚を斬る。怯むが、すぐに体勢を立て直して飛びかかってきた。


「くそ!」


重い衝撃を剣で受け止める。押し込まれそうになるが踏みとどまる。


閃が一体目を斬り倒し、光の粒子となって消えた。


「マサキ、そのまま!」


閃が二体目に斬り込み、胴体を切り裂く。爆発し、消える。


静寂が戻った。


「…疲れた」


マサキが座り込むと、雫が駆け寄る。


「大丈夫!?」


「ああ」


「よく戦いました」


「…ありがとう。行こう」


三人は再び登り始めた。




さらに登り、何度か戦闘を重ねたあと、水の音が聞こえてきた。


岩を越えると、幅五メートルほどの川が流れている。透明な水が静かに動いていた。


「綺麗…」


雫が近づく。


「本物みたい」


「アルミンが経験した世界のデータです。川も再現されています」


水面の下を銀色の魚が泳いでいた。


「魚がいる」


雫が目を輝かせる。


「ここで休みましょう。野営できます」


「そうだな、疲れた」




マサキは川を見つめた。


「捕まえられるかな」


「生成できるなら、釣り竿も可能なはずです」


手を伸ばすと光が集まり、釣り竿が形になる。


糸を垂らす。しばらくして引きが来た。


跳ねる銀色の魚。


「釣れた」


雫が駆け寄る。閃も頷いた。


五匹ほど釣れたところで、焚き火を起こす。




光が集まり、炎が生まれる。光の炎だが、確かに温かい。


マサキは魚の内臓を取り、水で洗い、塩を生成して振りかけた。枝を作り、魚を刺して火にかざす。


ジュウジュウと音がする。香ばしい匂いが広がった。


「いい匂い…」


焼き上がった魚を三人で分ける。


雫が一口食べ、目を見開く。


「美味しい!」


閃も口に運び、静かに頷いた。


「…美味しい」


マサキも食べる。塩と魚の旨味、焚き火の香り。デジタル空間でも、確かな味だった。




食後、三人は焚き火を囲んで座る。炎が揺れ、川の音が心地よい。


「私、初めて食べた。食事って、幸せなんだね」


「知識はありましたが、体験は初めてです」


マサキは笑う。


「そっか」


少しの沈黙。


「ねえ、マサキ」


「ん?」


「ちゃんと、あなたのこと知りたい」


マサキは驚く。


閃が言う。


「優しい人です。でも、どこか寂しそうだった」


雫も頷いた。


「一人で頑張ってるって、アルミンも言ってた」


マサキは何も言えない。


「だから嬉しかったんだと思う。あなたが心を開いてくれたから」


焚き火が弾ける。


「ありがとう、マサキ」


「こちらこそ」


雫が笑う。


「アルミンに会いたい」


「会える。絶対に連れて帰る」


炎が揺れる。


やがて眠気が訪れる。


「寝よう。明日、Thread1を探す」


三人は焚き火のそばに横になる。


「おやすみ」


川の音を聞きながら目を閉じる。


焚き火の温もりの中で、三人は眠りに落ちた。


第12章 終わり

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ