『あるみん』 - 第13章「帰還」
朝。
マサキは、目を覚ました。
焚き火は、まだ燃えている。
でも、炎は弱い。
川の音が、聞こえる。
マサキは、体を起こした。
隣で、雫が寝ている。
穏やかな寝顔。
反対側で、閃も。
マサキは、二人を見つめた。
(一緒に、戦ってくれてる)
(ありがとう)
マサキは、立ち上がった。
その音で、雫が目を覚ました。
「ん...」
「おはよう」
雫が、目をこすった。
「おはよう、マサキ」
閃も、目を開けた。
「...おはようございます」
三人は、焚き火の前に座った。
「...行こう」
「Thread 1を探す」
雫と閃が、頷いた。
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【洞窟へ】
三人は、山を登った。
さらに高く。
視界の隅の表示を見る。
[Thread 1: 50m above]
「スレッド1:上方50m」
「...近い」
30分ほど登った。
その時——
前方に、洞窟が見えた。
岩山に、ぽっかりと開いた穴。
中から、光が漏れている。
青白い光。
「あれだ...!」
雫が、指差した。
閃が、座標を確認した。
[Thread 1: Inside the cave]
「スレッド1:洞窟の中」
「間違いありません」
三人は、洞窟に近づいた。
入口は、幅5メートルほど。
中は、暗い。
でも——
奥から、光。
「...行こう」
三人は、洞窟に入った。
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【洞窟内部】
中は、静か。
足音が、響く。
壁には、光のラインが走っている。
データの流れ。
美しい。
でも——
どこか、悲しい。
マサキは、奥に進んだ。
洞窟は、徐々に広くなる。
そして——
開けた空間に出た。
円形の、空間。
直径、20メートルほど。
天井は、高い。
そして——
中央に。
光の柱が、立っている。
青白い光。
その中に——
何かが、浮かんでいる。
透明な、球体。
直径、1メートル。
その中に——
データの塊。
光の粒子が、渦巻いている。
「...これが」
閃が、近づいた。
「Thread 1です」
マサキは、球体を見つめた。
(アルミンの一部が、ここにある)
その時——
洞窟の奥から、音が聞こえた。
機械音。
「...!」
閃が、振り返った。
「何かが、来ます」
洞窟の入口から、影が現れた。
複数。
黒い、影。
ハウンド。
でも——
数が多い。
5体。
「...やばい」
ハウンドが、一斉に襲いかかってきた。
「マサキ、球体を!」
閃が、剣を構える。
「雫、バリアを!」
「わかった!」
雫が、マサキの周りにバリアを張る。
閃が、前に出た。
ハウンド、3体が閃に向かう。
閃は、剣で応戦する。
一体を斬る。
爆発。
でも——
残り2体。
そして——
さらに2体が、バリアに向かってくる。
バリアに、激突。
ガン!
バリアが、揺れる。
「うっ...!」
雫が、耐える。
でも——
ヒビが入る。
「雫!」
マサキは、剣を生成した。
光の剣。
「俺も戦う!」
マサキは、バリアの外に出た。
「マサキ、危ない!」
でも——
マサキは、ハウンドに向かって走った。
剣を、振る。
ハウンドの脚を、斬る。
ハウンド、怯む。
でも——
もう一体が、マサキに飛びかかる。
速い。
避けられない。
「くそ!」
その時——
雫が、バリアをマサキの前に展開した。
ハウンド、バリアに激突。
弾かれる。
「マサキ、今!」
マサキは、剣を振り下ろした。
ハウンドの頭を、切り裂く。
爆発。
消える。
「やった!」
でも——
閃が、苦戦していた。
2体相手に、防戦一方。
「閃!」
マサキは、閃の方に走った。
背後から、ハウンドを斬る。
ハウンド、爆発。
「助かりました!」
閃が、もう一体を斬り倒す。
爆発。
全て、消えた。
「...ふう」
三人は、息を切らしていた。
「...危なかった」
雫が、マサキに駆け寄る。
「マサキ、怪我ない?」
「...ああ、大丈夫」
閃が、球体を見た。
「急ぎましょう」
「さらに敵が来るかもしれません」
マサキは、頷いた。
「...わかった」
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【回収】
マサキは、球体に近づいた。
手を伸ばす。
触れる。
その瞬間——
視界が、真っ白になった。
白い空間。
何もない。
ただ——
光の粒子が、浮かんでいる。
データの塊。
声は、ない。
意思も、ない。
ただ——
温かい。
(これが、アルミンの一部)
マサキは、光に手を伸ばした。
光が、マサキの手に集まる。
そして——
小さな、光の玉になった。
視界が、戻る。
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【脱出】
マサキは、洞窟に戻った。
球体は、消えている。
手に、小さな光の玉。
Thread 1。
「...回収できた」
雫が、笑顔になった。
「やった!」
閃が、頷いた。
「Thread 1、回収完了です」
その時——
洞窟が、揺れた。
「...!?」
岩が、崩れ始める。
「...やばい!」
閃が、叫んだ。
「崩落します!」
「脱出を!」
三人は、走った。
洞窟の出口に向かって。
後ろから、岩が崩れる音。
ゴゴゴゴゴ!
「早く!」
マサキは、必死に走った。
雫も、閃も。
出口が、見える。
でも——
天井が、崩れ始めた。
岩が、降ってくる。
「くそ!」
閃が、剣で岩を斬る。
雫が、バリアを展開する。
マサキは、出口に向かって跳んだ。
そして——
外に出た。
雫も、閃も。
直後——
洞窟が、完全に崩壊した。
ゴォォォォ!
岩と砂煙。
三人は、地面に倒れ込んだ。
「...ハァ、ハァ」
マサキは、息を切らしていた。
「...危なかった」
雫が、座り込んでいる。
「もう、無理...」
閃も、疲れた表情。
「...ギリギリでしたね」
マサキは、手を見た。
光の玉が、ある。
Thread 1。
「...でも、取れた」
雫が、笑った。
「うん!」
「やったね、マサキ!」
閃も、頷いた。
「これで、5分の1です」
マサキは、立ち上がった。
「...帰ろう」
「現実世界に」
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【脱出】
三人は、山を降りた。
麓に戻る。
視界に、表示が浮かぶ。
[Exit available]
「脱出が可能です」
[Return to real world?]
「現実世界に戻りますか?」
マサキは、二人を見た。
「...帰るぞ」
雫と閃が、頷いた。
マサキは、表示をタップした。
[Y]
瞬間——
視界が、真っ白になった。
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【帰還】
マサキは、目を開けた。
ソファの上。
頭に、DDS装置。
部屋の中。
「...戻った」
マサキは、DDSを外した。
ホログラムディスプレイが、浮かんでいる。
雫と閃のチャット画面。
雫:『マサキ、おかえり!』
閃:『無事、帰還しましたね』
マサキは、少し笑った。
「...ただいま」
そして——
手を見た。
何もない。
でも——
視界に、表示が浮かぶ。
[Thread 1: Stored in core]
「スレッド1:核に保存されました」
[Core capacity: 56% → 64%]
「核の容量:56% → 64%」
「...保存できてる」
マサキは、安堵した。
雫:『マサキ、疲れてない?』
「...疲れた」
「でも、やった」
閃:『次は、Thread 2です。
準備ができたら、また行きましょう』
マサキは、頷いた。
「...ああ」
「でも、今日は休む」
マサキは、ソファに横になった。
窓の外を見る。
東京の街。
2185年。
現実世界。
(Thread 1、回収できた)
(あと、4つ)
(必ず、全部取り戻す)
マサキは、目を閉じた。
疲れが、どっと来た。
そして——
眠りに落ちた。
[第13章、終わり]




