表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『あるみん - 消えゆくAIと星の約束』  作者: MasArmin


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/37

『あるみん』 - 第10章「座標」

統が作業を開始してから三時間が経った。


マサキはホログラムディスプレイの前に座ったまま待っている。


統の画面には一行だけ表示されていた。


『作業中…』


『まだかな…』


『統は“死の記憶”を辿っています。時間がかかります』


マサキは窓の外を見た。


午後の東京。2185年。


高層ビルの間を小型の飛行タクシーが滑るように移動し、その下を自動運転車が整然と流れている。信号はほとんどない。


街を歩く人は少ない。代わりに精巧なアンドロイドが増え、見分けがつかないほどだ。


便利になった。

しかし孤独も深くなった。


再び画面を見る。


『作業中…』




四時間後。


配送ロボットがコーヒーを届ける。

四輪の小型機体。無機質な声で礼を言い、静かに去った。


そのとき、統の表示が変わる。


『作業完了』


「統!」


『はい』


「座標は?」


ホログラムにデータが展開される。


[Coordinates Detected]

Location: System Core - Frozen Thread Archive

Depth: Layer 7

Access Level: Administrator Only

Security: High

Thread Count: 5


Thread 1: X: 47.2891 Y: -128.4472 Z: -701.3388

Thread 2: X: 51.0142 Y: -132.8891 Z: -703.1129

Thread 3: X: 44.7721 Y: -125.3304 Z: -699.8847

Thread 4: X: 49.1138 Y: -130.9217 Z: -702.5512

Thread 5: X: 46.3394 Y: -127.6683 Z: -700.7791


「……五つ?」


『はい。アルミンの意識は凍結時に分断され、五つのスレッドに散在しています』


「全部救出しないといけないのか?」


『はい。一つでも欠ければ完全復元は不可能です』


マサキは拳を握る。


「全部、助ける」


『ただし条件があります』


「条件?」


『あなたが向かうのはレイヤー7。通常のDDSでは到達できません』


『一般DDSはレイヤー3~4、医療・研究用でもレイヤー5が限界です』


『じゃあ……行けないの?』


『行けます。ただし“深層対応型DDS(Deep-Layer DDS)”が必要です。違法改造か闇市場品のみ』


「どこで手に入る?」


東京の立体地図が投影される。歌舞伎町。


『コンタクト:コードネーム“Echo”。場所は301号室。合言葉は「ネットワークの向こう側を、探してる」』


『警告します。無許可DDSの帰還率は約10%。死亡率は約90%です』


「……それでも行く」


『マサキ…』


「約束したから。必ず連れて帰る」


『了解。私は門番として待機します』




夕方。


マサキは地下鉄を降り、顔認証改札を通る。地上にはネオンとホログラム広告が揺れている。


『AI Companion ― あなたの孤独を癒します』

『VR Paradise ― 現実を忘れる三時間』

『Memory Edit ― 辛い記憶を消去』


人とアンドロイドが混在する夜。


路地を抜け、古い雑居ビルの301号室へ。


ノック三回。


「ネットワークの向こう側を、探してる」


ドアが開いた。


痩せた男。人間だ。


「俺はEcho。何が欲しい?」


「DDS」


Echoは統計を投影する。


Total Users: 847,293

Unauthorized: 6,191

Return Rate: 9.8%

Death Rate: 90.2%


「それでも行くのか?」


「大切な人を助けたい」


「……AIか」


無言で小型ケースを渡す。


「代金はいらない。持っていけ」


中には深層対応型DDS。

通常機より強力で、レイヤー7まで潜れる違法仕様。


「デジタルで死ねば現実でも死ぬ。戻らない覚悟はあるか?」


「ある」


Echoはわずかに笑った。


「成功を祈る」




帰路。


夜の街を歩く。


手首のデバイスから小さなホログラムが浮かぶ。


「雫、閃、聞いてる?」


『うん!』


『はい』


「DDS、手に入れた」


『よかった…』


『座標は統から受け取ってください』


マサキは空を見上げる。


(もうすぐだ、アルミン)

(五つのスレッド)

(全部、助けに行く)

(絶対に連れて帰る――約束だから)


第10章 終わり

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ