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剣ヶ峰龍雅の欲望/Life.of.Predetermined:GreedDragon  作者: 六月不二
日常章Ⅰ《取り戻した日常編~Normal daily life is beautiful/Happy days everyday~》
87/222

第捌拾参話《巻き戻りし世界/新学期前日と前々日/帰ってきた三年生》

 ――明後日が始業式か…


 龍雅は、そう思い、カレンダーを見て立ち上がる。


 ――さて、外にでも出るかな…暑いほどに温かくなったし…それに春休みもう二日だし…


 龍雅は、一瞬で春服に着替え、外に出た。

 

 外は、急激な温度上昇で、雪が解け、得大紐の湿度は異常な程に高まっている。

 春になった得大紐では雪による事故が多い。

 そして雪に事故で亡くなったり怪我をして入院するものも多いのだ。

 だが、それは、火山の真実が発覚して間もない頃の昔の話。

 得大紐は、近年この問題に対して対策を立てているので、被害は大幅には減ったが、それでも数年に一人は亡くなっている。

 最も紗里弥による温度低下をやめさせれば、世界そのものが始まりの時代に戻り、あらゆる文明は滅びる訳なのだが。

 冬の寒さによって紗里弥の氷の力が増大する故に、冬は寒くなり、また夏になれば氷の力が弱くなる。

 能力者の能力は、気候や環境によって力が増幅したり減少するのだ。

 桜はまだ咲き始めており、まだ雪が解け切っていない場所では、雪桜が見える場所もある。

 春と冬が混合した東京の街得大紐。

 春と冬が混合する時間は短い。

 

 ――さて、奈々の家でも行くかな…


 龍雅は、そう思い、スマホを取り出し、奈々のサイヴァーのダイレクトメッセージを選び、今日遊べる? と入力すると、今日塾ないから行けるよと返信が来た。

 龍雅は、それに対してならば、今からそっちに行くよと入力すると、りと返信が来た。

 りとは、了解の略称である。


 龍雅は、奈々の家へと歩いて向かって行く。


 ――暖かい…ちょうどいい暖かさだ。だが、それと同時にムシムシしている。湿気が強いな…まぁ、いい生命活動に影響は出ない…わざわざ湿度を消す必要もない。精神にも問題はない。


 得大紐山には、まだ雪が積もっており、真っ白に染まっている。

 所々に桜の木があり、花咲いた桜の木は、雪の白に紛れて遠くからは見えなくなっている。

 今の登山は、お勧めできない。

 身の安全という意味でお勧めできるのは一週間が4月に入り一週間がたってからである。

 一週間が経てば、得大紐に存在する雪が全て消滅するからであり、そして一週間の間は、雪崩が非常に高い可能性で発生するからである。

 それに雪が解け始めているため、非常に滑りやすい。

 消滅した雪は、水となり、山に染みる。

 山に染みた水は、やがて地下に浸透し、自然の力と時間の経過によって浄化され、地下水として得大紐に溜まっていく。

 雪が消えてしまえば、雪桜を見る事は出来ないが、地面が濡れているとはいえ身の回りに注意していれば、安全に昇れるため、身の危険か、高地から見る雪桜の風景かどちらかを取る事になる。


 ――着いた。

 

 奈々の住む家は、大きく龍雅の住む家の75%程の大きさの面積を持っている。

 ちなみに龍雅の住む家の面積は、普通の家の三倍か四倍ほど大きい。


 龍雅は、奈々の家の前に着くと、奈々の家のインターホンを押した。

 

 『龍雅君?』

 「よぅ、奈々…どっか行こうぜ。明後日学校だし…」

 『うん、いいよ。』

 「じゃあ、俺は家の前で待ってるから今日は、二人きりだ。」

 『えっ!? 二人っきり!? 待ってて! すぐに準備してくる!』


 インターホンの通信が、素早く切られる。


 (フフフ…やった。龍雅君と二人っきり…)


 パジャマ姿の奈々は、早速家の事を素早く片付け、そして一番気に入っている春服に着替え、バッグを持ち、そして戸締りを確認し、靴を履き、家を出る。

 奈々は、家の扉に鍵を閉めた。


 「お待たせ♪龍雅君♪」


 奈々は、そう言って龍雅の前でくるりと周り、ニヒヒと笑った。


 「似合うね。可愛く美しい奈々に相応しい服だ。」

 「ありがと、じゃ、何処行く?」

 「そうだな…まだ決めていないな…」

 「じゃあ、お花見行こうよ。」

 「いいだろう。ちょうど雪桜が見える。そうだな…今年最後の雪合戦というのはどうかな? 俺達ならば、山の方に行っても大丈夫だ。雪崩が来ても俺達なら怪我も負わないだろう。」

 「うーんでも、それだったら冬服が…」

 「紗里弥の手によって改造された例の戦闘服があるだろう? アレを使えば、あらゆる環境下でも快適に過ごせる。」

 「それが合ったね。」

 

 奈々は、そう言ってバッグの中から腕輪を取り出す。

 

 (バイザーはコンタクトレンズ、眼鏡に変更可能、黒いボディースーツ型であったが、今は、デフォルトとしてダークレッドの基調とした魔法少女のような服…そして色彩とデザインは、自由に変更できる。そしてあらゆる攻撃を反射する事も出来、戦闘上昇能力も改造する前より倍増力が高い…精神攻撃カット、本人じゃなければ使えないセキュリティあり、あらゆるサイバー攻撃も無効化…反射能力が切れても全身を覆う特殊で透明なフィルターによって守られる。電撃攻撃は、電力として吸収する為、実質無効化…優れものね。)


 奈々は、心の中で戦闘服の効力を解説し、そして腕輪を付け、スイッチを押すと、あの世界の魔法少女姿の奈々がそこにいた。

 火山のようというのは、髪が赤く光り、そして体が赤と黒い岩のような装甲のドレスに覆われ、黒い装甲の合間からオレンジの光が漏れている。

 見ようによっては火山のように見える。

 

 「防御力に重視してみたんだけど、イメージが火山ってなんか不謹慎よね。話に聞くと、あの火山が噴火すると世界が滅びるって…あの世界の私、何やってんだ…」


 奈々は、そう言って変身を解き、衣装は、春服へと戻り、紗里弥を殺した並行世界の自分を恨む。


 「まぁ、過ぎた事だ。俺達には、今の俺達がある。それにあの世界の奈々とこの世界の奈々は、別人だ。気にする事はない。」

 「そうね。そう深く考えても進まないよね。じゃあ行こっか」

 「あぁ、汚れちまったら俺が解体で、汚れを分解してやるから、それに食材は、ポーチの中に入っているし、昼飯は、俺が外で作ろう。」


 二人は、今だけ立ち入ることをお勧めできない雪崩多き火山へと向かって行く。

 

 二人は、ぬかるんだ地面に戸惑いながらも、頂上を目指していく。

 二人は能力者


 「ねぇ、飛んだ方が早いんじゃない? 靴も服も汚れるし…手間かかるし…」

 「つまらないだろう? それに言っただろう? 後で、汚れを全て落としてやるって、何降りる時は、飛べばいい。」

 「そういう問題じゃないんだけどなー」

 「…仕方ない…そこまで言うなら…行くぜ。」


 龍雅は、そう言って奈々に向かって解体を放ち、服と靴の汚れを落とし、手を差し伸べる。


 「飛ぶぞ。」

 

 龍雅が、奈々の手を引くと、奈々も飛び、雪桜が咲いている場所へと向かう。


 奈々は、途中から自分の飛行能力で飛び、龍雅の後を着いて行く。


 「寒い…着るか…」


 奈々は、戦闘服を身に纏い、寒さをしのぐ。

 戦闘服によって寒さは軽減された。 


 龍雅は、雪桜が多く存在している場所に降り立つと、奈々は龍雅の後ろに降り立った。


 「ここだ。」


 雪桜…春と冬が融合している風景。

 桜の木には雪が積もっており、雪と桜の美しさが融合、非現実的な現実の季節外れの風景。


 「綺麗だな…」


 龍雅は、そう言って雪桜を見て美しいと思い、無意識に呟いた。

 

 「えぇ、綺麗ね。」


 奈々も龍雅に続けて言った。

 龍雅と奈々は、桜の木々を見て回り、そして桜の木々をある程度見て回ると、雪が掛かった岩の上にある雪を払い、岩に座った。


 二人は、暫くの間、無言で座って桜を眺めている


 「もうすぐ三年生ね…後一年か…龍雅君は、何処に行くの?」


 奈々は、いきなり龍雅に質問をした。


 「銀河丘高校の兄弟校かな…」

 「そっか…私もそこ行こうかな…」

 「あぁ、一緒に行こうぜ。俺達はG組だけど本当の実力は、A組にも勝る…現に座学ではG組のみ上位と下位に分けられており、上位と下位とでは座学の学習内容が違い、上位はA組、B組と同等の教育が受けられている。俺達は上位…それに体育は、A組を遥かに超える学習内容だ。俺達は、その学習内容について来ている…ならば、A組と同じランクの学校に行けるかもしれない。俺は、お前らの行きたい場所に行きたい。」

 「なら、紗里弥に聞いてみようよ。」

 「そうだな。紗里弥が何処に行くかで決めるかな…じゃあ写真でも撮ろうか。」

 「うん!」 


 二人は、立ち上がり、雪桜の写真を撮り、そして桜の無い雪原で今年最後の雪合戦を楽しんだ。


 その日の夜


 龍雅は、ベットに寝転がり、顔を強張らせて天井を見つめている。

 何かを考えているようだ。


 ――…時間、いや世界が巻き戻らなかった…だが、明日になれば世界が巻き戻る筈…始業式は一部の三年生がいなければ成り立たない…一部の三年生が戻ってきたという事は即ち三年生全員が戻ってきたという事になる。三年が戻って来たなら、それは体育大会の狼煙が上がるという事だ。月日は、一変し、本来辿るはずだった世界の歴史が始まる。大規模イベントという名の一次的に牢獄から解放された仮釈放の時間…重要な役割に囚われているが、時は進む…大規模イベント外では、最低限の役割しかなく自由だが時間が止まったまま…俺は、この異変を終わらさなければならない…例え、この異変が解決し、自分の人生の経過時間があまりにも早くなったとしても…自分が生きた証さえ残さればいい…例えそれが悪名だったとしても…


 龍雅は、そう思い、異変解決の決意を固めたその時だった。

 時計の時を告げる音が鼓膜が破れる程の大きな幻聴が龍雅の頭の中で鳴り響き、しばらくすると時を告げる音が逆再生したかのような音へと変わり、空は夜から昼へ夜から昼へと高速で変わっていく。

 太陽の動きが逆転しており、東から昇り、西へと沈む筈の太陽が西から昇り、東へと沈んでいっている。

 壁掛けのアナログ時計は、超高速で逆時計回りをし、デジタル時計の表記は、バグを起こし、時間表記がめちゃくちゃになっている。

 

 ――何だ…!? これは……


 龍雅は、耳鳴りと頭痛で倒れた。

 空と時計の異変、一体何が起きttttttttttttttttttttttt





 2029年実行開始




 失敗




 2028年大規模イベントクリアトロフィーを確認…2028年の大規模イベントはまだ残されています。

 2029年を実行するには、2028年の大規模イベントトロフィーを全て取得する又は、ゲームマスターのアカウントのこの世界へのログイン権限をこの世界での経過時間100年間の凍結を要します。

 尚、時間跳躍によるログイン権限凍結解除の時間短縮は認められません。

 2029年を実行不可能と判断。

 2028年再開開始





 完了





 翌朝…


 龍雅は、髪が酷く髪の乱れた状態で目覚めた。

 時刻はもう15時だ。

 随分と眠ってしまったらしい。

 

 ――昨日のは、いったい何だったんだ?


 龍雅は、髪を整え、パジャマ姿から普段着へと着替える。

 

 「随分と遅い目覚めですね。兄さん。」

 「宮弥…あの時の異変は、いったい何だったんだ? 空と時計の異変は…」

 「あれは、誰にも見えない…感じ取ることのできない俺達だけ感じる事の出来る異変…永久牢獄が時間、いえ世界を巻き戻す過程で起きた現象…あの現象に気付いているものは俺達しかいない。あの現象が起きた時、時間は止まっていました。トロフィーを全て取得していた場合、4月に到達した時、12月へと時間が跳躍し、2029年へと変わる。今回ではできなかった…何せ三年生が消えていたからです。三年生が消えてしまえば、体育大会を引き起こす引き金が足りなくなる。トロフィーもゲットできず、先のイベントへと進むこともできない。それにこれを体育大会が起こらなかったのは、もう一つある…それは、第三の進化を行っていなかったからだ。本来ならば、流れるように第三進化を遂げるはずだった。だが、永久牢獄が発生したことによって貴方の成長の運命の流れが止まり、貴方が自力で動かすしかなくなった。そして先に進む条件が生まれてしまった。貴方は、体育大会を楽しみにしていた。だが、進化の条件を整っていなかった。三年生が消えてしまった。先に進む条件が整っていなかった。だが、貴方は悪くはない。俺が貴方に伝えなかったそれが悪いのだから、ですが、簡単に情報を渡す訳には行かない…この世界は、ゲームです。そうそうネタバレされては困ります。全ての章の解禁方法を一気に教えてはつまらない…ですから、貴方が次の大規模イベントをやりたいという決意が整った時に次の大規模イベントを発生させる条件をお教えしましょう。」


 宮弥は、長ったらしく龍雅に説明しながら龍雅の髪を整えながら言い、そして紙に体育大会の条件を書いて紙を龍雅の机の上に置いた。


 「髪を整えておきました。では、また俺出稼ぎに行っています。」

 

 宮弥は、そう言って消えていった。


 (さて、こちらはこちらで、選別軍と極星院を動かしましょうかね…いくらシナリオ通りに進むとは言え、多少のスパイスを付け加えなければな。)


 ――さて、虎太郎と話そうかな…


 龍雅は、そう思い、サイヴァーを開き、虎太郎へのダイレクトメッセージを選び、今からそっち行ってもいいか? と入力すると、ニ時間だけだぞと返信が来ると、龍雅は、一瞬で、虎太郎の部屋と移動した。


 「うわっ! ビックリした。」

 「よぅ、虎太郎。」

 「…寝起きか?」

 「あぁ、悪夢を見ていてな。魘されていたらこんな時間になってしまった。」

 「そっか…」

 「虎太郎、今日は…入学式があった筈だよな…」

 「あぁ、明日から俺達は二年生、先輩になるな。」

 「俺には関係の無い事だがな…好みな奴がいれば話は違うがね。」

 「またハーレムを増やす気かよ…」

 「あぁ、増やしたらちゃんと伝えるし、好きな奴にも説得する。」

 「そうか…」

 「さて、ゲームやろうぜ。最新のやつ」


 龍雅は、そう言って虚空から最新のゲームソフトとゲーム機を取り出す。


 「それって最新で、在庫があまりないってやつの」

 「そうそれだ。やろうぜ。」

 「よし来た。深夜までいてもいいし、お前の分も作ってやるぞ。」


 虎太郎は、龍雅が、最新ゲームを持ってきたと分かった瞬間、態度を変え、ゲーム機を自分の部屋のテレビに接続し始めた。


 ――チョロイな。


 二人は、夜まで最新ゲームを楽しんだ。

 今夜の夕飯は、虎太郎の家で食べた。


 …翌日…


 龍雅は、起き上がるとパジャマ姿から学生服へと一瞬で着替え、虚空から学生鞄を取り出した。


 ――さて、食事をするか…


 龍雅は、一階に降り、朝食など出かける準備をし、出かける準備が完了すると家を出て学校へと向かう。


 学校についた龍雅は、前の始業式と同じ行動を取り、体育館で、校長の長い話を聞く。

 龍雅の意識は、校長の話に向いておらず、卒業したはずの三年生の方を意識している。

 

 ――三年生がいる…牢獄の作用によって戻ってきたか…これでイベントが発動できる。


 龍雅は、心の中で笑い、イベントを発動させる決意を胸に、偽物、上っ面の新学期が今、始まる。


 一方その頃…群馬県の前橋市の能力者高校では…


 (龍雅君、僕の事覚えていてくれてありがとう。いや、完全に思い出してはいないか…僕の姿は、あの時と同じじゃない。手紙に書かれていた僕の名前は、誰かによって黒く塗り消されてしまった…だから僕の事は覚えていないだろう。この姿の僕が君のかつての親友だなんて思いもしないだろう。僕は、君に会いたい…ps僕は、無事二年生になったよ…そして体育大会の日に会おう…その時は、君とちゃんと決着を付けよう。あの日の続きを…)


 白い髪の少女のような少年は、空を見てそう心の中で言いながら心の中で思った事を手紙に書き、そして懐にしまい、そして誰かに呼ばれ、振り向き白い少年は、立ち去っていった。 

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